「PPAP」バズ後の嘘みたいな世界
古坂 ピコ太郎さんは「UEFAチャンピオンズリーグ」の決勝に呼ばれてたもんね。カカとかロベカル(ロベルト・カルロス)と一緒に歩いてて、一番サインを求められたのはピコ太郎さんだった(笑)。
ピコ太郎 スペイン代表のジェラール・ピケさんにお呼ばれしたこともありましたぴ。ほかにも、「グラミー賞」の授賞式に行ったらジェニファー・ロペスが「あ、知ってる」みたいな感じで視線を送ってくれて。そのあとに一般のトイレに入ったら、私のサイン列がトイレの列とは別にできちゃったり。
古坂 フランスに呼ばれたときも、3時間生放送のテレビ番組に出てたよね。内容はよくわからないけど、とりあえず出てみようと。行ったら、フランスのタモリさんみたいな人が司会で、タレントさんが10人くらい、観覧のお客さんが300人。イヤフォンから通訳さんの声が聞こえるようになってたけど、10人が一斉に話しかけてくるから通訳さんがあきらめて無言になっちゃったという(笑)。もうピコ太郎さんがイヤフォンを外してずっと嘘フランス語をしゃべって、あちらも嘘日本語で返すというのを続けて、300人が爆笑してたよね。長いこと芸人やってる僕がアドバイスしてますから、これくらいピコ太郎さんは楽勝です(笑)。最後に「PPAP」が流れたんで踊って帰ったら、映画「ロッキー」のラストくらい人に囲まれて。次の日は空港の税関で「昨日テレビ観たぞ」と言われましたね(笑)。
ピコ太郎 トランプさんが来日したときの晩餐会にも行きましたけど、ああいう場では参加者は席を立っちゃダメらしいんですピ。でも、私が外務省の人に「一緒に写真を撮ってもいいですか?」とお願いしたら、トランプさんから手招きされて。そしたら、ほかの皆さんも「え、いいの?」という感じでゾロゾロついてきましたピ。
古坂 本当に、こんなことになるなんて誰も想像できないよ。もし想像できていたら、そっちのほうがヤバいと思う。
ピコ太郎 今の仕事がなくなっても、この頃の出来事を講演会で話せば一生食べていけると思いますピ。
古坂 でも、海外でこれだけ歓迎されても、日本ではニュースにもなってなかったね(笑)。
──これだけヒットしてしまうと、「一発屋」と言われたりもしたのでは?
ピコ太郎 日本で「一発屋」と言われても私はなんともなかったですピ。海外では「ワンヒットワンダラー」と呼ばれて、すごく尊敬されるんですピ。多言語、多国籍の社会では、そもそも一発当てることが奇跡なんです。そこでリスペクトされた経験は大きかったですピコ。
海外からの印税事情
──「PPAP」は海外からの印税もすごかったんじゃないですか?
古坂 僕らは日本と海外で分けて考えてしまいがちだけど、日本も海外の一部だから。人口比で言うと、海外の80分の1が日本なんだよね。だから、例えば日本のテレビで「PPAP」が使われると、それなりの著作権使用料が振り込まれるけど、海外だと同じような使われ方でも市場規模が大きいから「おっ!」と思うような額になったりする。著作権使用料からその国の物価がわかったりもするんですよ。「PPAP」から世界情勢が見えてくるという感じで、最近はインドの物価が高いね。(JASRACスタッフに向かって)JASRACは世界中で著作権を管理できているんですよね?
JASRACスタッフ 世界中の著作権管理団体とお互いのレパートリーを管理し合っているため、ピコ太郎さんや古坂さんの曲が海外で使われると、その地域の著作権管理団体が使用料を集めて、JASRACに送金してきます。JASRACは作品単位の明細を付けて、権利者の皆様に国内の使用料と合わせて分配しています。
古坂 なるほど。送られてくる使用明細を見ると「アメリカの映画で使われた」とか「ドバイのテレビ」、「オーストラリアのドラマ」とか、いろんな地域でいろんな媒体に使われてますもんね。一応ネットで調べてみると、本当に使われているし。僕がJASRAC会員になったのは20年以上前なんですよ。NO BOTTOM!の曲をiTunes Storeで販売するにあたり、JASRACに登録しておこうかなって。当時は「めんどくせえ」と思ってましたけど、バズったときのために入っておかなくちゃいけないですよね。
ピコ太郎 せっかくバズったのにお金にならなかったら悲しいですぴ。
古坂 著作権は投資とかお得なポイントとは違うと思うんです。権利ですから、もらって当然のものなんですよね。マクドナルドでバイトして「僕は好きでハンバーガーを作ってるので給料いりません」という人はいないじゃないですか。お笑いの世界に権利はないんです。そういう意味では、音楽ビジネスがエンタテインメントの中では一番ちゃんとしているんじゃないかと思いますよ。そもそも、こんなに広範囲にわたって著作権の使用状況をチェックするシステムを構築するのは難しい。個人でもバイトを大量に雇ったらできるのかもしれないけど。あと、損得関係なく、作品が完成したからにはJASRACのハンコを押したほうがいいと思う。周りからも「JASRACに登録した曲」として扱われますからね。婚姻届のようなものというか、登録することに意義がある。今も書類を書いて登録するんですか?
