「IDOLY PRIDE」菅野真衣×橘美來×佐々木奈緒インタビュー|10人のアイドルが歌い継ぐ物語

サイバーエージェントグループ、ミュージックレイン、ストレートエッジの3社によってアイドルプロジェクト「IDOLY PRIDE」がメディアミックス展開されている。プロジェクトは2019年に始動し、2021年にはテレビアニメ化。アニメでは芸能事務所・星見プロダクションにて結成された月のテンペストとサニーピースという2組のグループを軸に、アイドルたちの熱い物語が描かれた。現在はスマートフォン向けゲームでその後のストーリーが配信されている。

月のテンペストとサニーピースは、それぞれ異なる魅力を持っている。長瀬琴乃(CV:橘美來)、伊吹渚(CV:夏目ここな)、白石沙季(CV:宮沢小春)、成宮すず(CV:相川奏多)、早坂芽衣(CV:日向もか)からなる月のテンペストは、凛とした美しい楽曲を特徴としたグループ。一方、川咲さくら(CV:菅野真衣)、一ノ瀬怜(CV:結城萌子)、佐伯遙子(CV:佐々木奈緒)、白石千紗(CV:高尾奏音)、兵藤雫(CV:首藤志奈)からなるサニーピースは元気いっぱいの明るいパフォーマンスが印象的なグループだ。

その10人が所属する星見プロダクションのニューシングル「Gemstones」が5月24日にリリースされた。音楽ナタリーでは月のテンペストの長瀬琴乃役・橘美來、サニーピースの川咲さくら役・菅野真衣、佐伯遙子役・佐々木奈緒に本作について語り合ってもらった。

取材・文 / 須藤輝撮影 / 塚原孝顕

活動が増えていくにつれ、私たち自身の仲もグッと深まった

──「IDOLY PRIDE」は2019年にプロジェクトの始動が発表され、2021年にテレビアニメの放送とスマホゲームの配信が開始。今年2月には3枚目のアルバム「IDOLY PRIDE Collection Album [未来]」がリリースされました。皆さん、「アイプラ」とはそこそこ長い付き合いになりますが、その間に何か変わったことはありますか? 例えば「アイプラ」そのものに対する見方、歌や演技、あるいは人間関係など、なんでもいいのですが。

佐々木奈緒 人間関係でいうと……まず「IDOLY PRIDE」は星見プロダクションという事務所に所属する10人の新人アイドルを中心とした物語で、その10人は途中から5人ずつ、月のテンペストとサニーピースという2つのグループに分かれてデビューするんです。私と真衣ちゃんはサニピのキャラクターを演じているんですが、サニピとしての活動が増えていくにつれ、私たち自身の仲もグッと深まったというのはあります。

菅野真衣 確かに。レッスンだったり生放送だったり、サニピの5人で一緒にいる時間が増えてからお仕事以外でも……この間もなおす(佐々木)のおうちでタコパしました。

佐々木 めっちゃ部屋がタコ焼き臭くなった。

菅野 うそ? ごめん!

佐々木 いいのいいの。私も外から帰ってきて玄関のドアを開けて「あ、うちって臭かったんだ」って気付いた。

菅野 めっちゃフローラルな香りだったのに、申し訳ない。なおすは佐伯遙子さんという、頼りになるお姉さんキャラを演じているんですけど、現実の私たちもなおすにいつも頼りがち。

左から菅野真衣、橘美來、佐々木奈緒。

左から菅野真衣、橘美來、佐々木奈緒。

佐々木 最近はプライベートでもサニピのみんなで遊んだりしてるよね。月ストは?

橘美來 月ストは、そもそもキャストが5人とも事務所が同じということもあり、普段から会う機会も多くて。でも「IDOLY PRIDE」に関わってから、より深く話し合う機会が増えました。コンテンツについてはもちろん、お互いのことについても。

佐々木 月ストの面々は最初からお互いにけっこうビシバシ言い合ってたよね。「これはこうだよね?」「いや、こうじゃない?」みたいな感じで。

 え、本当?

佐々木 そうやって言い合えるぐらい、仲がいいのかなって。私たちは徐々に意見し合えるようになっていったから。

菅野 そうそう。「IDOLY PRIDE」では月ストとサニピのライバルとしてLizNoirとTRINITYAiLEというグループがいるんですけど、月ストのメンバーをミュージックレイン3期生の5人が演じているように、LizNoirはスフィアの皆さん(寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生)が、TRINITYAiLEはTrySailの皆さん(麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜)がそれぞれメンバーの担当声優をなさっていて。一方、私たちサニピは5人全員が違う事務所なので、会おうと思わなければ会えないメンバーなんですよ。

佐々木 現実の声優ユニットがそのまま劇中のグループを演じているというのも「アイプラ」の面白いところだよね。

菅野 しかもスフィアさんもTrySailさんもユニットとしての練度がめちゃくちゃ高いので、そんな皆さんの歌やダンスをレッスンとかで目の当たりにして、「私たちももっとがんばらなきゃ!」と会う頻度を意識的に増やしているところもあるんです。まあ、会ったら結局遊んじゃうんですけど(笑)。

──橘さんには、月のテンペストとして「LizNoirとTRINITYAiLEは叩き潰す」という気持ちは?

