音楽ナタリー Power Push - 堀江由衣×angela

「K」が導くファンタジー

ドイツは街並みが堀江由衣

──angelaが1期と劇場版で印象付けたロックテイストを継承しようとは考えなかった?

KATSU 劇場版の劇中曲で堀江さんにアンナとして歌ってもらった「-フレイム・オブ・レッド-」という曲があるんですけど(参照:アニメ「K」彩る歌モノベスト、ほっちゃんが歌う劇場版挿入歌も)、自分としてはそこで一度「K」の音楽を完結させたような気持ちがあるんです。だから今回は改めて「K」の音楽を考えていく中で、どちらかと言うと「堀江由衣さんらしさってなんだろう?」というところで悩みましたね。

──バトル感を連想させるサウンドがロックではなくシンフォニックな表現に変わっているのは、すごく堀江さんらしいですよね。ヨーロッパの騎士を連想させるような。

angela

KATSU ヨーロッパはすごく意識しています。

atsuko 「K」にはドイツのシーンも出てきますしね。

KATSU 打ち合わせのときに堀江さんが何度も「ドイツ行きたい」って言ってて。

堀江 言ってましたね(笑)。angelaさんはドイツ行かれたんですよね? いいなあー。

atsuko そうなんですよ、すみません(笑)。グリム兄弟ゆかりの地で開催されたイベント(ドイツ・カッセルで9月に行われた「Connichi 2015」)に誘われて。よかったですよードイツ。

KATSU 街並みがもう、堀江由衣なんですよ。

atsuko うん。絶対撮影絡めて行ったほうがいい。

堀江 行きたい行きたい行きたい行きたい行きたーい!!

──ヨーロッパの伝統的な風景が残っている場所なんでしょうか。

atsuko 古い教会とか、少し行けば古城もあって。スタッフはみんな観光も楽しんだみたいで。私たちは1mmも観光できなかったんですけど(笑)。1mmもですよ! でもホテルから見える森の景色だけでも十分に素敵で。格式高そうな教会の前にコスプレイヤーたちがたむろしてたりして「それ用のセットだなー」みたいな(笑)。

堀江 いいなあー。

キスは誰の音?

──かなり具体的な共通のイメージを持って制作に挑んだんですね。

atsuko そうですね。ファンタジーでバトル!みたいなイメージだなというところで進めていきました。

──「K RETURN OF KINGS」の第1話オープニングで最初に聴いたときは、サビ終わりのキス音が印象に残りました。

KATSU あのキス音は僕のだって堀江さんがデマを流してるんですよ。

堀江 違うんです! レコーディングでは何度か録らせていただいたんですけど、うまくできているのかできてないのか、自分ではわからなくて。完成形を聴いても……誰の音なのかはわからないじゃないですか。私の音で満足できなかったKATSUさんがご自身で録った可能性もあるなと思って。

左から堀江由衣、angela。

atsuko 確かにそうですけど、「KATSUのキス音です」じゃ怒られちゃいますよ(笑)。

堀江 デモに入ってたatsukoさんの音もかわいかったんですよ。

KATSU 舌打ちね(笑)。

atsuko 私がやると舌打ちに聞こえるんですよ(笑)。

──キス音を入れることはデモ段階からマストで考えてたんですね。

KATSU はい。ただ、キス音の正解ってわからなくて。1回舌打ちに聞こえるともう舌打ちとしか思えないし。わからないまま堀江さんには何パターンか試していただいたんですけど、正解がわからないまま何度もやってたら、堀江さんがだんだん照れてくるんですよね(笑)。結局自分の中でこれが正解かなと思ったものを使って試しに聴いてみたら、みんなからは「生々しすぎる」と言われて。

堀江 ムッチュー、みたいな感じの(笑)。

KATSU 僕はあれが正解かなと思ったんですよ。

atsuko すごく長ーいやつもあったよね(笑)。

ボーカリスト堀江由衣が持つ「倍音の密度」

──「アシンメトリー」はバトルシーンの多い「K」の世界に合った勇ましいサウンドなので、もしもっと熱いボーカリストが歌っていたら全然違う印象になるんじゃないかと思うんですよ。どこか飄々と涼やかに歌っているような、堀江さんのボーカリストとしての特質がよくわかる楽曲だなと思いました。

堀江 私は一生懸命歌ってるんですよ(笑)。atsukoさんはさらっと歌ってます?

atsuko いや、私も一生懸命でしたよ(笑)。でも堀江さんは私のデモを聴いて覚えるわけだから、あまり自分のクセは入れないようにしています。この曲は息継ぎするポイントが難しいんですよね。

堀江 atsukoさんは息継ぎしないらしくて。

atsuko まったくしないわけじゃないよ(笑)。

──お2人から見て「ボーカリスト堀江由衣」の特徴は?

