ナタリー PowerPush - 楳図かずお×志磨遼平(毛皮のマリーズ)

楳図ハウスで天才頂上対談

「ティン・パン・アレイ」は「わたしは真悟」っぽいですね(楳図)

写真左から楳図かずお、志磨遼平

志磨 そんなきっかけで、それからは自分で楳図先生のマンガをいろいろと買い集めていったんですけど、僕はやっぱり「わたしは真悟」がとてもとても好きで。

楳図 そういえば、志磨さんの前のアルバム(「ティン・パン・アレイ」)は「わたしは真悟」っぽいですよね。

志磨 おお! すごい! あのアルバムは11曲入ってるんですけど、そのあとに、表記されてない隠しトラックがあるんですよ。しばらく無音が続いて、ふっと曲が始まるっていう。その無音の時間が3分33秒なんです。

──「わたしは真悟」の中で重要な意味を持つ「333のテッペンカラトビウツレ」ですね。

志磨 「東京」をテーマにした作品だったので、最終マスタリングの作業中に(無音の時間を)どれくらいにしますか?って話になったとき、すぐに「わたしは真悟」の「333」のエピソードが浮かんで「3分33秒でお願いします」って。

楳図 そういうところはすごく感じました。理屈ではなくて、感覚的に。

志磨 ホントにうれしいです!

楳図 新しいアルバムは「へび少女」っぽいですよね。

志磨 「へび少女」も大好きです! 3曲目に「ラストワルツ」という曲が入ってるんですけど、それは楳図先生の「洗礼」なんですよね。さくらちゃん(「洗礼」に登場する上原さくら)がひざまづいて歌っている、あのイメージがすごくあって。「闇のアルバム1」の1曲目も「洗礼」ですよね。アルバムのジャケットもさくらちゃんだし。

楳図 「闇のアルバム1」を作ってるとき、ちょうど「洗礼」を描いてたんですよね。

志磨 (「闇のアルバム2」に収録されている)「新宿烏」も「おろち」の中に出てきますけど、歌詞を書かれるとときとマンガのセリフを考えるのって、同じ脳みそを使ってる感じなんですか? それとも全く別の……。

楳図 セリフを書いてるときに「これはそのまま歌詞だな」と感じることはありますね。詞はメロディに乗せるものなので、そこで制約があるんですけど。

志磨 そうですよね。

楳図 歌詞をセリフみたいな気持ちで書くこともありますし。セリフがそのまま歌になるとしたら、それは自分の生の声だから、ほかの人にも伝わりやすいと思うんですよね。

志磨 わかります。誰かがしゃべってる言葉がそのまま歌詞になれば、それが一番いいんだろうなって思うんですよね、僕も。例えば誰かの悩みを聞いてるときとか、「これはもう、詩だなあ」って思いますもん。

楳図 確かに悩みごとって“詩”ですよね。そこにテーマが隠されてるというか。

マンガみたいに生きていけたらいい(志磨)

──楳図先生のマンガは、音楽と近いところに存在しているんでしょうね。

志磨 そうですね。先生のマンガはすごく美しいので。音楽が美しいものだとすれば、そこでつながってるんだと思います。

──逆に毛皮のマリーズはどこかマンガ的なのかも。「コミック・ジェネレイション」という曲もありますし。

志磨 そうですね(笑)。マンガみたいに生きていけたらいいな、っていう。

楳図 それは素晴らしい。僕が気に入ってる人ってみんなマンガチックなんですよね。オードリー・ヘップバーンだって、誰かが描いたものが現実になったっていう感じがするし。マイケル・ジャクソンだって、ある意味マンガでしょ?

志磨 あー、確かに。

楳図 見た目の面白さもそうだし、何もやってなくても何かを発散していて、そこにストーリーがあると言いますか。僕もマンガチックに生きたいなって思いますから。まあ、そうやって生きてきて、人生の後半で慌てたりするのかもしれないけど(笑)。

先生の描かれる少女が僕の理想なんです(志磨)

──さて、そろそろお時間なんですが、志磨さん、ほかに何か言い残したことはないですか?

楳図 遺言みたい(笑)。

志磨 えーと、あ、そうだ。僕、和歌山出身なんですよ。先生も和歌山ですよね?

楳図 そうなんですか! それは最初に言わなきゃ(笑)。僕は和歌山で生まれて、奈良県の五條市というところで育ったんですよね。和歌山もよく行ってました。ひとりで電車に乗って和歌山城を見に行ったり。最近地震が多いからちょっと心配してるんですけど。

志磨 プレートがあるみたいですからね。

楳図 僕が子供の頃からよく地震があったんですよね。夜中に地震があって、父が僕を抱いて、母が弟を抱いて廊下から庭に飛び出したり。僕、その頃“おまる”に用を足してたんだけど、地震のときその中に母親が足を突っ込んで、ぼやきまくってたりとか……。

志磨 「まことちゃん」みたい(笑)。もうひとつ聞いていいですか? 先生が一番好きな……。

楳図 食べ物? きゅうり。

志磨 きゅうり?

