ここに居続ける決意を「東京」で歌ってる

──では「愛していると言ってくれ」は、吉祥寺ですか？（ドラマ「愛していると言ってくれ」の舞台は吉祥寺）

そうです。わかりやすいですよね（笑）。もともと北川悦吏子さんの脚本のドラマが好きなんです。俺が観始めたのは「ロンバケ」（「ロングバケーション」）くらいからなんですけど、“月9”感というか、「こういうのっていいなー」という憧れがあって。「愛していると言ってくれ」はまだ観たことないんですけどね。いつもレンタル屋で「どうしようかな」って悩むんだけど。

──この曲はアルバムの中でも際立ってポップですよね。

それも都会のイメージかもしれないですね。子供のときにドラマを観て「東京に行けば、あんなにキラキラした日々が待ってるんだ」と思ってたんですよ。でも、実際に来てみたら、そんなことは全然なくて。この曲の歌詞でも、結局は生々しい生活を歌ってますからね。その分サウンドはキラキラさせたいなと。

──“都会に対する憧れと現実”がアルバムに共通するテーマになっているようですね。

そうですね。10代の頃は「東京に行けば何か面白いことが起きるんだろうな」という素直な憧れがあったけど、そんなことが起きるはずがないし、失望した部分もあって。でも、憧れる気持ちを持っていることは大事だと思うんですよね。もし挫折したとしても、何回でも憧れることはできるし、そこからまた進んでいけるんじゃないかなって。そういう人間でありたいという自分の気持ちもありますね。

──カネコさん自身もこのアルバムを作り上げたことで、挫折から乗り越えられたところもある？

そうですね……。丸裸の状態で歌詞を書いているから、聴いていると落ち込みそうになることもあるんですけどね。自分にとっても心が揺れるアルバムになったし、それがちゃんと届くといいなって思っています。今はとにかく「アルバムの曲を聴いてほしい」というだけなんですよ。全力で演奏するので、ぜひライブで聴いてほしいなっていう。ツアーもあるので、そこで思ったことや感じたことが、自然に次につながればいいなと思いますね。

──カフカにとっても、大きなポイントになりそうですね。カネコさん、東京の中で落ち着く場所ってあるんですか？

うーん、ないですね（笑）。どこにいても落ち着かないのが普通の状態なんですよ。

──常に違和感がある？

ありますね。居心地がいい場所があると引きこもっちゃうかもしれないけど、そんなことはなさそうです。いつも「自分はここにいていいのか？」と自問自答しているというか……。でも、ここに居続ける決意を「東京」という曲で歌ってますからね。もう大丈夫です。