KATSU 何曲か堀江さんの曲を作らせてもらってわかったんですけど、声の密度……倍音の感覚が違うんですよ。例えばatsukoだとサビに行くところで倍音がガッと増えるので、作業をしているといい意味で耳が痛い。堀江さんの声は、それが常にあるんですよ。声量とはまた別の、密度なんですよね。密度が濃ければ濃いほど、人間の耳を惹き付けるものがあって。いろんなタイプのボーカリストと仕事してきましたけど、堀江さんは特に濃い。

堀江 そうなんだあ。へえー。

KATSU 高音から低音までぎっしり詰まってる。堀江さんの曲を作ってる人はみんなそう感じてると思いますよ。

堀江由衣

──熱唱するタイプではないけど、ライブの音響で歌声を聴いていても、いろんな音が鳴っている中で歌声がパキッと届くんですよね。

堀江 ホントですか? 自分ではマイク乗りの悪い声だと思ってた。

atsuko そんな、毎日マイクの前に立ってる声優さんなのに(笑)。堀江さんのさらっと歌ってるように見える才能は本当にすごいなと思いますね。最近は清(竜人)さんの曲とか、アップテンポですごく複雑な曲を歌ってますけど、難なく歌ってるように見えるんですよ。どんな難しい曲も踊りながら、さらっと歌っていて。

堀江 いやあ、めっちゃ必死ですよ!「リズムってなんだ!?」みたいな感じで(笑)。

atsuko 難なくやってる“ように見える”んですよね。前に練習スタジオで会ったとき、堀江さんは半年先ぐらいのライブの練習をしていて。「うわあ堀江さんも練習するんだ。しかもこんなに前から」と思いましたもん(笑)。

堀江 リハスタで何度かお会いして、angelaさんはそのたび違うライブのリハなのに、私は前のときと同じライブのリハをやってる(笑)。覚えらんないんで、ずっとやってるんです。

──昔ピチカート・ファイブの惹句にあった「汗知らずスーパー・スウィート・ソウル」みたいな、ひょうひょうとした汗知らず感があるんですよね。

KATSU 汗知らず感はしっくりきますね。舞台裏の苦労が表に出ない感じ。

堀江 そうかあ。でもそれはいいことってとらえよう。自分としては、もっとカッコよく歌いたいんですよ!

──本人的にはもっと熱く歌い上げたいんですね。

堀江 atsukoさんみたいにカッコよく歌うことを目指すんですけど、なんか「またいつものほっちゃんになっちゃうなあ」みたいな。歌で感情が出せるのってすごいなといつも思うんです。なかなかシャウトとかできなくて……。

atsuko あの、堀江さんはしなくていいと思いますよ(笑)。

堀江由衣 ニューシングル「アシンメトリー」 / 2015年11月4日発売 / STARCHILD
初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / KICM-91639
アニメ盤 [CD] 1296円 / KICM-91640
通常盤 [CD] 1296円 / KICM-1639
収録曲
  1. アシンメトリー
  2. 星空に願いを
  3. アシンメトリー(off vocal ver.)
  4. 星空に願いを(off vocal ver.)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「アシンメトリー」MUSIC CLIP
angela ニューシングル「DEAD OR ALIVE」 / 2015年11月11日発売 / STARCHILD
限定生産盤 [CD+Blu-ray] 1944円 / KICM-93304
アニメ盤 [CD] 1296円 / KICM-3304
CD収録曲
  1. DEAD OR ALIVE
  2. ホライズン
  3. DEAD OR ALIVE(off vocal version)
  4. ホライズン(off vocal version)
限定生産盤Blu-ray収録内容
  • 「DEAD OR ALIVE」Music Clip
堀江由衣(ホリエユイ)
堀江由衣

東京都出身の声優アーティスト。1997年に声優としてのキャリアをスタートさせた後、1998年に歌手デビュー。「ほっちゃん」の愛称で親しまれ、永遠の少女然とした自身のキャラクターと重なるオリジナル音楽作品をコンスタントに発表している。アニメやゲームのキャラクターソングも数多く手がけ、2005~2007年には声優ユニット「Aice5」としても活躍。2009年9月には声優として歴代4人目となる日本武道館公演を2日間にわたって行い、いずれも成功を収めた。2015年1月には通算9枚目となるオリジナルアルバム「ワールドエンドの庭」、同年11月に通算19枚目のシングル「アシンメトリー」をリリース。

angela(アンジェラ)
angela

岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」を発表。この曲は同年、アニメファンが選ぶ「アニメーション神戸賞」で主題歌賞を受賞した。2015年11月には通算25枚目のシングル「DEAD OR ALIVE」をリリース。