「ヒプノシスマイク」Buster Bros!!! VS 麻天狼 VS Fling Posse 木村昴×速水奨×白井悠介|三つ巴のFinal Battle! リスペクトと感情があふれ出た「7th LIVE」を振り返る

Kj(Dragon Ash)インタビュー

Dragon Ash。中央がKj(Vo, G)。

長い音楽人生の中でもかなり珍しい体験

──木村昴さんに伺ったのですが、「7th LIVE」で「SHOWDOWN」を披露されたとき、演出の火柱に興奮されていたということですが。

俺らは火柱耐性ないんで、「アッチイ!!!」みたいな(笑)。しかも俺らはステージの後方にいて「やべー!」とか言っているのに、声優陣は火柱の隣で普通にパフォーマンスしてたから「すごくない!?」と思いました。レーザーのクオリティや本数もちょっと次元が違ったし、ライブハウスを回るバンドが1年で使う制作費を1日で使ってんじゃないかという規模感だったから、長い音楽人生でもかなり珍しい体験をさせてもらいましたね。

──「ヒプマイ」にDragon Ashが制作陣として参加するニュースは、多くのリスナーに衝撃を与えました。

今息子が中1なんですが、息子に背中を押されました。資料を家に持って帰って話したら「マジでやったほうがいいよ」って。それで「マジか!」みたいな(笑)。それに当方秋葉原とか行っちゃうくらいアニメ好きだし、スタジオにもフィギュアを飾ってるくらいなので、カルチャーとしての違和感はなかったですね。声優陣がラップ入れたのを最初に聴いたとき、「やば! オットーがラップしてんじゃん!」って(笑)。

──天﨑滉平さんはアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」のオットー・スーウェンも演じられてますね。

ライブとかのサウンドチェックでもそうでしたね。「『よろしくお願いします』の声がもうあのキャラじゃん!」って(笑)。ドラム(櫻井誠)もアニメ大好きなんで、「あの声、あのキャラだよな!」って、勝手に盛り上がってて。完全に俺ら得ではありました(笑)。木村昴くんは楽屋にも訪ねてきてくれて、そこで音楽の話もしっかりできたし、音楽的な感性のずば抜けた人だなって思いましたね。声優として大スターなのは存じてるけど、ミュージシャン脳があるし、ミュージシャンに対しても敬意を持っていて。

──彼は「週刊ヤングジャンプ」でも音楽解説の連載を持っていて。

だから、こちらも「なんで声優がラップしてるの?」とはならなかったし、向こうも「なんで自分たちのライブにこんな入れ墨だらけの人いるの」とはならなかったと思う(笑)。だから、気持ちを通じ合わせることができたように感じたのはうれしかったですね。

──「ヒプマイ」チームの情熱がKjさんにちゃんと伝わったという。

そうですね。まずこの話を僕らに振ってきた「ヒプマイ」のディレクターの情熱がそもそもすごかったし、そこで好奇心が湧いたから、この話をお受けしたんですよ。かつ、ディレクターが作品に対してかなり明確なビジョンを持っていたんですよね。「こうしてほしい、こういうイメージで」と、細かなディレクションをこれまでの音楽人生で経験したことがないくらい受けました。

Kj(Dragon Ash)

ディレクターの「ヒプマイ」愛が伝わってきた

──ほかの参加アーティストからも「ヒプマイ」のディレクションはすごく細かくて、同時に明確だという話は聞いているのですが、Dragon Ashに向けてもそうだったんですね。

ディレクターの方が本当に「ヒプマイ」というプロジェクトを愛しているんだなということが伝わってきたし、愛情が本当に強かったから、むしろ仕事っぽくなかったんですよね。それがよかったんだと思う。内容的には、バトルなんだけど何かひとつのものをみんなで構築していくみたいなイメージで、かつ叙情的な……という前提から入って、そのあともかなり詰めて完成に至りました。

