謙遜ラヴァーズ×濱津隆之|「カメ止め」スピンオフ音楽作品を語る!濱津の知られざるDJ時代のエピソードも

普段は微動だにしない濱津が……

──続きまして「Red Director」。これは上田監督に捧げる楽曲で、仮タイトルも「上田慎一郎(仮)」だったとか。

鈴木 Zepp DiverCityのファンミーティングでライブをやることが決まってたんですけど、その時点で謙遜ラヴァーズには持ち曲が「zombeat」と「Keep Rolling」の2曲しかなかったんです。なので、ちょっと自分たちを追い込まなきゃいけないと思って、この曲を作りました。

伊藤 Twitterで「新曲やります!」と宣言して、お尻に火を点けてから、2人で「さあ、どうする?」って。フルサイズのバンド演奏曲を1週間ぐらいで作るのは、けっこうスリルがありましたね。

鈴木 ベースとドラムのメンバーがメロディや歌詞を知ったのはライブ前日です。ファンミーティングでやるからには「カメ止め」に関係ない曲にするわけにはいかないし。だったら上田をテーマにして歌詞を書くのがいいんじゃないかと思ったんです。

──タイトルの「Red Director」というのは?

左から伊藤翔磨、鈴木伸宏。

鈴木 上田は赤が好きなんです。中学、高校の頃とか、赤い服、赤いカバン、赤い財布、赤い靴と、全身赤でそろえていて。そのイメージですね。あと赤ってリーダーの色でもあるじゃないですか。

伊藤 戦隊もののレッドね。

鈴木 あとは「カメ止め」のビジュアルの血しぶきの赤のイメージも込められています。

──打ち込みサウンドとまろやかなジャズギターの絡みは、初期のロニー・ジョーダンあたりを思い出しました。

伊藤 おっ! 僕、ロニー・ジョーダン大好きです。大学の授業でロニー・ジョーダンの「So What」が課題だったので。「Red Director」は最初に鈴木くんが「こういう感じのピアノリフがあるんやけど」って曲のモチーフを持ってきてくれたところから始まって。ギターに関しては印象的なリフを弾いてほしいと一任されました。

鈴木 リフで自分の色を出してほしいと思ったんです。

伊藤 「カメ止め」女優の真魚ちゃんから聞いたんですけど、この曲をファンミーティングで僕らが演奏してるときに、普段は微動だにしない濱津さんが首を動かしてノってたみたいで(笑)。

濱津隆之

濱津 ははは。そうですね(笑)。

伊藤 それを聞いて、「やった!」と思いました。

──次は「ポンデミックスガール feat. 渡辺リコ」。オーディションで選ばれた渡辺リコさんに関してはのちほど伺いますが、楽曲についてはいかがでしょう。

鈴木 今作の核になる曲なので、めちゃめちゃ時間かかりました。

伊藤 そう。一番時間かかりました。都合4バージョンくらい作りましたね。

鈴木 渡辺リコちゃんに対してベストな楽曲を作らなければという責任感みたいなものもあって。それで、いつもより時間がかかったんです。

伊藤 ほんとギリギリまで作ってたよね。

──渡辺リコさんはもう1曲「君の魔法にかけられて」でもボーカルを担当しています。最初からオーディションで決まった方には2曲歌ってもらうつもりだったんですか?

伊藤 いや、最初は1曲のつもりでした。

鈴木 もともとサビとBメロの部分は作ってあって。この曲調に彼女の声が乗ったら、めっちゃよさそうだなと思って1曲に仕上げました。

伊藤 渡辺リコさんのおかげで生まれたというか。彼女に引っ張り出してもらった感じの曲です。

──今作にはインストルメンタルも2曲収録されています。まず1曲目の「TRUE FINISH」ですが、この曲はどのようにして生まれたのでしょう。

「Pondemix」のトラックリスト。 「Pondemix」のトラックリスト。

鈴木 「TRUE FINISH」は、実は真魚ちゃんに対して書いた曲で。真魚ちゃんって普段会うとものすごく元気で、かなり年下なはずなのに僕とか上田にガシガシ絡んでくるんです。

濱津 確かに(笑)。

鈴木 かと思えば、いろいろあって上田がしんどそうだったときに「上田監督、大丈夫? 幼なじみなんだからフォローしてあげてね。その分、自分たちも頑張るから」って、長文でメールをくれたり。あれは感動しましたね。そんな彼女の内面にある熱い部分を楽曲で表現したくて。ちなみにCDのトラックリストをリック(「カメラを止めるな!」のファンアートで知られるイラストレーター)が全部手書きで書いてくれていて。「TRUE FINISH」の「NI」を外に出すとTRUE FISH NI(真魚に)って読めるという。

──なるほど!

濱津のDJ時代

鈴木 そして、もう1曲のインスト「Beach」はBeach=浜ということで、濱津さんに書いた曲です。

濱津 えーっ、そうなんですか!

