いいかげんだった私が“師匠”と呼ばれるのは、ちょっとした焦りも感じます（笑）

──アルバムの内容に関して、ほかに何か注目してほしいポイントはありますか？

「LOVE or LIPS」はこのアルバムの中で唯一振り付けがある歌なんです。その話、今まで受けたインタビューでも全然してなかったんですよ。あとになってスタッフさんから「あのー……振り付けのことしゃべらなくても大丈夫ですか？」と言われて「いやいや、気付いてたら教えてよ！」って（笑）。

──スタッフさんが教えてくれなかったら振り付けの話は一度もしないままだったかもしれませんね（笑）。

最初の頃は、私がどういうスタイルで仕事をするのかをスタッフさんがわからないから、何か口をはさんで私が機嫌を損ねたらと気にしてたみたいです（笑）。だけど私は抜け目がいっぱいある人だから言ってほしいんですよ。今は関係性ができているので、例えばこういうインタビューのときも私1人だけじゃなくて周りのスタッフさんたちとコミュニケーションを取りながら進めています。

──スタッフさんから見て、伊藤さんってどういう人ですか？

マネージャー　1つの目標に対して、どうすればいいのかを全力で考えてくださるので、付いて行きたくなるような存在です。でも真面目なだけでなくかわいらしさもあるので、その愛嬌が周りに影響を及ぼして、気付いたらみんなハッピーになってます。まっすぐなところと、フワッとしたところを兼ね備えている素敵な女性です。

「付いて行きたくなる」といえば……私の話に共感してくれたあるインタビュアーの方が、取材後に「これからは“師匠”と呼ばせてください！」と言ってくれて。私は話すのが全然上手じゃなかったので、そう言われたのが衝撃的だったんです。20代の頃はいいかげんだった私が“師匠”と呼ばれるようになったのかと思うと、うれしくもありながら、「歳を取ったんだな」っていうちょっとした焦りも感じましたね（笑）。

──それはお話しされる言葉に説得力があるからだと思いますよ。

ですかね？ 本当に20代の頃は何もできなかったんですよ。だけど「ちょっと抜けてるね？」と言われるほうが私のキャラクターに合っていて（笑）、私も成長しようと思わなかったんでしょうね。でも1人でもそのキャラずっとをやっていたらマズイと思うので、ちゃんとしようと意識するようになりました。

「常に母ちゃんは笑ってるな」って思われたい

──「New Beginnings」のタイトルになぞらえて、これから始まる30代はどう過ごしたいかを教えてください。

肩の力を抜いて、落ち着いて過ごしたいですね。「前に前に」と焦りながら20代をすごい速さで駆け抜けてきたけど、30代は今まで培ってきた伊藤千晃を落ち着いて明確に表していける気がしてるんですよ。だから「前に前に」というよりは、自分のペースで伝えられるものを確実にみんなに伝えられる自分でありたいなと思ってます。

──最後に、育児についてもお聞きしますね。「子供は親の背中を見て育つ」と言いますけど、伊藤さんが母親として子供に見せたい背中ってありますか？

「常に母ちゃんは笑ってるな」って思われたいですね。生きていると楽しいことばかりじゃなくて、つらいこともたくさんあるじゃないですか。笑いって1つの救いだと思うんですよ。何かつらい壁に直面したときも、クスッと笑える出来事があれば気持ちが楽になるんじゃないかなと思うので、その方法を自分で身に付けてほしい。どん底に落ちたときに自分に何もなかったとしても笑ってほしい。そういう強さを持ってもらいたいから、「気付けばウチの母ちゃんも、あのときはつらかったはずなのにすごい笑ってたな」って思われるような背中を見せたいですね。ヘラヘラしてるんじゃなくて、「大丈夫、なんとかなる」っていう笑い。そういう強い母親になりたいです。