「音楽が好きだ」っていう気持ちだけ

──だいぶ混乱してきましたが、皆さんが感じているその違和感はこれまでの作品よりもグッと深いものができた故の戸惑いなのでは？

ゾン子　うーん……。

──なんだか煮え切らないですね（笑）。ゾンビーズ子さんの理想の音楽を満足いく形で作ることができたのに、当の本人がよくわからないっていう。これほどの作品ができたら「このよさがわかんないやつはおかしい」ぐらいになってもいいと思いますけど。

ユリナ　今まではそうだったよね。

ゾン子　そうですそうです。でもこのアルバムのことは自分ではよくわかんなくて。

ユリナ　いいアルバムなんだけどなんでいいのかを説明できない感じ？

──そこも不思議なんですよね。サウンドプロデューサーは自分の作品に込めた意図をある程度説明できるものだと思うんですが。

ゾン子　そう、みんな説明するの得意ですもんね。大瀧詠一さんとか。

──でもゾンビーズ子さんはそれができない。

ゾン子　客観視できないっていうか、もうよくわかんない（笑）。

──確かに今日のインタビューでも、すごい作品ができたっていう自信は伝わってきますけど、具体的な解説はないですもんね。かといってゾンビーズ子さん以外の3人も説明してくれないし（笑）。

ゾン子　うん、このアルバムに詰め込んだのは、抽象的で申し訳ないんですけど「音楽が好きだ」っていうことだけですね。「なめんな！ 私は音楽が好きだ！」っていうその気持ちだけ。

ヨーコ　あははは（笑）。ここまで話して結論がそれってヤバすぎる（笑）。

ゾン子　でもそういう純粋な気持ちだけだからね。その衝動をこのバンドで、ロックンロールで表現してるだけ。

──じゃあもしゾンビーズ子さんがソロアルバムを作ってもこの作品にはならない？

ゾン子　ならないです。

ユリナ　そっか、やっぱりバンドだったんだね。

消費されずに残る音楽

ゾン子　この間、1stアルバム制作のときにお世話になったdisk union（MY BEST! RECORDS）の金野さんと「このアルバムのレビュー読みたいんですよ」とかいう話をしてたら「いや、これはレコード5000枚ぐらい持ってる人じゃないと書けないでしょ」って言ってくれて。あー、そういうアルバムなのかなって。

──パッと聴いても楽しめるけど、その奥には過去の音楽の歴史や文脈が詰め込まれてるということですよね。

ゾン子　だから本当に「音楽が好きだ！」って言うためのアルバムなんじゃないかな。歌詞だってほとんどそのことについてしか歌ってないし。

ユリナ　うん、私もそう思う。女の子であることとか、ポップな感じとか、キラーチューンが！とか、自分たちが大切にしてたそういうものは、もうたぶんこの先どうでもよくなるなって思った。このアルバムを聴いてそう思いました。

──もっとシンプルにいい音楽をやっていくということ？

ユリナ　うん、タイトルからして「GOLD FUTURE BASIC,」ですからね。

──「輝く未来につながる基盤」であると。

ユリナ　本当にこれが私たちの「GOLD FUTURE BASIC,」になるんだと思います。何年後かわからないけど。なろう、なろうよ。ふふふ（笑）。

ゾン子　ねえ、このアルバム、売れると思う？

ユリナ　あはは（笑）。私は売れないと思うけどさ。

──売れるとか売れないとか、そういうことじゃない気がしますけどね。

ユリナ　うん、売れるかどうかはわかんないけど残ると思う、絶対。

ゾン子　たぶんすごい名盤だとは思うんですよね。消費されずに残っていく音楽になってるはず。

──そう思います。

ゾン子　どういうふうに受け止められるのかな。無視されるのかな（笑）。これからどうなっていくのか、自分でもすごく楽しみです。