「IDOLY PRIDE」菅野真衣×橘美來×佐々木奈緒インタビュー|10人のアイドルが歌い継ぐ物語 (2/3)

実は内向的なサニピと、前向きな月スト

 これは真衣ちゃんが前に言っていたことなんですけど、サニピは太陽のグループでありながら、メンバー5人の背景はけっこう重たいという。

菅野 実はもともと内向的だった子が多くて。さっき話に出た千紗ちゃんはお姉ちゃんの影に隠れがちだったし、兵藤雫ちゃんも学校で友達ができなくて「なんか兵藤、アイドルになりたいらしいよ」と陰口を言われていたような子で。なおすが演じる遙子さんも……。

佐々木 闇が深いよね。アイドルとしてあまりにも売れないから、お見合いの話が来たり。

菅野 あと、一ノ瀬怜ちゃんもダンスの才能があるのに家族からは反対されていたし、さくらは心臓病を患っていて、琴乃ちゃんの姉の(長瀬)麻奈さんから心臓移植を受けなければ助からなかったかもしれない。そんな5人の暗い過去が「エブサニ」のミュージックビデオで描かれているんですけど、彼女たちが今はアイドルになってみんなを照らす側にいるという、成長物語!

──月ストのキャラクターには、サニピのような共通点はあるんですか?

菅野 5人ともめっちゃ前向きじゃない?

 琴乃以外は、みんな前向き……。

菅野佐々木 (笑)。

 そういう意味では、月ストのキャラクターと、それを演じる3期生のメンバーには共通点があるかもしれない。千紗のお姉ちゃんの白石沙季を演じている(宮沢)小春は、エクセルで情報をまとめてくれたりして。

佐々木 ダンスレッスンのとき、いつもこうやってるからね(タブレットをいじる仕種)。

 急遽、ハモが増えたりすることがたまにあるんですけど、そういうときは小春が譜面を作ってLINEで共有してくれるんです。すず役の奏多は、自分をアピールする力が強いんですよ。それは裏でたくさん努力しているからこそできることなんですけど。

佐々木 ライブのときとかね。

 早坂芽衣は月ストの太陽みたいなキャラクターだけど、彼女を演じる(日向)もかも3期生の太陽だと思っていて。本当に明るくて、みんなを元気にしてくれる。一方で、がんばり屋さんなところもあるから落ち込むこともあるけれど、そういうときはみんなで支える。いつも3期生の中心になってくれる人です。伊吹渚役の(夏目)ここなは……ここな自身がいろんな面を持っているんですけど、自分からいっぱいしゃべるというよりはみんなを見守ってくれるタイプで、何か変化があったら気付いてくれることが多いんですよ。あと、ここなはお菓子作りも好きだったり。

橘美來

橘美來

佐々木 渚も家事が得意だし、お茶会もやってたね。

菅野 やっぱり同じ事務所だと、お互いのことがよく見えるんだろうね。

 みんなで支え合って、一緒にがんばっていこうと……。

菅野 月ストのキャラクターは5人とも凛としてカッコいいのに、誰かがくじけそうになったらお互いに支え合う優しさが見えるんですよ。私はそこがすごく好きなんですけど、現実の3期生もそうなんだなって。

 私は支えてもらうことのほうが多いというか、本当にみんな支えてくれて。私ももっと誰かを支えられるようにならなきゃなって思います。

ぶつかり合って、研磨される月ストとサニピ

──ここからはニューシングルについて伺います。表題曲「Gemstones」は星見プロダクションの10人で歌う曲であり、ストーリー上では長瀬麻奈が生前に声優として出演したアニメ映画「パラレルトラベル」の主題歌だった曲でもあるんですよね。

 そうです。ゲームのストーリーでは「NEXT VENUSグランプリ」(新人アイドルの頂点を決める大会)の歴代優勝者が集まる祭典で、月ストとサニピの10人でこの曲を歌うことになるんですけど、そこで琴乃がちょっとこじらせて……。

菅野 さっきちょっと話に出た「I-UNITY」でサニピが勝って、世の中的にはサニピのほうが月ストよりも前に出ちゃったんだよね。

 勢いに乗るサニピと落ち目の月ストみたいな構図になっていて。琴乃がそれを気にしていたら、さくらともギクシャクしてしまうという。

菅野 そこでさくらは、遙子さんに相談するんだよね。

佐々木 遙子もかつて、自分はアイドルとしてまったく芽が出ないのに、同時期にデビューした麻奈ちゃんは人気アイドルになって、どんどん差が開いていくというのを経験しているから。そんな遙子がさくらにアドバイスしたおかげで、琴乃ちゃんにも復活の兆しが見えて。