楳図 今年の夏も暑かったから、さっぱりしたものが食べたいなって思って。きゅうりの皮を剥いて、塩でもんで、酢をかけて食べるとすごく美味しいの。

志磨 美味しそう。いや、あの、質問したかったのは、一番お好きなキャラクターは何かなって……。

楳図 あ、そうでしたか(笑)。

楳図かずお 志磨遼平

志磨 先生の描かれる少女は僕の理想なんですよね。

楳図 女の子はねえ、それこそ死に物狂いで描いてますね。どうすればもっときれいになるか、かわいくなるかって、一生懸命にバランスを取りながら。でも、絵のことですからね。歪んだりとかいろいろするので。あのね、きれいな女の子が1人だけ出てくるときはまだいいんですよ。“究極を目指す”でいいから。でも例えば姉妹でかわいいとか友達もかわいいってことになると、これが難しいんですよね。

志磨 “きれい”の描き分けですよね。

楳図 そうそう。女の子のメイクもなんかもそうですけど、きれいになろうと努力すると、みんな同じ方向に向かってしまうので。そう考えてみると、最終的には同じようにきれいな人ばっかりになるのかもしれないですね、未来は。それが良いことか悪いことかはわからないけど、それも未来の人間の姿なのかも。

志磨 なるほどー。

楳図 未来の人間の姿には興味があるんですよね。「14歳」で描いてる3歳児もそうですけど、幼児のまま大人になるっていう。

志磨 先生の作品には“大人みたいな子供”もよく出てきますよね。

楳図 そうですね。僕、水前寺清子さんの「三歩進んで二歩さがる」(「三百六十五歩のマーチ」)という歌が好きなんですけど、あの歌詞を「三歩進化して二歩退化する」っていうふうに解釈してるんですね。ずっと進化ばかりっていうのはちょっと危ないと思うんです。そうじゃなくて、どこかが進化したらどこかは退化して幼児化していったほうがいいんじゃないかって。その究極の姿が「14歳」に出てくる3歳の男の子なのかもしれないですよね。一番好きなキャラクターってなると、その子なのかな。

写真左から楳図かずお、志磨遼平

ニューアルバム「毛皮のマリーズのハロー!ロンドン(仮)」 / 2011年9月7日発売 / 日本コロムビア

  • 初回限定盤 [CD+DVD] / 3200円 / COZP-591~2
  • 通常盤 [CD] / 2800円 / COCP-36892
CD収録曲
  1. The End Of The World
  2. HEART OF GOLD
  3. ラストワルツ
  4. 夢のあと
  5. 上海姑娘
  6. ラプソディ・イン・ザ・ムード
  7. The Ballad Of Saturday Night
  8. 毛皮のマリーズのハロー!ロンドン
  9. となりにいてね
  10. ダンデライオン
  11. JUBILEE
初回限定盤DVD収録内容
  • 毛皮のマリーズのハロー!ロンドン

ニューアルバム「8月32日へ」 / 2011年8月31日発売 / 2800円(税込) / Warner Music Japan / WPCL-10988

  • 毛皮のマリーズ「CONCERT FOR

ニューアルバム「8月32日へ」 / 2011年8月31日発売 / 2800円(税込) / Warner Music Japan / WPCL-10988

  • 楳図かずお「闇のアルバム 2」
CD収録曲
  1. わたしのふるさと
  2. チキンジョージ
  3. ひとりたび
  4. タンゴ・アルゼンチーノ
  5. 14歳
  6. 大阪の女
  7. 黒い色
  8. 新宿怨歌
  9. 海賊ロック
  10. 新宿烏 (アルバムバージョン)
毛皮のマリーズ(けがわのまりーず)
毛皮のマリーズ

志磨遼平(Vo)、越川和磨(G)、栗本ヒロコ(B)、富士山富士夫(Dr)による4人組ロックバンド。2003年に結成し、都内のライブハウスを中心に活動。2005年に発表した自主制作CD-R「毛皮のマリーズ」が話題を呼び、2006年9月にDECKRECから1stアルバム「戦争をしよう」をリリースする。その後も精力的なライブ活動や音源の発表を重ねつつ、日本コロムビアと契約し、2010年4月にアルバム「毛皮のマリーズ」でメジャーデビュー。2011年1月にはホーンセクションやストリングスを大胆に導入した問題作「ティン・パン・アレイ」を発表し、ロックバンドの枠組みを超えた才能をアピールした。2011年9月にメジャー3rdアルバム「毛皮のマリーズのハロー!ロンドン(仮)」をリリース。

楳図かずお(うめずかずお)
楳図かずお

1936年和歌山県生まれ。1955年に単行本「森の兄妹」でデビュー。その後「ねこ目少女」「へび女」などの作品で、恐怖マンガの第一人者として知られるようになる。1967年少年画報にて連載した「猫目小僧」は1976年にTVアニメ化、2006年には実写映画化もされた。1975年「漂流教室」ほかで第20回小学館漫画賞を受賞。翌年ギャグマンガ「まことちゃん」が大ヒットし“グワシ”ポーズは社会現象にもなった。その他代表作は「洗礼」「わたしは真悟」「イアラ」「14歳」「おろち」など多数。その特異な才能を生かしタレント、音楽家としても活動。自身がほぼ全曲の作詞作曲を手がけるアルバム「闇のアルバム2」を2011年8月に発表した。