河内REDS|大阪発4人組ロックバンドの愛を注ぎまくった1stアルバム

河内REDSなりのメジャー感

──メジャーデビュー以降、「東京ガール」「オリオン座」とミディアムテンポのラブソングを軸にリリースをしてきたのも、今の話とつながるところがありますか?

タダミ そうですね。僕らライブばかりしてたせいかバンドサウンドでガシガシいくのが得意で、速い曲やノリで魅せる曲を優先しがちやったかなって。でも、せっかくならミドルテンポの曲もやりたいし、もっといろんなことができるのをリスナーの方に知ってほしかったんです。

ナカザワ こういうストレートなラブソングも作ったことがなかったんですよ。

タダミ 俺らにしたら、かなりのチャレンジよな。なので、少し怖かったのは正直あります。

サクラ メジャーに行くからにはやっぱり、河内REDSなりのメジャーの楽曲を作らないといけないなと思いました。インディの頃はラジオでかけられないワードを用いた曲が多くて、言っちゃいけない言葉を使う快感があったりもしたんですけど、それをメジャーでやるのは違うので。

──なるほど。

サクラ だけど、結局なんだかんだで自分たちらしさって曲に表われるんですよね。人と違うことがやりたいという気持ちはもう第一じゃないのに、「東京ガール」の歌詞が「軽トラでたこ焼き屋はじめたよ」になったりするし、「オリオン座」の歌詞もちょっと性格悪い感じが出てたりするし。

タダミ 「河内REDSらしさは変わらずあるな」と実感できたよな。新しい自信が生まれてきてるというか、これからはもっといろんな味のする楽曲を作っていけるじゃないかって。

サクラ インディでラブソングを作らなかったのって、世の中にラブソングがいっぱいあったせいなんやろうな。「みんながやってるから、俺らはやらなくていいじゃないか」みたいな。そんなんも今になってわかったりします。

セタ それはあったかもね。

サクラ でも、やりたいことは変わっていくんで、今は愛について歌いたくなるときもありますね。で、ラブソングをやるからには、そのたくさんの中に埋もれたくないのかも。

タダミ せやな。「東京ガール」の2番の歌詞を大阪と限定できる内容にしたのも、埋もれたくない気持ちが出とるのかもしれんね。男のほうが地元にいる感じを表現するにはどうすればいいか悩んだ末、このやや大胆とも取れる歌詞になったんですけど、曖昧にせんと自分たちらしい言葉で歌えてよかったと思ってます。

将来聴き直しても「ええなあ」と言える作品になった

──初のフルアルバム「時計じかけのオレたち」は作り終えてどんな手応えがありますか?

セタ 達成感がすごくありますね。これまでもジャンルにこだわらずいろんな曲を作ってきたんですけど、さらに音楽性の幅が広がったんじゃないかなって。

タダミ フルアルバムって区切りみたいなイメージなんですよ。シングルやミニアルバムを経て、フルアルバムで一旦完結っていうか。「ああ、俺ら第1話まとめられたんや」みたいなうれしさがありますね。しかも、むやみやたらにいろんな曲を入れたんじゃなくて、しっかりとメッセージ性のある曲が10曲も詰まってるし、歌ってて楽しい曲ばかりで。何曲かはもうライブで披露してるんですけど、ホンマに皆さんええ顔をしてらして。

サクラ 1stやし、長男みたいな感じかな。そのくらい愛を注ぎまくった1枚なので、自分たちがのちのちになって聴き直しても「ええなあ」と言えるであろう作品になったと思いますね。

ナカザワリョウジ(B)

ナカザワ これまでのシングル「東京ガール」、ミニアルバム「オリオン座」を出してきた流れをいい感じで汲んだアルバムになりました。ロック色の強い「時計じかけのオレたち」があったり、意表を突くポップな「市民プール」があったり、すごくバラエティ豊かで。

──全10曲という収まりもいいですよね。個性の強いバンドってコッテリすぎるアルバムを作りがちなところがあると思うんですけど、このアルバムは絶妙なバランスでコンパクトにまとまっていて。

サクラ ありがとうございます。曲順にもこだわりました。「時計じかけのオレたち」と「市民プール」の曲間もみんなで話し合って短めにしたり。

ナカザワ 「市民プール」の頭でハッとさせたかったんだよね。

──1曲目「時計じかけのオレたち」から最高で、今後の音楽シーンを担っていきそうな印象をビシビシ受けました。従来のロックミュージックを踏襲した感じに加えて、現代にしっくりくる悩ましさとユーモアもあって。

タダミ うれしいです! 「時計じかけのオレたち」はミュージックビデオもまたいいんですよ。「東京ガール」と「オリオン座」だけしか聴いたことない人にも刺さるんじゃないかなあと。

サクラ 「東京ガール」は村瀬紗英さん、「オリオン座」は太田夢莉さんと、NMB48の方にMVへ出ていただいたんですけど、今回は僕らの演奏シーンがメインになってて。また新鮮な印象を持ってもらえると思います。

セタ 俺ら的にもすぐ身体になじんだ曲だったよね。

ナカザワ うん。ヘビーな音像でもありながら、ポップなアレンジを意識して作りました。

サクラ 世の中のことを悩ましく捉えた重い歌詞に聞こえるかもしれないけど、日常で思ったことを書いただけなんです。テレビでニュースが流れてて、「ああ、こんなことが起こってんねや」くらいにしか感じられなかったとき、自分のことで精一杯で、周りのことが見られなかったりするときの気持ちに近いかな。言いたいことはホンマに最後の1行「幸せになるだけ」なんですよね。幸せって人それぞれ形が違うので、遠いところにあるならそこを目指して走ったらいいし、近いところにあるならよく探したらいい、みたいな。社会の中で生きるたった1人に向けて放った曲なんです。僕は「もっと社会のことを考えなよ」とか言える人間でもない。でも、救いは欲しいっていう。

タダミ すごくサクラらしい歌詞やなと思ったよ、俺は。最終的に希望を持ってる感じがええなって。

──「市民プール」は煌びやかで軽快なアレンジと、それにマッチした清涼感のあるボーカルが素敵でした。こういう曲も今までなかったですよね?

サクラ 初めてですね。デモを作るときは歌詞がなくて「ラララ」で歌ってるんですけど、タイトルは毎回とりあえず適当に付けてて。「市民プール」の場合はメロディのイメージを受けて、仮タイトルが「あらま、夏じゃんか」やったんですよ(笑)。だから、夏の曲になることは早い段階で決まってました。それでプロデューサーの寺岡(呼人)さんと一緒にストリングスやパーカッションを配したアレンジを考えて、より一層さわやかな仕上がりになった感じです。

タダミ この曲は初デート、夏、プールと、ウキウキする要素しかないから、弾むような気持ちで歌うことを心がけました。

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5人目の河内REDS