音楽ナタリー PowerPush - 限りなく透明な果実
不器用に太陽を目指す3人の現在地
限りなく透明な果実が1月14日に2ndミニアルバム「LILI&HAL」(リリエンタール)をリリースした。
ノスタルジックなメロディと文学的な歌詞が特長的な7曲が収められた本作は、航空工学の発展に貢献したドイツ人飛行研究家・リリエンタールの史実に着想を得て制作された。
バンドにとって初の全国流通盤となるこの作品の発売に合わせ、ナタリーではメンバー3人にインタビューを実施。なぜ3人はリリエンタールという人物に惹かれたのか。その理由や、楽曲に込めた思いを語ってもらった。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 上山陽介
弟とは仕方なく組んだ
──ナタリー初登場ということで、まずは結成の経緯からお聞かせいただければ。このバンドはサトルさんの声がけからスタートしたんですよね。なぜサトルさんは弟のアキラさんとニシカワ(ユウスケ)さんに声をかけたんですか?
フクシマサトル(Vo, G) 特に選択肢がなかったっていうのが一番の理由で。もっといいメンバーがいるなら弟とは組みたくなかったですね(笑)。ただ、弟はニシカワくんと違うバンドをやっていたんですが、そのバンドのライブを観たときにカッコいいなと思ってしまったんです。あんまり弟とはやりたくないけどカッコいい、みたいな複雑な心境のまま組みました。
──お2人は声をかけられたときはどういった心境でしたか?
フクシマアキラ(B) そのときまだニシカワくんと違うバンドやってたからね。2人で「どうする?」って。
ニシカワユウスケ(Dr) 俺に至ってはサトルさんに会ったこともなかった。
アキラ 俺からしたら「兄ちゃんかあ」みたいな(笑)。
──アキラさんは小さいとき、お兄さんと楽器を一緒に演奏してたんですか?
アキラ セッションはないけど、結局洋服とかと一緒で、音楽も“お下がり”を聴く部分が多かったんです。好きな音楽とか、ルーツ的な所はけっこう影響受けてる部分があると思いますね。
──そうなんですね。では皆さんのルーツになっている音楽についてお聞きしたいです。
サトル 俺は両親の影響で、クラシックが好きで今でもよく聴いていますね。あとはレコードが好きで。母がピアノの先生をしていまして、親父もコレクターというかレコードやCDを集めている人だったんです。俺はレコードプレーヤーを持っていないんで、今はわざわざ図書館に聴きに行ったりしていて。懐古主義的なところがあると思います。
──アキラさんは?
サトル パンクだよね。
アキラ そうだね。俺のルーツはホントベタですけど、Hi-STANDARD、BRAHMANといったコアパンクとか。あとは兄の部屋から聞こえてきたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか。パンクとかロック系ですね。
──そうだったんですね。ではサトルさんはクラシックは特に誰が好きなんですか?
サトル ショパンですね。
──ニシカワさんは、特に影響を受けたアーティストは?
ニシカワ 俺もアキラと同じで、パンクの影響はでかいですね。あとは父親の影響でスピッツやゴスペラーズといった、きれいな音楽とかも好きです。演奏するならエモーショナルなものが好きですね、THE BACK HORNとかも好きでコピーしたりしてました。けっこうまんべんなく聴いてます。
不格好さが逆にいい
──バンドの活動の中で気になったのが、サトルさんはライブ会場でファンに自分の本を貸す企画をされているんですよね。本がお好きなんですか?
サトル そうですね。本からインスピレーションを得て歌詞を書くことが多々あるので、そういった面からもお客さんと何か共有できたらなと思って。「俺はこういう本を読んでるよ」っていう紹介の意味合いで、ライブのときにお客さんに本を貸すっていう企画をやりました。これがすごく好評で、持っていった本がごっそりなくなって。また揃えないとっていううれしい悩みがあります。
──持っていく本はどうやって選ぶんですか?
サトル テーマはあまりなくて、曲やバンドの世界観に関連していそうな本を持っていきます。
──TwitCastingを使って「サトル’s 図書館」というタイトルで本の朗読の配信もされたりしていて。
サトル そうですね。朗読をすると気持ちが落ち着くので、心の修復じゃないですけど、自分のためにやっているところが大きいです。
──あとは絵も描かれるんですよね。今回のジャケットもサトルさんが描いたと聞きました。すごく不思議な世界観がありますよね。
アキラ 女の子の腕の向きとか若干ヘンだけどね(笑)。俺らの中ではこの不格好さが逆にいい!ってなって「よし、採用!」となりました。
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収録曲
- halo:太陽、オレンジ
- 三番街、発明家
- カンパネルラ
- 小さな魔女
- 灯台守の歌
- ウッドペッカー
- リリエンタール
限りなく透明な果実 mini album“LILI&HAL(リリエンタール)”リリースツアー
- 2015年2月14日(土)東京都 渋谷club乙-kinoto-
- 2015年2月20日(金)大阪府 天王寺Fireloop
- 2015年2月21日(土)徳島県 club GRINDHOUSE
- 2015年2月27日(金)宮城県 enn 3rd
- 2015年3月6日(金)東京都 下北沢Daisy Bar
- 2015年3月13日(金)京都府 京都MOJO
- 2015年3月15日(日)兵庫県 ART HOUSE
- 2015年4月10日(金)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
限りなく透明な果実(カギリナクトウメイナカジツ)
フクシマサトル(Vo, G)、サトルの実弟のフクシマアキラ(B)、ニシカワユウスケ(Dr)から成る3ピースバンド。サトルの呼びかけで2011年に活動をスタートさせる。2011年3月に1stデモCD「十字衛生軍」をライブ会場で販売し、2012年1月に2ndデモCD「方舟ep+マクロファージ」を発表。同年5月には1stミニアルバム「サナトリウム.end」をライブ会場及びdisk union限定で発売する。2013年10月には3rdデモCD「『 』(無題)」を発表。2015年1月にバンド初の全国流通盤となるミニアルバム「LILI&HAL」(リリエンタール)をリリースした。