 ないですないです(笑)。もちろん先輩方の背中を見ながら、いつかそれを超えられるようなパフォーマンスをしたいとは思っていますけど。リズノワもトリエルも月ストとはグループの色が違うので、真似るとかそういうことではなくて、盗めるものは盗んで、もっと上を目指していこうという気持ちは3期生全員にありますね。

左から橘美來、長瀬琴乃。

左から橘美來、長瀬琴乃。

自分も成長しないと琴乃には追いつけない

──先ほど佐々木さんが「『アイプラ』の面白いところ」に触れてくださいましたが、演者から見た「アイプラ」の魅力って、ほかにどんなものがありますか?

 一番は、アイドルの心境を丁寧に描いているところ。

佐々木 アイドルの裏側みたいな、表からは見えない部分をね。

 特にゲームだと、細かくいろんなストーリーが展開されていて。そういうのを見て、私も自分が演じている長瀬琴乃の成長を見守りつつ「自分も成長しないと琴乃には追いつけない」と感じるんです。琴乃という人物を知れば知るほど私も惹かれていくし、琴乃以外にも個性あふれるアイドルがたくさんいるので、きっと皆さんそれぞれに推せるアイドルが見つかるんじゃないかな。

「IDOLY PRIDE」ティザービジュアル

「IDOLY PRIDE」ティザービジュアル

佐々木 現時点で星見プロには21人のアイドルがいるからね。その裏側的なことでいうと、サニーピースには白石千紗という引っ込み思案なキャラがいるんですけど、実は昔は明るい子だったというのが判明し……。

菅野 千紗ちゃんの過去編がゲームで公開されたんだよね。

佐々木 それを最近初めて知って。千紗役の高尾奏音ちゃんは知っていたみたいなんですけど、サニピの一員である私ですら知らない、個別のキャラの、しかも深いところまで掘り下げたストーリーがどんどん出てくる。

菅野 音楽面でも「アイプラ」にはいろんな作家さんが関わっていて、しかも私自身「え、この方が曲を書いてくださるの!?」と驚くような方ばかりなんです。なので楽曲きっかけでコンテンツに触れてくれたり、メディアミックス作品として、いろんな入口があるのも魅力の1つだと思います。

左から川咲さくら、菅野真衣。

左から川咲さくら、菅野真衣。

──「アイプラ」の音楽面に関して、僕が面白いと思ったのはグループごとに担当作家がいる点で。例えば月のテンペストは利根川貴之(Wicky.Recordings)さん、サニーピースは北川勝利(ROUND TABLE)さんといった具合に。

菅野 そうなんです!

──橘さんもグループごとに「色が違う」とおっしゃいましたが、楽曲もそれを際立たせています。

佐々木 サニピは本当に北川さんのカラーが出ていて。

菅野 私は北川さんの音楽を「アイプラ」に関わる前からアニメなどの作品を通して聴いていたので、初めてお会いしたときは感激しました。

佐々木 月ストの利根川さんは、初期はカッコいい系の曲を書かれていましたけど、最近は「クリスマスには君と」みたいなかわいい系とか……。

 明るい曲が増えた。

菅野 なおすは「いろんな曲を歌いたい」と普段から言っているよね。サニピは太陽のイメージだから元気な曲が多くて、もちろんそれも歌っていてすごく楽しいんですけど、私もたまには“夕日”っぽい曲があっても面白そうだと思っていて。スタッフさんに会うたび「夕日も太陽じゃないですか?」みたいなことを言っています。

 サニピのバラードも聴いてみたいかも。

佐々木 私も歌ってみたい!

月ストのダンスは努力の賜物なんだろうな

──今日は月ストから橘さん、サニピから菅野さんと佐々木さんがいらしていますが、お互いのグループについてどう思っていますか?

佐々木 なんでも言っていいんですか?

