今はトゲトゲでもいいんですよ
──「ハリシア」はJUJUさんと石成正人さん、川口大輔さんの3名が共同でプロデュースした曲で、歌詞は土岐麻子さん、作曲は川口さんと石成さんです。この曲ができた経緯を教えていただけますか?
去年、私のファンクラブの会報誌で20年一緒にやってきた人と鼎談する企画があって。そのときに石成さんと川口大ちゃんと集まったんですね。すでにアルバムの制作が始まっていたんですが、「まだアルバムに間に合うなら、この3人で新曲を作りたいね」という話になったんです。「こういうタイプの曲が欲しい」と話したら、石成さんが後日デモを送ってきてくださって。ちょうど大ちゃんといたので一緒に聴いて、「超いいじゃん! 大ちゃんこれにメロディ付けてね」とその場でお願いしました(笑)。歌詞は私の気持ちを代弁してくれる土岐ちゃんにお願いして。土岐ちゃんと「ここはこんな気持ちがいいよね」とやり取りしながら作っていきましたね。
──「ハリシア」というワードは土岐さんから出てきたのですか?
そうですね。土岐ちゃんから「ねえねえ、今までサボテンの曲ってある?」と連絡が来て。「ないよ。サボテンの曲って何それ」「あ、そう。ないのね。じゃあいいや」というやりとりをした2日後くらいに送られて来たのが「ハリシア」というタイトルのこの歌詞でした。「ハリシアって何よ」と思って調べたらサボテンで。若い頃は誰しもトゲトゲしているけど、いろんな人や本、映画でもなんでもいいけど「あなたはそのままでスーパースターなんですよ」と思わせてくれる何かに出会って、だんだんトゲが取れていくじゃないですか。あのときのあなたのおかげで強く優しくなれているのかもしれないし、そうなりたいと思わせてくれたあなたにとってのスーパースターになれたらいいなという、私たち4人の気持ちをギュッと詰めた曲になっています。この曲は今トゲトゲだらけの若者たちにも聴いてほしくて。大人たちから「そのうちうまくいくよ」と言われても綺麗事に聞こえるだろうけど、トゲを取ってくれる誰かや何かにいつか絶対出会うはず。だから今はトゲトゲでもいいんですよ、トゲトゲのあなたもスーパースターなんですよ、というメッセージを少しでも受け取ってくれたらうれしいです。
──土岐さんはもう1曲「春の嵐」の作詞もされていますね。彼女の詞のどんなところに惹かれているんですか?
土岐ちゃんは言葉遊びがとても素敵だなといつも思っていて。“ザ・シティポップ”という感じがするし、すごく東京っぽいですよね。私が書くと重く湿り気を帯びすぎてしまうところを、土岐ちゃんは軽やかに描けるような気がして。特に「春の嵐」は、曲を聴いて「歌詞は絶対に土岐ちゃん!」と思いました。すごく土岐ちゃんらしい仕上がりで大満足でしたが、「昔週5くらいで遊んでいたときの私のことですよね、これは」っていう(笑)。大昔に誰かが撮ったビデオを見せられた感じで、ハッとしました(笑)。
一度でいいから飛ばさず聴いて
──「こたえ」のような正統派バラードももちろん収録されていますが、これまでのアルバムと比べるとバラードは少なめのように感じました。今回はあえてバラードを少なくしたんでしょうか?
いろんな方に「名曲バラードをお願いします」と言ったんですけど、バラードが全然来なかったんですよ。すべてのことには理由があると思うし、バラードばかりを歌う時期はこの先も来ると思うけど、今はそういう時期ではないのかなと。バラードでしか伝えられないこともあるけど、バラードでは伝えられないこともたくさんある。今回みたいに「自分を褒めてあげよう」というときは特にそうで。水のようにしなやかに、サラサラと流れるものが今の私には必要だったから、それもあってバラードが少ないのかもしれませんね。バラードをもっと聴きたかったとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれないので、そういう方には「ツアーに来るとたくさん聴けますよ」とお伝えしておきます(笑)。
──全15曲のうち、JUJUさんにとって特に思い入れのある曲は?
1曲目の「The Water - Prelude」と最後の「The Water」ですべての曲を挟むことによって、全部が思い入れのある曲になりました。でも特にと言われると、私の中のいろんなものを壊して新たに形作ってくれた15曲目の「The Water」かな。JUJUだけでなく“本名の自分”も救ってくれた曲になったので、この曲と出会えたことは21年目のご褒美のような気がしています。2番に「選んだことですら / うまくいかなくても」という歌詞がありますけど、自分で選んだのにうまくいかないことって実際たくさんあるじゃないですか。でも大人だし、そこは自分で折り合いを付けてあきらめたり我慢したりする。いいことだけじゃなくて、悲しいこともしんどいことも全部が自分を満たしているから、「ココにいる私が / 私は愛おしい」と思います。この曲を聴いて「ああ、そっか」と思う人が1人でも増えればうれしいですね。
──現時点でやりたかったことはすべて詰め込めましたか?
本当のことを言うと、私はアルバムを作るときに3枚組か4枚組にしたいと思うくらいなので、入れたい曲もやりたいことも、もっとたくさんあったんです。でも4枚組だと聴くのに疲れちゃうから(笑)、今回は皆さんの1時間をいただいて、このアルバムを聴いていただこうかなと。やりたかったことはこれから先の楽しい宿題に取っておいて、今後につなげていけたらと思います。そしてこのアルバムに興味を持っていただけたら、一度だけでいいので1曲目から最後まで飛ばさずに聴いてほしい。1人の人間にどんなことが起こっていくのか、最後はどうやって終わっていくのかを体験してほしいです。そこからはシャッフルで聴いてもいいので、一度だけでも1曲目から続けて聴いてほしいです。
とにかく1日でも長く
──初回生産限定盤には東京ドームでのライブ「スナックJUJU東京ドーム店」のBlu-rayが付属しています。改めて、東京ドームでのライブを振り返っていかがですか?
