ナタリー PowerPush - HOTSQUALL
過去の自分たちと戦った渾身作「Driving squall」
HOTSQUALLの3rdフルアルバム「Driving squall」が完成した。前作のミニアルバム「Darlin' Darlin'」から2年、2ndフルアルバム「BACKBEAT」からはおよそ4年。今作は、精力的なライブ活動で得た成長が詰め込まれた、強力なバンドサウンドが鳴らされているアルバムに仕上がった。
ナタリーではリリースを記念し、メンバー3人にインタビューを実施。試行錯誤しながら“HOTSQUALLらしさ”を探したという制作過程、音色や歌へのこだわりなど、今作が作り上げられるまでが明かされた。
取材・文 / 高橋美穂
次はフルアルバムしかないだろう
──2ndミニアルバム「Darlin' Darlin'」からは約2年が経ちました。結構、待ったなあと思うんですが。
チフネシンゴ(G, Vo) バンドにとっては、あっという間でしたね。友達のレコ発ライブにも出ていたし、自分たちのイベントもやってましたし、なんなら会場限定のシングルも出していたので。でも、気が付いたらどんどん年月が経っちゃっていて、ヤベエ出さないと、とは思うようになって。
──曲作りに関しては?
チフネ 常にやっていた感じです。でも、いつレコーディングするって決めておかないと、どうしても詰めのアレンジまではいかなくて。ネタはいっぱいあったんですけど。
──それは、次はフルアルバムを出したいという気持ちもあったからですか?
チフネ ありました。というか、それしかないだろうっていう感じでしたね。なんなら前作のときからフルアルバムを出したい気持ちはあったので。
過去の自分たちと戦った感じ
──では、今作のビジョンは、いつくらいからはっきりしてきたんでしょうか。
チフネ レコーディングの半年前くらいだから、去年の秋かな? そこで初めてちゃんとしたプリプロをやって、そこから具体的になってきたというか。ずっと、漠然としたビジョンはあったんですけど、そのときそのときの気持ちで、どんどん変わっていっちゃうので。
──どういうビジョンに定まったんでしょうか。
チフネ HOTSQUALLらしいものにしようっていう。最初は新しいことをやりたいと思っていたんですけど、いろいろ試しながら、これは俺たちに向いている、向いていないっていうところを判断して。
──そぎ落とす作業だったということですか?
チフネ そぎ落としたり、付け足したり、こねくり回しましたね(笑)。その時期は、いつもよりも長かったかもしれないですね。
──自分たちでハードルを上げているところもありましたか?
チフネ 少なからずありますね。フルアルバム3作目ですし、今までの自分たちを越えたものを……人がなんて言うかはわからないですけど、俺たち自身がこれならって納得したものを出さなきゃいけないから。だから、過去の自分たちと戦っている感じはありました。これはもうやったよね、じゃあ新しいものを引っ張り出さなきゃいけない、でもそこの引き出しは1日や2日では開けられないじゃないか、っていう自問自答とか。これでいいんじゃないかなって思えるようになったのは、録っている最中くらいでしたね。
いろいろ考えた挙句、俺自身に戻ってきた
──今作では、まず、歌がすごくエモーショナルになったと思ったんですよね。
アカマトシノリ(Vo, B) 今回は、曲の大半をチフネが作ってて。それは今まで当たり前だと思っていたんですけど、そうじゃないと気付いたんですよ。自分で作って歌うのと、チフネが作ったものを歌うのとは違うから、俺がわーって自分の感覚で歌ったものに対して、チフネプロデューサーが(笑)「いや、アカマちゃん、もうちょっとこういう感じで」とかって言ってくれて。
チフネ アカマちゃんなんて言ったことない!(笑)
──プロデューサーのイメージですね(笑)。
チフネ そうそう(笑)。俺も、やっぱりアルバムとしてコントラストを付けたいなと思っていたから、言われたことに対して、なるほどなって思うところはたくさんあったんですよね。
チフネ テイクを重ねてしっちゃかめっちゃかになってきているときに「もう1回歌詞を読もう」って言ったりはしましたね。そこで、この歌はこういう歌だった、って確認してから歌ったらいいテイクになる、みたいな。
──そのせいか、感情表現が多彩になった印象を受けるんですよね。
チフネ 録っている段階で、いろいろ実験しましたね。もっと優しく歌ってみよう、って試してみたら気持ち悪かったり(笑)。こういう表現の仕方もあるんだって、見つけたこともありましたね。ただ、俺、あんまり器用なほうじゃないので、考えてうまくいった例はあんまないんですよ。いろいろ考えた挙句に、俺自身に戻ってきた感じがあって。そこが良かったのかな。
チフネ 俺は、こいつのキーだとここが一番気持ち良く聴こえるとかも、何年もやってきてわかっているから、それと違う歌い方をすると、違う違うって思いますね。もっときれいに歌ったほうがいいのかな?って試してたりしてるときに「お前らしく歌ったほうがいい」って言うことはよくあります。
──ライブなどを思い返すと、アカマさんは考え過ぎちゃいけないタイプに見えますよ。素直な歌が何よりも魅力的というか。
チフネ 俺、よく歌詞を間違えるんですけど(笑)、この曲こうだ!っていう気持ちはブレてないし、最近は、そういう熱量で歌ったほうが伝わるんじゃないかなってすごく思っています。世の中に歌がうまい奴はいっぱいいるけれど、本当に言いたいことを言ってるの? そこに熱量があるの? って思うこともあるし。そこは、CDを作る上でも意識しましたね。
CD収録曲
- LIKE THE STAR
- MARY'S SORROW
- RUNNING THROUGH TODAY
- I'M WAITING FOR YOUR SMILE
- ALL
- LONG LONG
- RAINBOW MY RAINBOW
- SHAKE!!
- DO YOU KNOW WHY?
- BODY FEELS
- WHATEVER
- YOU
- THE WIND OF MY HEART
HOTSQUALL(ほっとすこーる)
チフネシンゴ(G, Vo)、ドウメンヨウヘイ(Dr, Cho)、アカマトシノリ(Vo, B)によるスリーピースバンド。地元・千葉でのライブを中心に活動をスタートさせ、2005年11月に1stフルアルバム「YURIAH」を発表。メロディックパンクをルーツに持ちつつ、美しいメロディとハードなビート、英語詞と日本語詞の絶妙なバランスを誇る楽曲が武器となり、インディーズシーンで頭角を現す。2012年6月、フルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作「Driving squall」をリリースする。