ナタリー PowerPush - 星野源
初体験づくし!2012年10大ニュース
「知らない」と「夢の外へ」の根本は同じ
──さて10大ニュースで挙げてもらった出来事を経て、2012年を締めくくる「知らない」がリリースされます。この曲は、夏に発表された「夢の外へ」とは対照的な雰囲気ですよね。
ええ。でも別に「夢の外へ」と違うタイプの曲にしようとか意識したわけではなくて、自然にできちゃったんですよね。プライベートでショックな出来事があって、それに反応するように作らされた曲です。ギター1本で歌って作ってるときに壮大なイメージが湧いたので、この曲を「夢の外へ」と同じ編成で演奏したら、「夢の外へ」と同じことをするわけでもなく、かといって前にも戻らず、ちゃんと先に進めると思ったんですよ。
──壮大な音もですが、「絶望」という言葉が出てくる歌詞が印象的です。
「物語つづく 絶望をつれて」っていうフレーズですね。絶望を乗り越えるでもなく、連れていくという。
──どんな出来事があっても、それとともに生きていくしかないというメッセージと捉えたのですが。星野さんがこの曲の中でリスナーに伝えたい思いはどういうものなんでしょうか。
うーん。例えば「日常」はメッセージソングで、「くせのうた」「ストーブ」は物語的なんだけど、今回はそのどちらでもない感じです。あえて言うなら「空気に向かってしゃべってる感じ」なんですよ。目の前に対象はいないんだけど、歌ってる向こう側に見えない対象がいるんじゃないかっていう。
──「夢の外へ」と同じ編成で録られたのことですが、そのほかに共通項はありますか?
「知らない」の根本にあるテーマって、「夢の外へ」と似てるんですよね。「夢の外へ」は虚構や夢を外に引っ張り出すことを歌ってて、「知らない」は未来に向かって歌ってる。夢も未来も今はないものじゃないですか、それを歌ってるという類似点がある。で、「知らない」は先が見えなくて止まってたり、「自分は終わった」って思ってる人に対して、その苦しさを承知した上で「まだ先はあるんですよ」っていう曲なんです。
──「絶望」という言葉は強烈ですけど、決して暗い曲ではないんですよね。サウンドとあいまって包容力もありますし。
曲ができたときに思い描いた景色は、朝焼けで太陽がガーって昇ってくるイメージだったんですよね。そこに希望があったんです。どうしようもない生命力というか。どんなことになっても太陽は昇って、それに照らされる自分がいる。その絶望も希望も照らす太陽の威力を、歌で出したいというのがあって。だから地味なアレンジにはしたくなかったんです。
──季節感はイメージしました?
言葉は入ってませんけど、歌詞は冬の朝のイメージで書きましたね。あと今回のシングルの裏テーマが季節なんですよ。「知らない」以外は季節の言葉が入ってて。冬を描いた「知らない」から始まって、秋が「ダンサー」で、夏が「季節」で、春が「おもかげ(House ver.)」って逆流していくんです。
ニューシングル「知らない」/ 2012年11月28日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
収録曲
- 知らない
- ダンサー
- 季節
- おもかげ(House ver.)
初回限定盤 DVD収録内容
- 「ビデオのストレンジャー」(監督:山岸聖太)
- Music Video「知らない」(監督:山口保幸
- Live「星野源の日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ」
- レコーディング&Music Videoメイキングなど
星野源 (ほしのげん)
1981年1月28日埼玉県生まれのシンガーソングライター、俳優。代表的な出演作はテレビドラマ「11人もいる!」「ゲゲゲの女房」など。2000年には自身が中心となりインストバンドSAKEROCKを結成。2005年に自主制作CD-Rで初のソロ作品「ばかのうた」を制作し、2007年にはこの作品をベースにしたCDフォトブック「ばらばら」を発売。2010年に1stアルバム「ばかのうた」をリリースする。翌2011年には2ndフルアルバム「エピソード」を発表し好評を博す。2012年2月には3rdシングル「フィルム」を、同年7月に資生堂「アネッサ」のCMソング「夢の外へ」を発表。さらに11月に2012年を締めくくる壮大なバラードシングル「知らない」をリリースした。J-WAVE「RADIPEDIA」では月曜日のナビゲーターを担当中。