JASRACスタッフ 書類も受け付けていますが、今は信託契約も作品の届け出もオンラインでできるようになっています。
古坂 すごく簡単ですね。やっぱりみんな登録したほうがいい。
ピコ太郎 JASRACの回し者みたいになってますピ。
「PPAP」10周年に向けて
古坂 「PPAP」10周年記念プロジェクトとして「Tottemo Release 80.8」(トッテモ・リリース・ハチジュッテンハチ)を去年の8月から始めて毎月楽曲をリリースしてるけど、ヘトヘトになってるよね……。
ピコ太郎 思いついたものは全部曲にして発表しちゃうから、鼻歌も歌えないですピ。
古坂 隔月リリースにすればよかった。「PPAP」は短い曲で振付があってバズれば儲かるという、今の音楽ビジネスのファーストワンになってしまったという大罪があると思うんですよね。実際はまったく違うんだけど、コンビニエンスなものでもバズれば勝ちという風潮を生んでしまったというか。45秒の曲で10年やってきたから、今度は1年かけて80.8曲やろうと。
ピコ太郎 やっぱり古坂さんは天邪鬼ですぴ。「ファーストインプレッション・イズ・ゴッド」が私たちの憲法なので、面白いと思ったものをどんどん形にしてますピ。お刺身も手を加えないほうがおいしいですから。
古坂 今はAIがあるから、すごいスピードで作っていけるもんね。生成AIについてはいろいろな意見があるけど、ゼロからAIに作曲させるのも面白いと思うんです。でも、それはあくまでリスナー的な感性。僕は好きで音楽を作ってるから、それをAIにやらせるなんてもったいない。AIは主役じゃなくて下請けだから、頭に浮かんだアイデアをブラッシュアップする道具としてはすごく便利です。今は47都道府県全部の曲を作ってるので、AIがないと間に合わない(笑)。
ピコ太郎 「Tottemo Release 80.8」はミュージシャンとか音楽関係の人たちがすごくリスペクトしてくれますピコ。
古坂 命を削ってやってるからね(笑)。これだけやってまったくバズらないのもいいかなと。
──貴重なお話をありがとうございました。最後に、お二人から若いクリエイターの方へメッセージをお願いします。
ピコ太郎 私がこうやって売れたんだから、若いクリエイターさんたちは売れないわけないんですピ。この見た目であんな曲やってて。まあ、私は「PPAP」をラブソングだと思ってますけど。皆さんのほうがイケメンだし、歌もお上手ですから。自信を持って活動してほしいですピ。
古坂 作品に対して文句を言われるのを怖がることだけはやめたほうがいいと思いますね。文句は栄養分です。100の文句があるということは、賛辞は1000あるんです。やりたくなったら迷わず作って、完成させる。JASRACに登録して、公開する。そこまでが音楽ですね。8割できている曲が100あっても、それはまだ0曲ですから。どんどん完成させて、たくさん聴かせてください。
ピコ太郎 私はJASRACの話が全然できなかったですけど、大丈夫ですか? JASRACの事務所に行ったら著作権使用料を現金でもらえますピ?
JASRACスタッフ 送金のみとなっております。
プロフィール
ピコ太郎(ピコタロウ)
千葉県出身のシンガーソングライター。2016年にYouTubeにアップした「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」の動画がジャスティン・ビーバーのX(当時はTwitter)をはじめ、CNNやBBCなどのメディアに取り上げられ、世界中で大ブレイクを起こす。日本人としては26年ぶりにアメリカのBillboard Hot100に入り、「Billboard Hot100にチャートインした最も短い曲」としてギネス世界記録にも認定されている。また、2017年には、トランプ大統領来日時の晩餐会に出席を果たし、外務省からの任命でSDGs推進大使として活躍した経験を持つ。2025年8月、「PPAP」誕生10周年に向けたプロジェクト「Tottemo Release 80.8」(トッテモ・リリース・ハチジュッテンハチ)を始動。2026年7月まで毎月楽曲を配信しており、その総リリース曲は80.8曲となる予定。
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古坂大魔王(コサカダイマオウ)
1973年7月17日生まれ、青森県出身。1992年お笑い芸人「底ぬけAIR-LINE」としてデビュー。ピコ太郎プロデューサー。文部科学省・CCC(Cross Cultural Communication)大使、UNEP(国連環境計画)サステナビリティアクションアドバイザー。現在は、バラエティ番組をはじめ、コメンテーターとして情報番組への出演、世界のトップランナーと音楽、エンタテインメント等についてトークセッションを行うなど、幅広い分野で活躍中。
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