5人目の河内REDS

──豪華なブラスアレンジや歌謡曲テイストの効いた「あぁ御堂筋」はどうですか？

サクラ　これはメロディでもう「アダルトでコテコテな感じの大阪やな」ってすぐに閃きましたね。この曲をレコーディングするのが決まった日に、帰りの車で歌詞を書いたんです。「大阪といえば、御堂筋かな」みたいなところが始まりで、そしたら匂いのことをどうしても入れたくなって。御堂筋ってイチョウ並木があって、秋になるとイチョウが落ちて車とかに踏まれてなんとも言えない匂いがするんですよ。東京から帰ってきてあの匂いを嗅ぐと「大阪やなー」と思うような。僕、匂いというのが感覚の中ですごく好きで。

タダミ　「市民プール」もそうやん！ 「カルキの匂い」っていう歌詞がある。

サクラ　そうそう、あの匂いで「プール来たー！」って感じになんねん。

──「あぁ御堂筋」はセリフ部分もいいですね。

タダミ　最初はセリフのない、ただの間奏やったんですけど、ブースの中で僕が歌を録ってるとき、セリフを急遽入れようということになったらしく（笑）。

サクラ　僕が「ここ、セリフやな」と思ってたら、寺岡さんも「セリフじゃない？」って言ってきて。「じゃあ、今作っちゃってよ」「えっ!?」みたいな流れで1分半くらいで考えて「もしもし、タダミくん？ セリフできたんで言ってください」という感じでしたね。ほんで、一発OKやったのはすごかった。みんなで「役者だねえ」と褒め称えました。

タダミ　まったく予定外でドキドキしましたよ。曲の雰囲気がしっかり固まってたおかげで、このセリフはちゃんと言えた感じがするんですよね。「あぁ御堂筋」は女性目線の歌詞やし、今回のアルバムの中では特にキャラ作りを大切にしないと伝わらない。やしきたかじんさんになったつもりで歌いました。

──タダミさんは関西弁のほうが歌いやすいんですか？

タダミ　いや、関西弁で歌うのは難しいですね。

サクラ　僕の歌詞って、無意識で関西弁になってるときがあるんですよ。

タダミ　「ミラーボール」（2019年11月発売のミニアルバム「オリオン座」に収録）もそうやったな。

ナカザワ　今回の「レッツゴー！繁華街」も入ってるやん。

サクラ　あっ！ ホンマや（笑）。

タダミ　方言を用いるバンドって今どきあまりいないから、これも河内REDSの武器やと思うんですよね。

サクラ　しかし「市民プール」「オリオン座」「あぁ御堂筋」のラブソングの並び、年齢層のバラバラ具合がエグいな。いろんな人に響くとうれしいんですけど。

セタ　ホンマやな。「あぁ御堂筋」とか壮年やし（笑）。

──寺岡さんとのやり取りで印象的だったことはありますか？

セタ　さっきの「あぁ御堂筋」のセリフ以外も、レコーディングがすごく速いテンポで行われていくんです。ドラムを録るときも、ブースの中でキューボックスのボタンを押すと寺岡さんと会話できるんですけど、「こんな感じでやってみて」って言われてボタンを離した瞬間、もうヘッドフォンからはクリックが流れてて。ゆっくり考えるのではなく、瞬発力でパパッとやる作業はとても刺激的でした。

ナカザワ　「市民プール」のイントロはもともとまったく違うフレーズやったんですが、寺岡さんが「こんなんあるんだけど」って持ってきてくださって、それが採用になったんです。俺らにないアイデアを出して、5人目の河内REDSとして力になってくれましたね。

サクラ　強制ではなくて、提案してくれる感じやったな。

タダミ　寺岡さんといえば、あとは「おかん」な。メジャーデビューが決まるオーディションの最終審査で、審査委員長だった寺岡さんにお題をいただいた曲なんです。

──「おかん」はそういうきっかけで生まれた曲なんですね。

タダミ　そうなんです。悩みましたよー。

サクラ　オーディションに出てたバンドは全部インディーズやったし、みんな面食らってたよな。

ナカザワ　ほかのバンドにはまた別のお題があって。

タダミ　そうそう。「夕暮れの雨」みたいなお題出されたりしてたな。

セタ　俺らは「河内REDS版母に捧げる泣けるバラード」。

タダミ　「おかん」で優勝できてこうしてデビューさせてもらったので、一生忘れられない曲になりましたね。応援してくれてるお客さんにも「CDに入らへんの？」とずっと聞かれてたんで、やっと収録できてうれしいです。

サクラ　な。しっかり俺ららしい曲になったし、ホンマによかったわ。

2020年は「ライブの年」

──ラストの「レッツゴー！繁華街」も初収録の新曲です。

タダミ　明るく終わりますね。「次の作品も乞うご期待！」みたいな感じで。

ナカザワ　新曲の中でこれだけが完全に4人だけのサウンドなんですよ。そういう曲で締められたのもよかったなと思います。

サクラ　最後に元気な曲が入ってるアルバム、好きなんですよね。

タダミ　曲の内容も大人でありつつ、若さが残っててええなと思うんです。今の自分たちって感じがする。

サクラ　常日頃考えてることやね、この歌詞は。まあ、僕の飲み方ですね。「カラオケはまた今度」とか。

タダミ　「夜が明けるまで たまには呑んでもええんとちゃうか」って好きやなあ。

サクラ　「たまには」が大切やと思うのよ。

タダミ　なるほどな。毎日やったらただのアホやけど、「たまには」ならええよな。

サクラ　その代わり、次の日は終了してまうな。だから「明日の前借り」って歌詞にしたんです。明日の分を使って今夜は遊ぶ、みたいな。昔は前借りせんでも翌日動けたけど、もはや次の夜まで二日酔い引きずるんで（笑）。

──（笑）。最後に、アルバムをリリースしてからの展望などをお願いします。

タダミ　4月に初の全国ツアー（「河内REDS『時計じかけのオレたち』LIVE TOUR 2020」）が始まるので、まずはそれをフルパワーで駆け抜けたいですね。

──初めてのツアーなのに全44公演って、ものすごい数ですよね。新人バンドであまり聞いたことがない。

全員　あはははは！（笑）

セタ　確かに、めちゃくちゃ多いですよね。

タダミ　丸々3カ月くらい使って、ほぼ47都道府県を回ります。河内REDSを知らない人たちは各地にたくさんいるでしょうから、まだ見ぬ方々に知ってもらえるよう、アルバム「時計じかけのオレたち」を引っさげてがんばっていきたいです。今年はライブの年と決めてるので、このツアーだけで終わりじゃなくて、年末までみっちり詰めた1年にしたいですね。

ナカザワ　楽しみやなあ。

サクラ　武者修行やね。絶対に強くなると思います、バンドが。