音楽ナタリー Power Push - kainatsu
マイペースに歩んで10年 ポジティブなメッセージ伝える「いい予感がするよ」
“アーティストkainatsu”をより楽しめている
──出産後半年でスタートしたというマンスリーライブは今までのステージと何が違いましたか?
日常とステージの上はあまりにも別世界なので、私は今までステージに上がる瞬間にスイッチが入るタイプだったんです。ママになってからはその切り替えだったり、メリハリがさらに付いたんじゃないかなって。普段の反動じゃないですけど、“アーティストkainatsu”をより楽しんで、解放できるようになった気がします。
──少し休んでステージの上へ戻ってきたとき、「私ってこんなに歌が好きだったんだ」って思ったりも?
すごく思いました。今まで、アコースティックの弾き語りライブは窮屈だと思っていたところがあったんですね。ピアノ1本でやらなきゃいけないし、けっこうストイックな作業も多いので。ただ復帰後のライブはそれがガラッと変わって、ピアノ1本でもより自由に弾けるようになったんですよ。理由は自分でもわからないんですが、いかに楽しく解放された状態でステージにいられるか……ってことに今はストイックになれてる気がします。
──多忙な毎日だからこそ本当に大切なものが浮き上がってきて、よりシンプルに「音楽を楽しむ」ことを追求できるようになったんですかね?
子育てと両立しているわけだし楽しくないんだったら音楽をやる必要はないんですよ。やりたいと思ってるからこそ楽しく嘘のないライブをして、それがお客さんにも伝わったらいいなって。そんな感じで始めたマンスリーライブは毎月自分で内容を考えてゲストも私が直接ブッキングしてたんですけど、自分は何をやりたいのか、何を面白いと思ってやってるのかをその都度じっくり考えて。全12回、本当に楽しくて中身の濃いものができたと思うし、自信になりましたね。
大人がふっと力を抜ける曲を作りたい
──11月2日には配信シングル「いい予感がするよ」をリリースしましたね。どういう経緯で作られた曲ですか?
10周年の記念ライブを11月19日にやるんですけど、そこでみんな一緒に歌える曲が欲しいなと思って。私の曲って譜割りが難しいみたいで、「カラオケで歌いにくい」って言われることが多いんですよ。だから「ちゃぷちゃぷ」とか「じゃーじゃー」とか歌いやすいフレーズをいっぱい散りばめて、「みんなで一緒に歌おうー!」って感じで作りましたね(笑)。
──その擬音語フレーズ、1回聴いただけで覚えました!
うれしいです。みんなで楽しく歌って盛り上がって、会場から出るときに「ああ楽しかった。またがんばろう!」って思ってもらえたら本望です。そういうポジティブで景気のいい感じを目指したのと、あとは自分プラス聴いてくれる人たちの未来を明るく照らせる曲になればいいなって。
──楽曲全体にポジティブさがあって、嫌なことがあっても聴いたら自然と心が軽くなりそう。
そういう曲になっていけばいいですよね。私はこれまでずっと音楽ばかりやってきたから社会性がゼロだったんです(笑)。子育てを通して社会といろいろ交わったときに、世の中のお母さんはこんなにがんばってるんだな、とか自分が今まで知らなかった大人の大変さを目の当たりしたんです。でもそれって当たり前のことじゃなくて、きっとみんな「がんばったね」って言ってもらいたいと思ってるんじゃないかなって。今回は、そうやって大人がふっと力を抜ける曲を作りたいっていう気持ちもありました。憂鬱なことがあった日や、がんばった帰り道に聴いてもらえたらうれしいですね。
──楽曲資料にもあるのですが、kainatsuさんはネガティブな感情に負けそうになったとき実際に「じゃー!」と口に出してスッキリしてるのだとか。
はい! これ、驚きの効果がありますよ。嫌なことをトイレに流すようなイメージで「じゃー! じゃー!」って。そしたら不思議なくらい心がスッキリして、もう考えることはないんです。
──ちなみにkainatsuさん発案?
はい、自己流です(笑)。あるとき思い付いてやってみたら、自分でもビックリするくらい効果があって。やってる自分自身に対しても「私何やってるんだろう?」ってなって、悩みとかどうでもよくなるんです(笑)。
10周年ライブは出し惜しみは一切なし!
──10周年記念ライブの準備は順調に進んでいますか?
リハはこれからで、セットリストがやっと決まったところです(取材は10月中旬に実施)。10周年なので選曲は迷いましたね。みんなが聴きたいであろう曲や初めてライブに来てくれる人にも自分の歴史がわかるようなセットリストにしたくて。出し惜しみは一切なし!な感じになってると思います。
──会場の東京・クラブeXは、高級感の漂う上質な雰囲気ですよね。
せっかくの10周年なのでスペシャル感がある場所がいいなと思って。客席は半円形で、ステージにはグランドピアノがあるんですよ。ワンマンではグランドピアノを弾いたことがなかったので、披露したときには新しいkainatsuを味わってもらえるんじゃないかと思ってます。
──意気込みはいかがでしょう?
10周年の感謝を伝えられる場所ということで、「なっちゃんに出会えてよかった。これからもなっちゃんの音楽を聴いてがんばっていこう」って思ってもらえるようなライブにしたいですね。10年間でお世話になった人たちにもたくさん声をかけたいし、1年間のマンスリーライブでカウントダウンしてきた経緯もあるので絶対に成功させたいですね。
──ライブを終えてからの10周年イヤーはどう走っていきますか?
10周年イヤーはしっかり音楽を届けられる1年にしたいと思ってます。新曲も溜まってきているのでアルバムも出したいし、音楽に絡めたほかの可能性にもチャレンジしていきたい。朗読とか言葉のお仕事にも興味があるので、お誘いをいただければチャレンジしたいですね。
──ママの肩書きを生かした仕事はやらないんですか?
うーん、そこは意外と消極的なんです。「なっちゃんもママになったのね」とか言われると、まだちょっと気恥ずかしさがあるんです(笑)。
- 配信シングル「いい予感がするよ」2016年11月2日発売 / 250円 / Delicious Deli Records
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収録曲
- いい予感がするよ
kainatsu 10th anniversary
「きょうの私でうたう歌」
2016年11月19日(土)東京都 クラブeX
OPEN17:00 / START 17:30
料金:4000円(ドリンク代別)
kainatsu(カイナツ)
1983年東京生まれのシンガーソングライター。父はロックシンガーの甲斐よしひろ。大学時代から本格的な音楽活動をスタートさせ、同年代の女性が強く共感する歌詞と、さわやかで親しみやすいポップなメロディが話題を呼ぶ。2005年5月にミニアルバム「夕暮れワルツ」をインディーズからリリースし、同時に下北沢などでストリートライブを開始。翌年11月にシングル「下北沢南口」でメジャーデビューを果たす。2012年4月、アーティスト名表記を甲斐名都からkainatsuに変更した。メジャーデビュー10周年となる2016年11月に配信限定シングル「いい予感がするよ」を発表。同月にアニバーサリーライブ「きょうの私でうたう歌」を東京・クラブeXで開催する。