ナタリー PowerPush -岸井ゆきの(女優)×谷口鮪(KANA-BOON)×山岸聖太(映像作家)
映像作家&女優が証言する“KANA-BOONの魅力”
谷口鮪は若いのに不思議な無常観がある
──岸井さんは「ないものねだり」のビデオクリップに出ることが決まって、そこでKANA-BOONの音楽に出会った感じですか?
岸井 そうです。でも、もともとバンドものは好きでよく聴いていたんですけど、その中でもKANA-BOONの音楽はすごく好きなタイプだったので、出演の話が来てすごくうれしかったです。今では繰り返し聴いてます。
──ライブとかにも行ったり?
岸井 はい、行かせてもらってます。
谷口 年末とか汗だくになって楽屋に挨拶に来てくれたよね(笑)。
岸井 あー、あのときはちょっと盛り上がりすぎちゃって(笑)。
──年末って、フェスか何かですか?
谷口 そうです。僕らのライブを観にフェスにも来てくれて。でも、うれしいですね。そういう女優さんに自分たちのビデオクリップに出てもらえるというのは。
──山岸さんにとって、KANA-BOONの音楽の魅力というのはどこにあるんでしょう?
山岸 もちろんKANA-BOONの音楽自体が大好きなんですけど、特に鮪さんの歌詞が好きなんですよね。まだ若いのに不思議な無常観があるというか。なくなってしまうものに対しての思いが独特なんですよね。普通はもっと歳をとってからしか出てこないような無常観のようなものがある。なのに、音楽はエネルギーにあふれていて。その2つが同時に鳴らされているところが、とても興味深いですね。
──そう言われて、谷口さんはどう思いますか?
谷口 ……そうですね。なくなっていくもの、終わっていくもの……そこに自分のよりどころのようなものがあるのかもしれません。それを糧にすることでしか、前に進むことができない。何かを得るためには、何かを失わなくてはいけないというか。
──それはまさに今回の「生きてゆく」という曲のテーマでもありますよね。自分の夢と恋人と、どっちを取るかという。正直に言うと「どっちも取ればいいじゃん!」と思ってしまったりもしたんですけど、それは簡単なことではない?
谷口 やっぱり一般的な仕事をしていたらそれも可能なのかもしれないですけど、自分がやっている音楽の仕事というのはちょっと特殊で。自分の希望というか、目標の現実感というのが、特に最初は全然ないじゃないですか。限りなく0%に近いところから始まっているから。この「生きてゆく」という曲は去年上京する直前に書いた曲なんですけど、その頃は無根拠な自信だけが自分の支えになっていたから。それを他人が一緒に支えるというのは、難しいことだと思うんですよね。本当はお互いを支え合うこともできるのかもしれないけど、相手のことが好きだからこそ、相手の未来を思ってそれが言えないということもあると思うんですよね。
──なるほど。特に地方から東京に出てくる場合は、物理的な移動も伴いますしね。
谷口 はい。
──岸井さんはミュージシャンではなく女優という仕事を選んだわけですが、谷口さんの言うその感覚ってわかりますか?
岸井 感覚としてはとてもよくわかります。実際にそういうことがあったというわけじゃないですけど、2つのことを同時に追いかけるということは、私には難しいと思います。
──それは例えばルーレットでいうなら、姿勢として持ち金すべてを賭けないと、当たるものも当たらないという感覚なのかな?
谷口 ああ、そうですね。
──まさか、ギャンブルの例えで同意を得てしまうとは(笑)。
谷口 でも本当にそういうところはあると思います。
岸井 うん。あると思います。
──そういう経験をしている人にしかわからないことというのは、あるのかもしれないですね。
山岸 僕はこの歌のテーマは「後ろめたさ」だと思ったんです。男女の恋愛関係を描いた歌でもありますけど、それだけじゃないような気がしていて。人間って、後悔と一緒に生きていくものだと思うんですよ。恋人に限らず、今まで自分が出会ってきた友達とか仲間、過ごしてきた場所、そういうものに対しての「後ろめたさ」というか。今、KANA-BOONというバンドはものすごい勢いで大きくなってきていますけど、ひょっとしたらそこにも地元から離れていくことだったり、好きな人から離れていくことだったり、そういう「後ろめたさ」があるんじゃないかなって。今回のビデオクリップでは、自分なりにそういう感情を描くことができればと思ったんです。
次のページ » 岸井さんがズタボロになるような曲を書きます
- ニューシングル「生きてゆく」/ 2014年8月27日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / KSCL-2463 ~4
- 通常盤 [CD] 1258円 / KSCL-2465
CD収録曲
- 生きてゆく
- 日は落ち、また繰り返す
- ロックンロールスター
初回限定盤DVD収録内容
- 「もぎもぎKANA-BOON」ダイジェスト
ライブ情報
KANA-BOON野外ワンマン ヨイサヨイサのただいまつり! in 泉大津フェニックス
- 2014年8月30日(土)大阪府 泉大津フェニックス
OPEN 14:00 / START 18:00
KANA-BOON(カナブーン)
谷口鮪(Vo, G)、古賀隼斗(G)、飯田祐馬(B)、小泉貴裕(Dr)からなる4人組バンド。高校の同級生だった谷口、古賀、小泉を中心に結成され、のちに飯田が合流して現在の編成となり、地元大阪を中心に活動を展開する。2012年に参加した「キューン20イヤーズオーディション」で4000組の中から見事優勝を射止め、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブのオープニングアクトを務める。2013年4月には活動の拠点を東京に移し、バンド初の全国流通盤となる1stミニアルバム「僕がCDを出したら」をリリースし、夏には「ROCK IN JAPAN FES」「SUMMER SONIC」「SWEET LOVE SHOWER」など大型フェスに出演したことを機に知名度を全国区に拡大させる。2013年9月シングル「盛者必衰の理、お断り」でメジャーデビューを果たし、10月に1stフルアルバム「DOPPEL」を発表。2014年2月に2ndシングル「結晶星」、5月に3rdシングル「フルドライブ」、8月に4thシングル「生きてゆく」をリリース。8月30日にキャリア最大規模のワンマンライブを大阪・泉大津フェニックスで開催する。
山岸聖太(ヤマギシサンタ)
1978年生まれの映像ディレクター。2008年よりフリーランスで活動を始める。これまでにSAKEROCK、ユニコーン、ASIAN KUNG-FU GENERATION、乃木坂46らのビデオクリップを制作している。星野源、大原大次郎とともに結成した映像制作ユニット山田一郎でも活躍。
岸井ゆきの(キシイユキノ)
1992年生まれの女優。舞台、ドラマ、映画、CMなどさまざまな分野で活躍している。リアリティのある演技が高く評価されている。11月6日~10日に東京・青山円形劇場にて主演舞台「サナギネ」が上演される。