石崎ひゅーい|過去最大級の壁を乗り越えてたどり着いた地平

この状況での有観客ライブの難しさ

──11月には「関ジャム 完全燃SHOW」に出演して、「さよならエレジー」を関ジャニ∞の安田章大さんと披露しました。

テレビで歌うのがひさしぶりだったし、人と何かをするっていうこと自体があまりできていなかったので、安田さんとのセッションは刺激になりましたね。安田さん、ギターがものすごくうまくて。あとコーラスも主線を歌ったりハモったりと難しい作りにアレンジしたんですよ。すごい今考えればだいぶ難解な構成にしていたんですけど、よくやったなって。

──なるほど。

あと安田さんが「LIFE IS」という写真集を出しているんですけど、それが闘病中の孤独と戦う姿も収められていてすごくきれいなんです。アイドルでそこまで見せる人ってあまり思い浮かばないし、収録の合間にそんな話をしたりもしたのでグッとくるものがありましたね(参照:脳腫瘍から生還した関ジャニ∞安田章大の“生と死の輪廻”描く写真集「共有し共鳴してこそ意味がある」)。

石崎ひゅーい

──その後12月に約1年ぶりにお客さんを入れてのライブを開催しました。ひさしぶりの有観客でのライブはどういう心境でした?(参照:石崎ひゅーい、クリスマスの渋谷で1年ぶり有観客ワンマン開催

ライブしなくちゃとずっと思っていたのでやれてよかったんですけど、約1年ぶりだし状況が状況だけにお客さんもどうやって楽しんだらいいんだろうというムードだったんですよね。まあそうだよなって感じですけど。

──特に年末は新型コロナウイルスの感染者数が増加していて、ライブに行くことに対して世間の否定的な目がより強くなっていましたしね。

そうそう。それもあるし、でもそういうところから解放させてあげたい気持ちもあって、不思議な感情でライブをせざるを得なくて。だから正直反省点が多いライブでした。MCをもうちょっとやればよかったかなとか、僕がこういうふうに言ってあげたほうがみんなもっと安心したかなとか。思いっきりやろうとは思っていたけど、この状況だからこその難しさみたいなものはやっぱりありましたね。でもそれが悪いということではなくて、いつかいい思い出になるとは思うんですけど、僕としては課題が見えたライブでした。

──年が明けて2月に東名阪ツアーをやったときはどんな感じだったんですか?

今言った僕の考えがありつつ、あとは普通にライブをしていないことのブランク。人前でずっとやっていなかったので、僕もリハビリしなくちゃいけないみたいな(笑)。僕もお客さんもどっちもケガしている状況が12月だったと思うんですけど、それを拭わなくちゃいけないと思って、2月のライブではしっかりパフォーマンスを見せることを意識しました。そうするとお客さんの心も少し開いてきたように見えたので、間違ってなかったなと思いますね。

刹那的で破壊的だった8年前

──2月には菅田さんが誕生日に行ったオンラインライブにゲスト出演しましたよね(参照:菅田将暉、石崎ひゅーいとファンと迎えた誕生日)。

ありましたね! いろいろやってますね(笑)。

──盛りだくさんです(笑)。この1年で言うと「糸」のカバーがあって「虹」があり、そしてこのオンラインライブがあって、菅田さんとお仕事で関わる機会もすごく多かったですよね。

もうユニットなのかな(笑)。ホントありがたいなって思います。シンガーソングライターって孤独なんですよ。僕の場合、アレンジャーのトオミヨウさんとか助けてくれる人はいっぱいいるんですけど、何かを始めるときはいつも、初めは1人でやらなくちゃいけなくて。そういった意味でも目標みたいなものに向かって並走できる存在がいるのは本当に貴重でありがたいですね。

──今の石崎さんにとって、菅田さんは友達以上の存在になっている?

間違いないですね。でも曲のコラボにしろライブにしろ、前々から一緒にやろうって決めてたわけではないんですよ。何かを作ろう、ライブをやろうってなったときに、たまたまお互いがいいタイミングで求め合うことが多くて。そういうバランスもすごくいいなって思ってます。

石崎ひゅーい

──2月に「ミュージックステーション」に約8年ぶりに出演したというトピックもあります。

トピックだらけじゃないですか(笑)。「Mステ」は震えましたね。8年前とは自分自身の考え方が変わっているし、改めて8年前の俺よくやったな……って思いますね。ぐしゃぐしゃにした思い出があるんで。

──前回は「夜間飛行」のパフォーマンスで大暴れして、SNSで「放送事故だ」って話題になりましたよね。

はい(笑)。刹那的で破壊的だったからなあ……。そういう自分も愛おしいんですけど、8年経って成長した今の自分の最高潮を見せる意気込みでやりました。でもホントありがたいです、あんな緊張感の中で歌えることはそうそうないので。

アヤメは夜が朝に生まれ変わろうとしている色

──ではようやく新曲「アヤメ」の話に移りたいと思います。今作は「警視庁・捜査一課長season 5」の主題歌ということで、どういうイメージで作っていったんでしょう?

「虹」とか「Flowers」が出たあと、年末くらいから曲作りモードになっていて、曲をいっぱい書き貯めていたんです。タイアップとか関係なく自分で目標を掲げて、今月中に5曲、6曲という感じで作っていて。今までそういうやり方をしたことなくて、とにかく曲を作るモチベーションが高まっていた中で今回のお話をいただきました。だからいいタイミングでお話をもらったなって思います。それでバーッと何曲か書いてスタッフに聴かせて絞っていきました。

──先ほど「Flowers」のときに「作品に負けない自分の中のキーワードが必要」という話がありましたが、「アヤメ」に関してもあったんですか?

石崎ひゅーい「アヤメ」配信ジャケット

ありました。曲作りのモードになっているといっても頭を抱えながら制作しているので、気付くと朝5時6時になっていることが多くて。この「アヤメ」作っているときも朝方になっていて、ふと窓の外を見たら本当にこのジャケットのような空の色だったんですよ。東京に住んでから見たことないような空の色で、これは何色なんだろうと思って調べたらアヤメって出てきて、「これだ!」って思って膨らませていきました。

──その時間帯の空は筆舌に尽くしがたい美しい色をしていますよね。

僕は夜が朝に生まれ変わろうとしている色だと思ったんです。「警視庁・捜査一課長」には謎が解決されて登場人物の心が開放されるシーンが後半にあるんですけど、そういうシーンとリンクすると思ったし、今のこの時代を表現できるとも思って。まだ朝にはなりきれていないけど、みんな気にせずライブに来てもらえるような社会になってほしいし、そういった願いを歌にしました。