音楽ナタリー PowerPush - 華原朋美

“生き様”見せた9年ぶりツアー WOWOW放送直前インタビュー

11月30日(日)21:00からWOWOWにて華原朋美のライブ番組「TOMOMI KAHARA CONCERT TOUR 2014~MEMORIES~」が放送される。この番組では華原が9月から10月にかけて行った全国ツアーより、10月4日に東京・NHKホールにて開催された東京公演の模様を観ることができる。

ナタリーでは番組の放送を記念して、ツアーを終えたばかりの華原にインタビューを実施。自身にとって9年ぶりとなった今回のツアーの感想やNHKホール公演の見どころ、“歌手・華原朋美”としての今年1年の手応えなどを語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 インタビュー撮影 / 上山陽介

ライブ、レコーディングと多忙な日々

華原朋美

──華原さんにとってツアーは9年ぶりということでしたが、今回はどういう気持ちで臨まれたんでしょうか?

9年ぶりと言っても、その9年の中にいろんなことがあったので、今回のツアーはまるっきり初めてのような気持ちだったんです。それにツアーは活動休止前にもやってたんですけど、舞台監督とかPA、バンド、ダンサーの皆さん含め、スタッフと話をするっていうことが以前はあまりなくて。今回のツアーではいいことでも悪いことでも、いろんな意見を言い合えたりしたので、ある意味“ステージを作る”ということに関われたのは今回が本当に初めてだったと思います。

──ライブ中のMCではバンドメンバーとの打ち上げの様子が語られていて、“歌手・華原朋美”のステージではなくて、バンドメンバーやスタッフも含めた“チーム・華原朋美”のステージだという印象を受けました。

私はコミュニケーションの取り方が不器用なので、人との間に線を引いてしまうことがあるんですよね。でも今回のツアーでは本当に思ったことを素直に言えて。強いことを言い合って、関係がちょっと崩れかけたりもしたんですけど、結果的にそれがステージに上がるために、お客さんに喜んでもらうために必要な出来事だったりしたんです。ツアーを回るためにみんなが集まって、決められた時間の中でステージを作って、そして本番を迎えるのがこんなに大変なんだってことを実感した1年でした。私自身、今回のツアーは人間的に成長できたいい機会だったなって思っています。

──ツアーは10月19日に行われた愛知・アイプラザ豊橋での公演でファイナルを迎えたわけですが、今の率直な気持ちはいかがですか?

華原朋美

今はもう本当にホッとしています(笑)。それと「ちゃんとツアーが回れるんだ」っていう自信につながりました。事務所の社長さんや、スタッフにちゃんとした姿を見せられたというか、「もう大丈夫だね」って意識を持ってもらえたのもうれしかったですね。

──今回のツアーは9月から10月にかけて15公演を行うというもので、復帰2年目の華原さんにとってはハードなスケジュールだったのではないでしょうか?

正直言って、ツアー中は「途中でダメになったらどうしよう」とか、「ファイナルを迎えられないんじゃないか」とか、そういう悪いイメージを持ってしまうこともあって。そのたびに「必ずファイナルを笑顔で迎えて、そしてまた次のステップに行くんだ」って自分に言い聞かせてツアーに臨んできました。それと今年は人生で一番よく歌った年だと思っていて。特に夏からは「MEMORIES 2 -Kahara All Time Covers-」のレコーディングがあって、ツアーのリハーサルと本番があって、夏フェスにも出て……という怒涛のスケジュールだったので本当に喉が心配だったんです。自分では喉が強いほうだと思ってるんですけど、これまでこんなに歌ったことがなかったので、吸入器を当てたり、泊まる部屋に加湿器を最低でも3台は置いてもらったりして、とにかく喉には気を遣いました。

ステージで“生き様”を見せる

──華原さんは今年「MEMORIES -Kahara Covers-」と「MEMORIES 2 -Kahara All Time Covers-」という2作のカバー集をリリースしています。ライブでもこれらの収録曲を軸にしたセットリストが披露されていますが、特に思い入れのあるカバーはありますか?