あれは私によく似たママがやったものなんですけど、すごい歓声で、ママはすごく人気があるなと思いました(笑)。そんなにママが好きですか、JUJUよりママが好きですかって、ちょっと複雑な気持ちだった(笑)。でも最後にJUJUもちょこっとだけ出たら、ちゃんと「待ってました!」というムードがあったので、すごく愛されているなと思いましたね。ライブでオリジナル曲を歌うのはそのときがひさしぶりだったんですけど、あの歓声を聞いて「早くオリジナルアルバムを作らないと」って本気で思ったんです。「オリジナル曲を皆さん待ってくださっているんだな」って。
──大規模なコンサートをやる一方で、ブルーノートでジャズライブをやったりするのもJUJUさんの魅力だと思います。今後もどちらもやっていきたいですか?
そうですね。アリーナはアリーナでしか、ホールはホールでしか、ブルーノートはブルーノートでしかできないことがあって、それを全部くまなくやらせていただけているのは本当にありがたいです。あと、やりたいのはクラブツアーとライブハウスツアー。青空スナックもやりたいですね(笑)。
──5月には全国ホールツアー「JUJU HALL TOUR 2025 The Water」が始まりますが、どんなツアーになると思いますか?
ひさしぶりのアルバムツアーだし、超コンセプチュアルなツアーになるんじゃないかな。毎回ツアーが始まる前に「今回も絶対いいツアーになる」と言っているんですけど、実際新しいツアーが一番楽しいツアーになっているので、きっと今回もそうなると思います。お近くにJUJUが来るという噂を耳にした際は、足を運んでいただけたらうれしいです。
──デビュー20周年を経て新たなチャプターに入りましたが、今後どんなJUJUを見せていきたいですか?
20年経って成人したので、また0歳に戻って新人として生きていきます(笑)。8年周期で生きていきたいという思いがあるんですけど、8年周期でベストアルバムを2回出して、今回が8枚目のオリジナルアルバムだから、これからは0に戻って本当にまっさらな気持ちでやっていきたいです。野望とかこれからチャレンジしたいこととか、だいそれたことはいつも考えていなくて。とにかく1日でも長くJUJUを続けて、皆さんと音楽でつながっていたい。JUJUが好きだと言ってくださる方が聴きたいものや、楽しいなと思っていただけるものを1つでも多く作っていけたらと思っていますので、これから先の20年もどうぞよろしくお願いします。
公演情報
JUJU HALL TOUR 2025「The Water」
- 2025年5月17日(土)神奈川県 相模女子大学グリーンホール
- 2025年5月21日(水)埼玉県 大宮ソニックシティ
- 2025年5月24日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2025年5月25日(日)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2025年5月31日(土)福岡県 福岡サンパレス
- 2025年6月1日(日)福岡県 福岡サンパレス
- 2025年6月5日(木)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
- 2025年6月6日(金)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
- 2025年6月11日(水)静岡県 静岡市清水文化会館
- 2025年6月14日(土)新潟県 新潟県民会館
- 2025年6月18日(水)福島県 けんしん郡山文化センター 大ホール
- 2025年6月21日(土)長野県 ホクト文化ホール
- 2025年6月25日(水)東京都 NHKホール
- 2025年6月26日(木)東京都 NHKホール
- 2025年6月29日(日)富山県 オーバード・ホール 大ホール
- 2025年7月5日(土)愛媛県 松山市民会館
- 2025年7月6日(日)香川県 レクザムホール
- 2025年7月9日(水)茨城県 水戸市民会館
- 2025年7月12日(土)石川県 本多の森 北電ホール
- 2025年7月16日(水)千葉県 森のホール21
- 2025年7月19日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2025年7月20日(日)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2025年7月24日(木)岡山県 倉敷市民会館
- 2025年7月26日(土)山口県 KDDI維新ホール
- 2025年7月27日(日)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2025年7月30日(水)群馬県 高崎芸術劇場
- 2025年8月2日(土)栃木県 宇都宮市文化会館
- 2025年8月22日(金)秋田県 あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
- 2025年8月23日(土)岩手県 トーサイクラシックホール岩手(岩手県民会館) 大ホール
- 2025年8月28日(木)大阪府 フェスティバルホール
- 2025年8月29日(金)大阪府 フェスティバルホール
- 2025年9月3日(水)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2025年9月4日(木)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2025年9月15日(月・祝)山梨県 YCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
- 2025年9月19日(金)鹿児島県 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
- 2025年9月21日(日)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
- 2025年9月23日(火・祝)大分県 iichikoグランシアタ
- 2025年9月26日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2025年9月27日(土)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2025年10月4日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2025年10月5日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2025年10月9日(木)東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 2025年10月10日(金)東京都 東京国際フォーラム ホールA
プロフィール
JUJU(ジュジュ)
2004年メジャーデビュー。2007年から毎年欠かすことなく全国規模のライブツアーを開催している。デビュー20周年の2024年には「スナックJUJU 東京ドーム店」や全国アリーナツアーも開催した。「奇跡を望むなら...」「やさしさで溢れるように」など数多くのヒット曲をリリースし、邦楽カバーアルバム「Request」シリーズやジャズアルバム「DELICIOUS」シリーズなど、歌で“物語”を伝える歌手として、ジャンル・洋邦・世代を超えて名曲を歌い継ぐライフワークも注目されている。2025年3月に、7年ぶり8枚目のオリジナルアルバム「The Water」をリリース。5月からは全国ホールツアー「JUJU HALL TOUR 2025 The Water」の開催も決定している。