──「SHOWDOWN」のサウンドは、一発ド派手にというよりは、ジリジリと熱を帯びていって、サビで爆発する感触が印象に残りました。

ドラムで持っていく曲になりましたね。Dragon Ashの楽曲制作は、俺が持っていった雛形をパートごとにメンバーがアレンジしていく方法論を取ることが多くて、この曲もそうでした。そして今回はドラムがかなり自由度の高いフレーズを作ってきたんですよね。それはDragon Ashの楽曲のときに多いパターンで、逆に楽曲提供のときはそんなことはないんですよ。だから、結果的にDragon Ashの流れと通じる部分の多い曲になったんじゃないかなと。

──「7th LIVE」でもドラムの展開は非常に印象に残りました。今回のライブではDragon Ashとして「New Era」と「Fly Over feat. T$UYO$HI」を演奏されましたが、Dragon Ashとしてこの2曲を選ばれたのは?

最新曲というところですね。それは普段フェスに出るようなときと変わらずに。自分たちの今の現在地を見てもらって、いまこういうフォーマットで動いてて、こういう美学を持ってますということを提示するには、やっぱり最新曲を披露するのがふさわしいのかなと。

「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 7th LIVE ≪SUMMIT OF DIVISIONS≫」8月7日公演の様子。

──8月8日公演に登場したスチャダラパーは「GET UP AND DANCE」「今夜はブギーバック」「サマージャム95'」というクラシックでまとめていたので、その差異とバランスも興味深くて。

まあDragon Ashは置いといて、スチャさんがあの現場に出てるということは、だいぶすごいことなんじゃないですか? 楽屋裏でスチャのメンバーに会ったけど「いるー! 普通にいるー!!」みたいなテンションでした(笑)。

──スチャとDragon Ashが一緒に出演するイベントなんてそうそうないですからね。

プチフェスですね(笑)。多様性が謳われる時代だし、そういう意味でもふさわしいラインナップだったんじゃないですかね。

──最後に、「ヒプマイ」というプロジェクトに関わられたうえで、「ヒプマイ」というカルチャーへのコメントやエールをいただけますか?

音を楽しむと書いて音楽だから、まず声優陣が音を楽しんで、続けてほしいですね。メンバーは年齢もさまざまで、いろんなアプローチの方がいらっしゃいますし、ラップに対してもともと親和性がある人も、参加してから「向いてるじゃん」と思った人も、今もラップに対して一生懸命がんばっている最中な人もいると思うんです。でも、その皆さんの根底には「楽しさ」があってほしいなと。とはいえ、今日本でトップクラスに売れている音楽コンテンツが「ヒプマイ」ですから、皆さんが音楽を楽しんでいる部分はリスナーにも伝わってると思うし、このままやっていってほしいなと思います。あとはディレクターの愛情ですよね。当然伝わってると思うけど、改めてその愛情を理解してやってほしいですね。その愛情が人を喜ばせているというのは紛れもない事実だと思うし、こんなデリケートなコロナ禍でも、2日間しっかりお客さんが入って、配信も多くの子たちが観ているというのは本当にすごいことだし、人を楽しませているという部分においては日本有数のコンテンツだと思う。だから、多くのリスナーのためになっているし、願わくば本人たちも楽しんで、本人たちのためにもなっていたら素敵ですよね。

Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)
1997年2月にメジャーデビューを果たしたミクスチャーロックバンド。オルタナティブロックやヒップホップ、エレクトロ、ラテンなどさまざまなジャンルを取り入れた独自のサウンドを鳴らしている。現在はKj(Vo, G)、櫻井誠(Dr)、BOTS(DJ)、HIROKI(G)、ベーシストにT$UYO$HI(The BONEZ、Pay money To my Pain)を迎え5人編成で活動中。2021年5月に、テレビアニメ「セスタス -The Roman Fighter-」のオープニングテーマ「エンデヴァー」、タイトルトラック「New Era」、「ダイアログ」の3曲を収録した、4年ぶりとなるCDシングルをリリースした。