「MEMORIES -Kahara Covers-」に収録された「DEPARTURES」ですね。小室さんに「歌ってもいいですよ」って許しをいただいて、ステージ上でこの曲を歌えている自分が信じられなくて(笑)。1つひとつの歌詞が胸に沁み込んでいて、ステージ上で歌うと懐かしさとか、多少のつらい思い出とか、こみ上げてくるものがあるんですよね。すごくいろんな思いが詰まっていて、私の中ではある意味人生を変えてくれた曲だと思っています。

──ツアーのライブはバックバンドを従えたステージでしたが、ライブならではの味が出せた曲はありますか?

華原朋美

実はアンコールで披露した「HOWEVER」って、ツアー中にやり方を変えているんです。ツアーが始まった頃は、ステージ上に私1人だけで歌っていて。もちろん華原朋美の「HOWEVER」をお客さんに届けたいと思ってやっているわけなんですけど、やっぱりこの曲はGLAYさんのイメージが強くて、バンドをバックにこう手を広げながら歌いたいなって思ったんです。だからスタッフやバンドメンバーにお願いして、バンドと一緒に歌えるようにしてもらって。バンドで歌えるようになったのは本当にうれしかったですね。

──そういえば今回のツアーでは華原さん自身が演出を手がけたんですよね?

ツアー前に「自分で演出をやる」って言っちゃって、すごく後悔しました(笑)。「演出どうするの?」って聞かれるたびにあたふたして……。でも、そういう責任を背負って、ちゃんと頭を使ってライブ作りに参加できたのはよかったと思ってます。

──実際に華原さんが今回のツアーの構想を考えたんですか?

ライブとかツアーをやるときって毎回テーマを決めるんですけど、今回はそのテーマを「スペイシーなイメージにしよう」って決めたんです。例えば光の当て方だったり、レーザーとかをとにかく増やしたり、ステージ上のモニターとかもスぺイシーなイメージの映像を映してもらいました。演出といっても私はただ「ああしてほしい、こうしてほしい」ってお願いするだけで、実際にはスタッフさんたちが動いてくれていたわけなんですけどね。

──ライブ中には“朗読コーナー”が用意されていて、華原さんが「赤毛のアン」の一説を読むシーンもありました。なぜこういうコーナーを用意したんでしょうか?

やっぱりライブにメリハリを付けたいっていうのがあって。私は人よりも不器用だし、変な生き方をしてきたので、そのダメだった部分とかためになったこと、要は生き様みたいなものをきちんと取り上げたステージにしたいと思ったんです。昔はいろいろあったけど、今は未来に向かって前向きにがんばっていることをきちんと自分の口で話して、歌と交えて届けたいというか。実は私、以前「赤毛のアン」のミュージカルをやらせてもらったことがあって、そのときからアン・シャーリーという女の子の思うことだったり、お話することにすごく共感していたんです。今回はちょうどNHKの連続テレビ小説で「花子とアン」をやっていたので、朗読をやろうってことになったんです。

WOWOWライブ「TOMOMI KAHARA CONCERT TOUR 2014 ~MEMORIES~」
2014年11月30日(日)21:00~
2014年12月25日(木)19:00~(リピート放送)
番組公式サイト
華原朋美(カハラトモミ)

1995年「keep yourself alive」でデビュー。以後「I BELIEVE」「I'm proud」などヒット曲をリリース。歌手活動以外にもCM、ドラマ、バラエティ等で活躍するも2007年に活動を休止する。そして2012年12月、5年ぶりに芸能活動を再開。2013年4月に7年ぶりの新曲、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の劇中歌「夢やぶれて- I DREAMED A DREAM -」をリリースした。2014年には「MEMORIES -Kahara Covers-」「MEMORIES 2 -Kahara All Time Covers-」の2作のカバーアルバムをリリースし、同年9月からは9年ぶりとなる全国ツアー「TOMOMI KAHARA CONCERT TOUR 2014~MEMORIES~」を開催した。