 普通に話せるようにはなったというか、前を向こうとしているところなので、いつか笑顔になってくれたらいいんですけど。

菅野 そこでこの「Gemstones」がね、すっごい前向きな曲だから。きっと、これを歌って乗り越えられる。

菅野真衣

菅野真衣

佐々木 ね。2番のサビの「いつか 交差する道の途中 ぶつかり合う そんな時さえ 輝きはまた 増してゆくよ」という歌詞とか、ぶつかり合う月ストとサニピみたいな。

菅野 ぶつかり合って、研磨されましょう。「Gemstones」は原石という意味ですから。

佐々木 ああ! へええ。

菅野 ちょっと!? 歌詞の1行目から「名前をまだ持たない 小さな原石」って言ってるじゃない。

──星見プロとしては、「Gemstones」は初めてのバラードになりますね。

菅野 確かに。「The Sun, Moon and Stars」もしっとりした曲でしたけど、「Gemstones」はテンポもずっと遅いですし、初めて聴いたとき「おお、まったりしてる!」って。

佐々木 新鮮だよね。

菅野 実は「Gemstones」はデモと完成版でアレンジが全然違っていて。レッスン中にこの曲を歌う機会があったんですけど、完成版のイントロが流れてきて、みんな違う曲だと思ったという。

佐々木 私たちはデモしか聴いていなかったからね。みんなポカーンとしてた。

菅野 歌い出しが私からだったんですけど、「なんの曲だろ?」と思ってそのまま聴いていたら、スタッフさんに「あれ? 菅野さん?」と言われて(笑)。

──「Gemstones」の作詞はPA-NONさん、作曲はさかいゆうさん、編曲は谷口尚久さんですね。PA-NONさんとさかいさんは長瀬麻奈の「song for you」を手がけたお二人でもあります。ちなみに、月ストやサニピと違い、星見プロの楽曲は作家が固定されていないんですよね。

菅野 そうなんです。利根川さんと北川さんに加え、清竜人さん、沖井礼二さん、大石昌良さん、Q-MHzさんといったそうそうたる作家の皆さんが曲を書いてくださっていて。「Gemstones」はデモの時点ですごく温かい、聴いていて安心するようなメロディと歌詞だったのに、アレンジで神秘的な雰囲気も加わって、よりこの楽曲が好きになりました。

麻奈ちゃんが大切にしていた楽曲を、星見プロの10人で引き継いでいる

 「Gemstones」は、すごく背中を押される曲だなって思います。特に好きなのが「どれだけ歪な形だって 胸を張って 進もう」という歌詞で。今の自分はきれいな形をしていないし、まだまだ成長途中なところだらけだけど、自信を持っていい。私はしょっちゅう「自信を持って」と言われるんです。

佐々木 じゃあ、刺さりまくりだ。

 それ以外にもこの曲には勇気をくれるワードがちりばめられているので、聴いてくださる皆さんにも何かしら刺さるものがあると思いますし、私は落ち込んだときはこの曲を聴いています。

佐々木 大丈夫?

菅野 なおすが照らしてくれるよ。美來ちゃんが言ってくれた歌詞の前、2番Aメロの「完璧じゃない だから なんにでもなれる」というパートは、美來ちゃんとなおすと私の3人で歌っているんですよ。今までこの3人で歌ったパートはなかったので、そういう意味でもうれしいし、私はここの歌詞が大好きで。原石だから、どんな可能性もある。私も完璧じゃないことに対するコンプレックスがあったりしたんですけど、むしろ完璧じゃないことが強みになる。

 あと「Gemstones」の振付には、麻奈ちゃんの「First Step」の振付とまったく同じ箇所があって。

菅野 そう! 2月のライブで「Gemstones」を初披露したときに気付いてくださったマネージャーさんもいるんですけど……どこだっけ?

佐々木 サビの「夢の足跡 追いかけて」のところ。

菅野 そこと「First Step」の「駆けてゆこう」の振付が一緒で。麻奈ちゃんが大切にしていた楽曲を、星見プロの10人で引き継いでいるというのが感じられるし、「振付師さん、すごいな!」と思いました。

 それで言うと、麻奈は「Gemstones」について「いつか後輩ができたら星見プロのみんなで歌いたい」と日記にしたためていて。一緒に歌うことは叶わなかったけれど、麻奈の後輩にあたる星見プロの10人でこの曲を歌うというのは、「IDOLY PRIDE」のストーリーにおいても重要な意味があると思います。

菅野 MVでは麻奈ちゃんと一緒なんだよね。麻奈ちゃんが出演した「パラレルトラベル」は姉妹の物語だったので、MVもその内容に沿ってるんです。しかも、星見プロの10人は麻奈ちゃんの“妹”として、幼少期の姿で登場していて、みんなめっちゃかわいいです!

2023年5月26日更新