面白い4人が集まった
──「作り雨」は優しいメロディがグッとくる曲ですね。
この曲は欣也くんへの宛書みたいな気持ちがあって。欣也くんって、ライブでもけっこう歌いたがるんですよ。STANCE PUNKSではサビをユニゾンで歌ってるんですけど、ゼリ→ではそういう曲がなくて。だから、欣也くんにユニゾンで歌ってもらうために作った曲です(笑)。
──サポートじゃなくて、バンドメンバーへの愛ですよね、それ(笑)。
はははは(笑)。一緒にやっていると、気持ち的にはそうなっていきますよね。
──最初はハリボテかもしれなかったけど、音と気持ちを合わせていったらちゃんとバンドになっているという。
なかなか納得してもらえないと思いますけどね、その理屈は。でも、俺の中では、すべてがハリボテだとステージには立てないから。
──なるほど。ミュージックビデオも公開された「STAY DREAM」は、再始動後、最初に世に出る曲がポエトリーラップなのはホントに驚きました。
自分の半生をつづる曲って、ラッパーはけっこうやるじゃないですか。もともとこういう曲をやってみたいと考えていたんです。わりとLAID BACK OCEANの感じも取り入れつつ作った曲で、ゼリ→が動き出して最初の作品がこういった曲なのがいいなと思ったんです。
──これまでのゼリ→の歴史を噛みしめる機会にもなったと思いますが、楽しいことばかりではなかったと思います。思い出すのがつらい場面はありましたか?
いや、それは全然なくて。申し訳ないぐらい、そんなことはなかった(笑)。なんだろう……20年も前のことなんて、どこか他人事みたいな気持ちもあるし。ただ間違いなく俺の人生の中で起こった出来事だから、自分自身のことを語る恥ずかしさはありますよ。
──ゼリ→の活動を振り返って、どういったバンドだったと思いますか?
まあ……なるべくして今の状況になっているんだとは思います。起きてほしくなかったこともたくさんあるし、起こしちゃいけないこともあったけど。それに、瞬間で終わってしまうようなバンドだったとしたら何をやってもいいんだろうけど、連続性を持って進む以上、社会とも接点を持って、反省すべきところはしっかり反省する。それが生きるということだし、それがバンドなんじゃないかと思うんです。ゼリ→はそうやってきたし、こうやって振り返っても、ゼリ→は面白い4人が集まった面白いバンドだったと思いますね。
「ゼリ→っていいバンドだな」と思ってほしい
──「STAY DREAM」には「なんにもないってこと それはなんでもありってこと」というフレーズがありますが、これは今の思いですか?
そうですね。よくも悪くも、俺の音楽人生は突き抜けた成功までいかないところにずっといるんですよ(笑)。
──そう思っているんですね。
突き抜けて売れちゃうと社会的な役割を担わないといけないし、売れなさすぎるとバンドをやめなければならない現実が忍び寄ってくる。この20年間、試行錯誤しながら、反骨精神を保ちながらやれるぐらいの売れ具合でこれたんです。ある観点から考えれば、それは幸せなことで。
──でも、その状況は望んでそうなっているわけじゃないですよね。
はい。それこそ、バンドを始める前に「あなたの20年間はこうなります」とわかっていたら、絶対にやってないですもん(笑)。でもこういう人生がどうなるかわからない面白さも、俺が歌い続ける理由の1つかもしれないですね。
──最初の話とも重なる部分がありますが、期間を決めてゼリ→を再始動させたわけですよね。終わりが決まっていることに対して、どう考えていますか?
それはゼリ→らしいなと考えてて。連続性を持ってロックバンドをやるには、それこそタイアップを取ったりする必要があったり。ずっと売れていくには、マスに対してどういう心理を与えなければならないかというマーケティングが入ってくる。でも、今回はそういったことがないんですよ。1年間で終わるから、何を言われようが、知ったこっちゃない。社会のルールから著しくはみ出さなければ何をやってもいいわけだし。
──アニバーサリーを締めくくる動きだけど、バンドを始めたてみたいな無邪気さがあるような気がします。
そうなんですよ。そこを含めてこの1年間、楽しんでもらえればと思っています。否定的なファンもいて当然だと思うから、「何をやってるんだ、コイツ?」と感じる人もたくさんいると思うし、嫌な気持ちになった人に対しては申し訳ないと言うしかないんだけど……もし、社会の雰囲気や空気、「こうでなければならない」といったことで目を閉じてるのであれば、ちょっとは見てもいいんじゃないかなとは思うし。これはゼリ→だけのことに関わらず。
──そして、年明けからはワンマンツアー「ゼリ→ 20th Anniversary Tour "+×(plus times)"」が始まります。
これは、20周年記念のツアーと捉えてもらえればと思っています。こうしないといけないという決まりもないし、いろんな時代から今の自分の気持ちに沿った曲を選びます。ひょっとしたら、新曲をやらない可能性もあり得る(笑)。
──ちなみに、ゼリ→の活動はいつ終わりを迎えるんですか?
来年の秋から冬にかけてぐらいをゴールにしようかと思っています。だからワンマンツアー後もいろいろと考えていて。各地を細かく回るツアーは絶対にやりたいし、もう1枚ぐらい何かリリースできたらいいなとか。この1年、自由にやっていきますよ。
──現時点の気持ちとして、どういう結末を迎えることができたらいいなと考えていますか?
なんだろう……でも、「ゼリ→っていいバンドだな」と思ってほしいかな。この前、ROTTENGRAFFTYの20周年を記念したツアー「20th Anniversary Beginning of the Story ~We are ROTTENGRAFFTY~」のファイナルを観に行ったんです。あの人たちの浮き沈みは見てきたけど、それが今やZepp DiverCity TOKYOをパンパンにしていて。本当にすげえなと思ったのと同時に「俺1人で20周年、なんだそれ」という気持ちもちょっと頭をよぎったけど……でも1人でやるからには本気で生き様を晒して、それと同時に「ゼリ→っていいバンドだったんだぜ」と言いたいなと思っていて。それが伝われば、それこそがこの20周年にかけたすべてなのかもしれないと今は思ってますね。
ライブ情報
- ゼリ→ 20th Anniversary Tour "+×(plus times)"
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- 2020年1月17日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2020年1月25日(土)大阪府 umeda TRAD
- 2020年2月2日(日)福岡県 BEAT STATION
- 2020年2月9日(日)東京都 新宿BLAZE