CDがないと音楽ができないというわけではないんで
──47都道府県を回ること以外にも、CD発売よりひと月も早く1stフルアルバム「色色人色」の音源をライブチケットに付けて販売するという手法も話題になりましたが、効果はありましたか?
滝口 「アウトロはガシャーンとしたい」って横山が自分で言ってたよね。
秋月 それはツアーが始まってから実感できましたね。僕らのライブには、YouTubeに上がってるようなリード曲しか聴いたことなかったり、CDを1枚も持っていないような子がいっぱい来るんですよ。なので、ライブに行くという意思表示をすることで音源をもらえるというのは、お客さんにとって予習のきっかけになったみたいで、自分たちが意図してなかった曲でもしっかり反応があったり、そういう意味ではすごくやってよかったと思います。
滝口 「この曲、知らーん」ってポカーンとしてる人がいなかったし、ちゃんと曲を聴いてから来てくれてるだけでもうれしかったですね。
──しかも、その分CDは売れなかったかと言うと、それなりの結果は残しているという。
秋月 多少は下がった部分もあったと思うんですけど、僕らの認識としては、CDはタオルやTシャツと同じようにグッズの1つなんですよ。僕も好きなバンドのタオルやTシャツは買うし、それと同じように好きなバンドならCDも欲しいと思うんです。だから、先に音源をもらってるからCDは買わんでもいいかというのはまた違う話だと思っていて。今回やってみてそのことがはっきりしたのでよかったなと。
──今後の新しい音楽ビジネスの形ですよね。
秋月 CDにそんなにこだわらなくていいと思ってるんです。もちろん、タワーレコードさんやTSUTAYAさんにはお世話になりまくってますけど、CDがないと音楽ができないというわけではないんで。
告知の順序を気にしてるのって関係者だけでしょ
──さて、今回リリースする「ありあまるフィクション」は3000枚限定販売ということですが、CDにこだわらなくていいと考えつつも数量限定にしてまでこの作品を出したかった理由を教えてください。
秋月 ファンに対する気持ちですね。「ありあまるフェイク」という曲はもともと、47都道府県ツアーのファイナルでお客さんに対するサプライズとして何かしたいねっていうところから始まっているんです。「一瞬も一生もすべて私なんだ」も「夜のスピード」もすでに配信ではリリースしてるんですけど、まだ盤にはしていなかったので、このタイミングでこの3曲を選ばせてもらいました。あと、このシングルには47都道府県ツアーのファイナルを収録したDVDが付いてるんですが、僕たちはこれまでにライブ映像を一度も出したことがなかったので、このタイミングやったらツアーの集大成として出せるかなと思って。
──なるほど。
秋月 あと、僕らの音楽を聴いてくれてる人の中にも、ライブに来たことがない人はかなり多いと思うので、そういう人たちに対してもアプローチできたらという思いもありますね。なので今回は、コアなファンにだけ届けばいいという打ち出し方をしてみようかなと。
──なるほど。
秋月 それに、こういう活動自体が世間に対してのプロモーションやったりもするので、「感覚ピエロが3000枚限定でシングル出して、即完したらしいで」っていう話をみんなにしてもらえるだけでも僕らとしては面白味があるんです。
──今作のリリースに関して、ほかにも興味深い試みがあります。1曲目「ありあまるフェイク」のミュージックビデオをYouTubeで先に公開して、その翌日にシングル発売を告知するという。これ、順序がおかしいですよね。
一同 (笑)。
秋月 最近、そういうことをそこまで気にしなくなりました。告知の順序を気にしてるのって関係者だけな気がするし、お客さんにとってはどうでもいいことだと思うんですよ。みんなにとっては曲が聴けるだけでうれしいでしょうから。だから最近、よくも悪くもかっちりしなくなってきたと言うか、MVも「明日公開しようと思ってます」ぐらいのノリでいいかなって。「何時解禁」みたいにかっちりしてるのはしんどいですよね。
──情報解禁日時を各メディアに周知するのってけっこう面倒ですもんね。
秋月 解禁時刻が18:00だろうが20:00だろうが、2時間経ったら一緒じゃないですか(笑)。
5年間の感覚ピエロてんこ盛り曲
──秋月さんは作品のアートワークも手がけています。メインソングライターの横山さんとしては、アートワークに対するこだわりはほかのメンバーよりも強いと思いますが、そのあたりはいかがですか?
横山 そこも一任してます。僕は、秋月さんの描く絵が感覚ピエロとして進むべき方向なんだと思っているし、グッズやロゴのデザイン、メディアに配ってる資料の内容にも同じことが言えますけど、自信を持って秋月さんに任せることが正しいと思ってます。
──秋月さんが作り出すものを信用しているわけですね。
横山 今回に関しても、僕が自分の中でしか見えてないものよりも、3曲を並べたときに客観的に見えたもののほうが正解だと思うんです。
──作品の内容についてですが、「ありあまるフェイク」はどういうプロセスで生まれたものなんでしょうか?
秋月 これは横ちゃん(横山)がオケもメロディも含めて全部デモで作ってくれて、それを各パートが持ち帰った結果、こういうヘンテコでややこしいものになりました。
横山 歌詞に関しては、秋月さんが「イメージがある」と言うのでお願いしました。あとは、この曲は47都道府県ツアーのファイナルで幕張イベントホール公演の開催を発表するときに流すことがすでに決まっていたので、僕が歌詞に盛り込みたいメッセージを伝えたり、お互いに言葉をすり合わせながら完成しました。
──デモの段階からこんなにド派手な曲だったんですか?
横山 そうですね。ただ、歌詞が乗ったことで印象が変わった部分もあると思います。もちろん、楽器はいろいろと重ねてるし、ピアノを入れたりもしてるんですけど、各メンバーが演奏することで感覚ピエロの色になっていったので、最終的には4人で作り上げた1曲になったと思います。
──どうしてこんなにさまざまな展開を盛り込んだ曲になったんでしょうか?
横山 イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、Aメロ、Bメロ、サビっていう、僕らがこれまでやってきたようなオーソドックスなアプローチではなく、曲を常に展開させ続けることに挑戦したかったんです。そうすることで「活動の仕方だけではなく音楽でもカッコいいものを作ったね」って言ってもらいたかったし、そういう曲を5周年のタイミングで出したかった。
──5周年の集大成的な気持ちも込められていたんですね。
横山 歌詞もサウンドも、“5年間の感覚ピエロてんこ盛り曲”みたいな感じです。
──そんな記念すべき楽曲のサビの歌詞にFワードが入ってるのはヤバいですね。
秋月 確かに(笑)。
横山 最近、汚い言葉を使うことはあまりなかったし、仮歌には「Fuck」と入れていたものの、特にその言葉に意味があったわけではなくて、あくまでもリズムやメロディのために使ってたんです。だけど、秋月さんが書いてきた歌詞にそれがそのまま残ってて。
──仮歌の段階からあった言葉というのは納得がいきます。かなりキャッチーだし、強烈に耳に残ります。
横山 ありがとうございます。
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誰が曲を書くとしても、メンバー全員に輝いてほしい