ナタリー PowerPush - 勝手にしやがれ

結成15周年ベストアルバム 武藤&飯島が語る軌跡

今年、結成15周年を迎えた勝手にしやがれ。ドラム&ボーカルの武藤昭平を中心に、4本のホーンセクションを従えた7人組のアンサンブルは、ジャズを身にまとい、心にパンクを抱え、ブルースを紡いでいく。この度、ナタリーでは2004~2010年の楽曲を収録したベストアルバム「シルバー&ゴールド ~ ゴールド 2004-2010」をリリースした勝手にしやがれにインタビューを実施。武藤昭平と飯島誓(B.Sax)の2人に話を訊き、バンドの軌跡を振り返ってもらった。

取材・文 / 宮内健 インタビュー撮影 / 高田梓

ライブで楽しむための定番がわかる

──勝手にしやがれが結成15周年を迎えたわけですが、今の率直な感想を聞かせてもらえますか?

インタビュー写真

飯島誓(B.Sax) 今回ベスト盤を出して、昔の曲なんかも聴き返したりもしたんで、長いことやってきてるんだなっていうのを改めて感じましたね。

武藤昭平(Dr, Vo) 以前10周年を迎えたときは、今よりももっと前向きで過去を振り返ってるような感じでもなかったんだけど、15年目を迎えてホントいろいろあったから、ちょっとした達成感みたいなものを感じますね。

──いろいろあったっていうと?

武藤 例えばレコード会社の移籍だったり、勝手にしやがれの活動をちょっと緩めにしながら、俺もソロ活動に専念したり、それが発端になって他のメンバーも1人ひとり、勝手にしやがれ以外の活動を中心にやってみたり。勝手にしやがれっていう母体から、個々の考え方を重視するようなやり方も増えてきて。そしてまた母体に戻って新譜を出したりと、いろんな動きがあって現在の勝手にしやがれに至るから、ちょっと感慨深いですよね。

──今回リリースされたベストアルバム「シルバー&ゴールド ~ ゴールド 2004-2010」は、メジャーデビュー以降の曲を集めたものですが、発表された時期をバラバラにして聴いても、まったく美意識にブレがない。もちろん、その時々の音楽的な興味だったりが反映されているんだけど、結局のところひとつの美意識に集約されるというか。むしろ作品を発表するごとに、勝手にしやがれの核にある部分がどんどん明確になっていく。このベスト盤を聴いて、そんなイメージを受けました。

武藤 そういう意味では、あまり変わってないのかもね。勝手にしやがれの名義で、オリジナルアルバムも結構な枚数出てるんですよね。で、名前は知ってても、まだ聴いたことがないっていう人とかに会ったときに「どのアルバムから聴いたほうがいいですか?」って訊かれると、「いや、どのアルバムからじゃなくて、全部いいよ」って、作った本人からすれば思うんだけど(笑)。でも、そういえばライブでよくやる曲ってのもあるなって思って。だったら、これだけ枚数あるんだから、15周年だしベストがあってもいいんじゃないか?って思ったのが発端で。これを聴いておけば、ライブで楽しむための勝手にしやがれの定番がわかるよ!っていうベストを作りたいねって話になって、今回のようなスタイルになった。

──そういう狙いだったんですね。

武藤 うん。基本は、初期の曲を集めた「シルバー」も、今回の「ゴールド」も、まずはライブの定番。勝手にしやがれとしてこれを聴いておけば、だいたいライブでもおなじみになってくる曲っていうのを厳選して。でも、今回の「ゴールド」のほうは、EPIC時代の未発表曲もあったり、ライブでは滅多にやらないんだけど、いろんなアーティストとコラボレーションをした、華やかな部分もあるから。勝手にしやがれのレアな部分もパッケージしたほうがいいって思って、2枚組になった。

チバくんが俺らの曲で歌ってくれたのは感謝してる

──DISC 1は、イントロを聴けばすぐに思い出すような、知らないうちに記憶に染み付いてるような曲が多くて。ホーンアレンジも含めて、一瞬にして音でイメージを植え付けてしまうようなパワーがあるような曲が揃ってますよね。面白いのは「ロミオ」の武藤さんが歌ってるバージョンがDISC 1に入ってて、チバユウスケさんをボーカルに迎えたバージョンがDISC 2に入ってて、両方を聴き比べできる。

