音楽ナタリー PowerPush - 限りなく透明な果実
不器用に太陽を目指す3人の現在地
バンドとしてカッコいいことやろうよ
──曲はどういう作り方をしているんですか?
アキラ セッションして、セッションして……。
サトル セッションして気持ちいいフレーズができたら……。
アキラ それを軸に1曲。「セッションしたうちのここのフレーズよかったじゃん」ってなったら、そこから曲を作っていきますね。
──じゃあ作詞はサトルさん、作曲は限りなく透明な果実という感じなんですね。
サトル そうですね。セッションは「バンドとしてカッコいいことをやろうよ」っていうことがスタート地点になることが多いです。例えば「ベース、とにかくカッコいいリフ弾けよ」とか。「ドラムはこうしたらカッコいいんじゃない?」とか。それでよかったら「そこから広げていこうぜ」っていうのがけっこうありますね。
──そういった作り方だとけっこう時間もかかるんじゃないですか?
一同 かかりますねえ。
ニシカワ セッションの最初のテーマに対する3人の捉え方がそれぞれ違うんですよ。「カッコいいもの」というテーマでも何をもってカッコいいとするかが違う。それのすり合わせが一番時間かかる(笑)。
アキラ 「あれのよさはここじゃねえの?」みたいな感じでもめますね。早いときは一瞬でできるんだけどね。何曲か並行して作業を進めてて、1年で2、3曲くらいはトントン拍子でできる。一方で「違うっしょ」って……。
サトル ずっともめてる曲もあるね。
──アルバムのすべての曲の制作期間をくくるとしたらどれくらいですか?
アキラ くくったら長いんじゃない?
サトル 2年から3年くらいですね。
──バンドが鳴らす音の世界観っていうのは、皆さんで共有されているものなんですか?
サトル いや……アキラらしいベース、ニシカワくんらしいドラムっていうのがやっぱりあって。
アキラ そう、やっぱり自分のルーツが出るというか、俺はうるさいのが好きだから自分を見せようとしたらそういうのをやっちゃうし。ドラムもね?
ニシカワ そうだね。
──歌詞とメロディは全体的にノスタルジックなムードですが、ところどころにラウドな演奏が差し込まれたりしていて、そのマッチ感が面白いなと思いました。
アキラ けっこう言われるよね。メロディと3人の演奏にいい意味でギャップがあるっていうのは。
──音を作り上げていく上で3人が大事にされていることはあるんですか?
ニシカワ 俺はドラマーなので、ボーカルの声と歌詞と、彼の得意のアルペジオが生かせるように、という思いはありますね。
アキラ 俺はどうかな。そう言われると俺はなんだかんだ好きなことをやってるだけかもしんない(笑)。歌の邪魔はしないようにしてるんだけど、たまには前に出たいなーとか……。
サトル 邪魔してんじゃん(笑)。ベースなのにギターみたいに音を歪ませたりするんですよ。
アキラ 結局好き勝手やってるだけ(笑)。
──サトルさんはどうですか?
サトル アンティークな音を意識してます。
アキラ ギターはそうだよね。兄ちゃんは古いものが好きだから。
──じゃあ、そういった3人の音のミックス感がこのバンドの音、ということですね。
サトル ええ。けっこう面白いんですよね。ニシカワくんの前衛的でスタイリッシュなドラムとアキラのパンクなベースと、俺の懐古主義な音が集まるとこういうサウンドになるんだっていう。このバンド特有の音ができるというか。
がむしゃらにやってると、縁で世界が開ける
──この作品がバンドにとって初の全国流通盤ということですが、作品を全国に届けることができるというのはどんなお気持ちですか。
ニシカワ いろんな人に聴いてほしいっていうのが第一ですね。
アキラ できるだけたくさんの人に届いてほしいなって思います。
サトル 特に不器用に生きている人には共感していただけるんじゃないかなって思ってます。
──今後の活動についてもお話を伺いたいんですが、今回アルバムをリリースされて、春にかけてリリースツアーも実施しますよね。今後の展望を聞かせてもらえますか。
サトル とにかく、ようやくできたこのCDを待っててくれている人に届けるっていうのが一番。実はその先についても3人で考えていて、もう何曲か上がってきてるんです。「LILI&HAL」をライブでもしっかり表現して、次の作品を作ろうと考えてます。
──次回作のテーマはすでに?
サトル そうですね。おぼろげながらあります。
──ちなみにライブには、どんな思いを持って臨まれるんですか?
ニシカワ ジャケットの雰囲気からライブの画が想像できないというか、そこにすごくギャップを感じてくれてる方がけっこういて。ただ楽曲を演奏して表現したいことっていうのはCDでもライブでも変わらないんですね。音源のニュアンスとライブのニュアンスが両方あるので、CD買って聴いてくれる人こそ、ライブを観てほしいですね。
アキラ 俺ら、けっこう音源とライブが違うって言われがちで。だけどライブでの楽曲の再現度は高いと思うし、かつアクティブにやっています。
──先ほどのリリエンタールの話の中でサトルさんがおっしゃっていた“このバンドは不器用だ”っていう話が心に残っているんですが、今後世の中をうまく渡っていきたいというか……これからの活動の中で器用になっていけたらというような願望はあったりします?
サトル どうなんですかね……。あまりそういうことは考えたことはないですね。ただ、3人でがむしゃらにやっていると、自然と人の縁がきっかけで世界が開けることもあるので。そういうことに少し期待はしますね。今回ナタリーさんで話ができたのも、よい縁がつながってのことだと思うので。ほかにもそういう広がりがあったらいいよね。
アキラ 単純にいろんな人に聴いてほしいからね。やっぱり縁がつながっていって……いつか神様が僕らにほほ笑んでくれればいいな(笑)。
収録曲
- halo:太陽、オレンジ
- 三番街、発明家
- カンパネルラ
- 小さな魔女
- 灯台守の歌
- ウッドペッカー
- リリエンタール
限りなく透明な果実 mini album“LILI&HAL(リリエンタール)”リリースツアー
- 2015年2月14日(土)東京都 渋谷club乙-kinoto-
- 2015年2月20日(金)大阪府 天王寺Fireloop
- 2015年2月21日(土)徳島県 club GRINDHOUSE
- 2015年2月27日(金)宮城県 enn 3rd
- 2015年3月6日(金)東京都 下北沢Daisy Bar
- 2015年3月13日(金)京都府 京都MOJO
- 2015年3月15日(日)兵庫県 ART HOUSE
- 2015年4月10日(金)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
限りなく透明な果実(カギリナクトウメイナカジツ)
フクシマサトル(Vo, G)、サトルの実弟のフクシマアキラ(B)、ニシカワユウスケ(Dr)から成る3ピースバンド。サトルの呼びかけで2011年に活動をスタートさせる。2011年3月に1stデモCD「十字衛生軍」をライブ会場で販売し、2012年1月に2ndデモCD「方舟ep+マクロファージ」を発表。同年5月には1stミニアルバム「サナトリウム.end」をライブ会場及びdisk union限定で発売する。2013年10月には3rdデモCD「『 』(無題)」を発表。2015年1月にバンド初の全国流通盤となるミニアルバム「LILI&HAL」(リリエンタール)をリリースした。