鈴木 ちょっと間抜けっぽい雰囲気で曲が始まって。間抜けって言ったらアレですけど(笑)。

濱津 はははは。

伊藤 コミカルな感じね。

お気に入りのA Tribe Called Quest「Can I Kick It?」の12inchアナログシングルを手にする濱津隆之。

鈴木 濱津さんは音楽が大好きで以前DJもやられていたということで。よくかけてたのはブラックミュージックでしたっけ?

濱津 90年代のヒップホップですね。

伊藤 この曲では、DJをしていた濱津さんが俳優として活動を始めて、「カメ止め」と出会って今に至るという、そんな一連の流れを1曲の中で表現しようと思ったんです。

鈴木 イントロは「カメ止め」のサントラの雰囲気を踏襲していて、途中のちょっと切ない感じの曲調は周りの情景が変わっていったということを表現していて。で、最後に濱津さん自身も変わっていくみたいな。そういうイメージで書いた曲です。

濱津 そうだったんですね。今の話を踏まえて、家で改めて聴いてみます。

お気に入りのレコードをじっくり選ぶ濱津隆之。
濱津隆之が取材時に持参したアナログレコード。

伊藤 ぜひぜひ。

──ちなみに濱津さんは、当時頻繁にDJをされていたんですか?

濱津 ちょこちょこですね。HAMAONEという名前で。メールアドレスでHAMA2というのを使っていたので。

鈴木 それって、いつぐらい話ですか?

濱津 僕が24、5歳くらいの頃だから、もう10数年前ですね。もともとダンスを観るのが好きで、埼玉県のダンスバトル大会の予選とか、あとDA PUMPが深夜にやってた番組もよく観てました。

伊藤 ああ、「スーパーチャンプル」ですか。

濱津 そうです、そうです。それでダンスに興味を持って。大学の後輩でブレイクダンスをやってる人がいたので教えてもらったんですけど、すぐ腰をやっちゃったんですよ(笑)。そのときにダンサーのバックでレコードを回すDJという存在がいることを知って。そのあと芸人をやるんですけど、そっちで活動しつつ、DJもやっていました。一番好きな曲はA Tribe Called Questの「Can I Kick It?」。これはホントかけまくってました。Naughty By Natureの「O.P.P.」も好きでしたね。

謙遜ラヴァーズの音楽的ルーツ

──お二人もヒップホップは通ってらっしゃる?

鈴木 いえ、実は(笑)。

伊藤 僕もヒップホップはあんまり通ってないんですよね。

左から伊藤翔磨、鈴木伸宏、濱津隆之。

鈴木 僕はディズニー映画の音楽が好きで、そこから音楽に興味を持つようになったんです。だからディズニー音楽をたくさん手がけているアラン・メンケンに影響を受けていて。例えばバンドだったらタヒチ80とか、キャッチーなサウンドに加工したボーカルを乗せるようなことをやりたいなと思って、ill hiss cloverというバンドを始めたんです。なのでメロディや旋律はずっと大事にしてきました。

──伊藤さんは℃-uteのレコーディングへの参加、SHE IS SUMMERやmajikoのライブサポート、昭和歌謡のプロジェクト・SHOWMAなど幅広く活躍されていますが音楽的なルーツは?

伊藤 もともと父親が音楽好きで、子供の頃からはっぴいえんど、荒井由実、エリック・クラプトン、デイヴ・メイソンとかのレコードが家で頻繁にかかっていたんです。なのでルーツと言えば、そのあたりのミュージシャンになるんですかね。謙遜ラヴァーズではサウンドを構築していく役割を担うことが多いんですけど、鈴木くんと一緒にやることでお互いの持っている要素を使えてる感じがします。

──では最後にせっかくですので、ぜひこの作品について濱津さんの感想を聞かせてください。

鈴木 正直に言ってくださいよ。ダメだったらダメでもいいですし(笑)。でもあまり正直すぎると、この対談がなかったことになるかもしれない(笑)。

濱津 えーっ!?(笑) いや、曲を言葉で表現するのは難しいですけども、なんて言うんですかね。「カメラを止めるな!」の要素ももちろん入っているんですけど、ちゃんと謙遜ラヴァーズの作品になってるんですよね。そこがいいなって思いました。

鈴木 ほんとに思ってます? なんか怪しくない?(笑)

濱津 あと、渡辺リコさんの歌声が素晴らしいなと思いました。

伊藤 いい声ですよね。

左から伊藤翔磨、鈴木伸宏、濱津隆之。

──現在制作している「ポンデミックスガール」のミュージックビデオはアニメーションなんですね。(インタビューが行われたのは2月中旬)

鈴木 これは半端なくいいです! めっちゃハードル上げますけど、自分で(笑)。

伊藤 うん。泣けるよね。

鈴木 リックがストーリーから全部作ってくれて。ぜひとも、CDで曲を聴く前にMVを観てもらいたいです。ちなみに、「Keep Rolling」も映画の公開直後に曲を配信しようという話があって。でも、それはダメだと言って断ったんです。そもそも作品のことを歌詞でも書いているし、曲を聴いてから映画を観るのと、映画を観てから曲を聴くのとでは全然ファーストインパクトが変わるから。なので、「ポンデミックスガール」も、まずは音と映像を一緒に観てほしいです。