菅野 うちのなおすはなんでも言いますよ。

佐々木 月ストはね、まずダンスの完成度がめちゃくちゃ高い。「一糸乱れずって、こういうことか!」と思いますね。なおかつサニピとは歌割りが全然違っていて、サニピは一小節ごとに3人→2人→3人→4人みたいな感じなんですけど……。

菅野 サニピは組み合わせがすごい細かいんだよね。

佐々木 月ストは1人→1人→1人→5人とかなんですよ。だから、1人が歌っているときは4人がバックダンサーに徹して、5人で歌うときは全員が完璧にそろった振りをバーン!とキメてくる。例えば「恋と花火」で、パララララーって1人ずつ順番にターンしていく振りとか、本当にきれい。

菅野 月ストのダンスは本当に努力の賜物なんだろうなって。めちゃくちゃレッスンをがんばってるのが想像できる。

 ありがとうございます。

佐々木 急にかしこまった(笑)。

 日々、成宮すず役の(相川)奏多に鍛えられています。月ストには振付の先生とは別に、奏多というダンスリーダーがいて、彼女が「今のとこ、ちょっと手が違ったよ」「足の位置ズレてる」とか、的確に指導してくれるんですよ。私も含めて、みんなわからないことがあったら奏多に聞いています。

──月ストって、ストイックなイメージがありますよね。

 私としては琴乃がストイックすぎて、いつも「追いつけない」と思ってしまって。

佐々木 いやいや、うちらからしたらねえ。

菅野 筋トレとかジョギングを当たり前にしているというのを聞いて、びっくりした。

佐々木 本当にすごい。さあ、これだけ褒めたあと、美來ちゃんがサニピについてどんなことを言ってくれるのか、期待しちゃうな。

左から佐々木奈緒、佐伯遙子。

左から佐々木奈緒、佐伯遙子。

サニピは1人ひとりの個性が爆発している

 サニピは、今年の2月のライブ(「LAWSON presents IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2023 “未来”」)でお客さんの声出しが解禁されて、コール&レスポンスができるようになってからより魅力が増したというか、真の実力を発揮し始めたと思っていて。ステージの袖からサニピちゃんのコールをしているマネージャー(「IDOLY PRIDE」ファンの呼称)の皆さんを眺めながら「私も『サニピ! サニピ!』って言いたい!」と思っていました。

菅野 サニピには皆さんのコールありきな楽曲が多いので、私たちもこの間のライブでやっと完成形を披露できてうれしかったです。

 しかもサニピは1人ひとりが太陽みたいにキラキラ輝いていて、まさに“The アイドル”みたいな……。

佐々木 お?

 本当にかわいくて……。

佐々木 からの? からの?

 圧が怖いよお(笑)。あと、さっきも話に出ましたけど、歌割りがすごい細かくて、逆に私は真似できない。

菅野 生放送で歌ったとき、カメラさんが追いつけないぐらいとんでもない歌割りなんですよ。

佐々木 特に「SUNNY PEACE HARMONY」と「EVERYDAY! SUNNYDAY!」が大変かも。

菅野 曲の1番と2番で、歌う人の組み合わせも全部違うんですよ。だから暗記地獄みたいな。レッスンのたびにみんなで譜面を広げながら「ここ、マーカー引いて」「そこはあなたのパートじゃないよ」って。

佐々木 組み合わせが変わると途端にわからなくなっちゃうんだよね。

 それこそ努力の賜物だと思う。私だったら、自分が歌うパートじゃないところで堂々と歌っちゃいそう。

佐々木 私もわからなくなったら「全部歌っとこう」みたいな(笑)。

菅野 そういった意味ではサニピは月ストとは逆で、一糸乱れずというよりは、1人ひとりの個性が爆発している感じ。あと、サニピの曲はお祭りじゃないけど、ライブではお客さんを巻き込んで、みんなで元気を与え合いたくなる楽曲が多くて。私が演じている川咲さくらちゃんも物語の中でよく言うんですけど、サニーピースは私たち5人のピースサインだけじゃ作れなくて、ファンの皆さんのピース(かけら)をつなげて初めて完成する。それでいうと、この間のライブで初めてお客さんも含めたみんなで円陣を組めたんですよ。

佐々木 でも、最初に5人で「円陣やりたい!」「やろうやろう!」と盛り上がった直後、各自スマホで円陣の掛け声を確認しだして……。

菅野 しーっ! こっちの裏側の話はいいから。

佐々木 念のためね(笑)。

菅野 でも、そこで改めて発見があって。実はサニピの円陣には2パターンあって、アニメでは「私たちの思いを」「私たちの光を」「私たちだけの歌に乗せて」と言っているんです。でもゲームでは物語が先に進んでいて、サニピは「I-UNITY」という大きな大会の決勝で「SUNNY PEACE for You and Me!」という楽曲を歌うんですね。そのときの円陣の掛け声は「私たち」じゃなくなっていて、「みんなの想いを」「みんなのピースを」「みんなで歌に乗せて」に進化しているんですよ。

佐々木 そうそう。

菅野 それが、ライブでの制限が緩和されたことでようやくみんなでピースをつなげられるようになったという意味でも、私たちの心境と重なる部分があって。

佐々木 5人でジーンとしちゃったよね。

2023年5月26日更新