武藤 「ロミオ」って曲がブワーッて降りてきたのが、ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)の解散の事実を聞いたときだったんだよね。で、ウチがメジャーと契約しますっていう時期にミッシェルが解散して。仲良かったからチバくんに歌ってほしいと思って「いまチバくん空いてるよね?」って連絡したら、「いいよ、俺『スレイヴ』歌うよ」って(笑)。

──先方から曲の指定があった?(笑)

武藤 でも、「スレイヴ」はもうCDとしてリリースされてるから「新曲でいいかな?」って。そうしたらふたつ返事でOKしてくれて。どこか因縁みたいなものがあって、そのレコーディングが終わった後から新しいROSSOが始動していって。たしか、新生ROSSOの初ライブのとき、勝手にしやがれが対バンやったんだよね。

飯島 あー、名古屋のライブだ。

──チバさんやミッシェルとは何か縁を感じますね。

武藤 今やウエノ(コウジ)くんと2人でユニット組んで、2人でツアー回ってるぐらいだしね。ミッシェルって大好きなバンドだったから、一緒に仕事ができたらいいなって思ったし、仲良かったしお互いに認め合ってた部分もあったからね。そういう関わりの初仕事みたいなカタチで、チバくんが俺らの曲で歌ってくれたのはすごく感謝してる。

飯島 チバさんの歌を録ってるとき、スタジオのヘッドホンで聴いてたんですけど、最初の第一声からやっぱスゲえなって感動しましたね(笑)。

ベストアルバム「シルバー&ゴールド~ ゴールド 2004-2010」

  • [2CD] 2012年6月20日発売 3990円 EPICレコードジャパン ESCL-3921~3922 / Amazon.co.jpへ
収録曲
DISC1
  1. フィラメント
  2. 円軌道の外
  3. ブラック・マリヤ
  4. ヴァニタス
  5. 哀しみのクラウン
  6. U-K
  7. ブコウスキーの夢
  8. イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー・エイント・マイ・ベイビー?
  9. ハウリング・ウインド(インスタント・セッション/武藤Vo.)
  10. オーヴェール・ブルー
  11. エル・ソル
  12. ロミオ
  13. 黒い瞳
  14. マ・ジョリー
  15. ラスト・ダンス
  16. ケーキーズのテーマ
  17. ラグタイム
  18. ゼン・サマー・ケイム
DISC2
  1. バーフライズ・ストンプ(+THE ZOOT16)
  2. ロミオ(+チバユウスケ)
  3. 撃沈魚雷
  4. 詩人の血
  5. U-K-2
  6. ヴェルモット・フラワーズ(+エゴ・ラッピン)
  7. グッドバイ・ポーク・パイ・ハット
  8. ブラック・エメラルド(未発表)
  9. ペイン(インスタント・セッション)
  10. チェリー・ザ・ダストマン(+オダギリ ジョー)
  11. ご・め・ん・だ・ぜ
  12. U-K-3
  13. ユード・ビ・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ(+中島美嘉)
  14. ドライ・ボーン・ブルーズ(インスタント・セッション)
  15. マスカレード(+THE ZOOT16)
  16. アーバン・カウボーイ(+オダギリ ジョー)
  17. スーパーヒーロー
  18. アシェズ・トゥ・アシェズ(未発表)
LIVE INFORMATION
勝手にしやがれpresents 7 o'clock jump ~15th 勝手誕生祭~
  • 2012年7月13日(金)東京都 代官山UNIT
    OPEN 18:00 / START 18:30
    <出演者>
    勝手にしやがれ
    ゲスト:SOIL & "PIMP" SESSIONS / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
勝手にしやがれ(かってにしやがれ)

武藤昭平(Dr, Vo)、田中和(Tp)、福島忍(Tb)、浦野正樹(B)、田浦健(T.Sax) 、飯島誓(B.Sax) 、斉藤淳一郎(Piano)によるジャズパンクバンド。1997年に結成し、2001年に1stアルバム「WILD ROOM」をリリースする。パンクやスウィングジャズなどの要素を含む独特な音楽性で注目を集め、2004年にはアルバム「フィンセント・ブルー」でメジャーデビューを果たす。2006年には、THE ZOOT 16、EGO-WRAPPIN'、オダギリジョーらとコラボレーションを展開し注目を集めた。結成15周年の2012年1月、約3年ぶりとなるオリジナルフルアルバム「メロディ」とインディーズ時代のベストアルバム「シルバー&ゴールド ~シルバー 1997-2003」をリリース。6月にはメジャーレーベルでの楽曲を集めたベストアルバム「シルバー&ゴールド ~ゴールド 2004-2010」を発売した。