ナタリー PowerPush - hideトリビュート特集

東海林のり子×木村世治対談

こんな楽しいことが永遠に続くんだろうって思ってた

──プライベートな場所ではどうだったんですか?

木村 音楽談義みたいなこともしてましたね。洋楽、日本の音楽を含めて、けっこう通ってる音楽が近かったんですよ。KISS、Queen、Aerosmith、Cheap Trickとか。hideさんがよく通ってたバーがあって、そこはアナログのレコードがたくさんあったんですよね。そこで酔っ払って、2人でリクエストしたり……。それも貴重な体験だったなって。東海林さん、hideさんが酔っ払ってるところって見たことあります?

東海林のり子

東海林 そういうところにはいなかったの。会場の中の打ち上げだけで、「じゃあね」って。

木村 それが正解です!

東海林 だからね、マジメで優しいhideちゃんしか知らないのよ。いい付き合いだったわ(笑)。

木村 僕は一緒に飲みに行く機会も多かったんですよ。やっぱり「時間を共有したい」という気持ちがあるから、帰りたくないんですよね。hideさんも全然帰らないですからね。朝の6~7時まで飲むとか、普通だったし。あと、気が付けば周りにたくさん人がいるんですよ。

東海林 話が伝わっちゃうんでしょうね。「あそこでhideさんが飲んでる」って。

木村 そうみたいですね。で、いろんな人を紹介してくれるんです。D'ERLANGERのkyoちゃんもそうだし、J(LUNA SEA)もそうだし。今も飲んだりしゃべったりしてる人たちって、“hideさんつながり”が非常に多くて。

東海林 私もLUNA SEAを紹介してもらったんですよ。(芝浦)GOLDでhideちゃんがDJしてるときに、「こいつら、LUNA SEAって言うんだよ」って。最近の若いバンドはあんまりお酒も飲まないみたいね。

木村 ライブのあとも「ごはん食べて、ゲーセン行って帰る」みたいなバンドもいますからね。

東海林 “Rock SPIRITS”も変わってくるのかしら(笑)。

──(笑)。お酒の席だと深い話もできますからね。

木村 ええ。ただ当時は「こういう楽しいことが永遠に続くんだろうな」みたいな気持ちでしたからね。まさか亡くなるとは思ってないので、意外と記憶が曖昧というか、覚えてないことも多いんです。

東海林 わかる。「これが最後かも」と思っていたら、一生懸命に覚えていようとするからね。だからね、今になって「あのことも聞いておけばよかった」と思うこともあって。

木村 ZEPPET STOREがメジャーデビューしてからは、ラジオのレギュラー番組が始まったりもしたし、けっこう忙しくなってたんですよ。だから、hideさんの飲みの誘いを何度か断ったりもしていて。それも悔しいなって思いますね。

最後の言葉は「今度はドレスコードを作ろうと思って」

東海林 ねえ、最後の言葉って覚えてる?

木村 俺、亡くなった日も一緒にいたんですよね。テレビの収録があって……。

東海林 フジテレビですよね。

木村世治

木村 そうです。ZEPPETも収録があって、合同で打ち上げすることになったんですよ。ちょうどhideさんの「オールナイトニッポン」が始まった日で、それを聞きながら2次会に移動して。でも、次の日に自分たちのラジオの収録があったから、「先、帰りますね」ってhideさんに言ったんですよね。「なんだ、帰るのかよー」っていうのが最後の言葉かな。その日の1次会は中華屋さんだったんですけど、ほら、hideさんって、飲んでるとき全然食べないじゃないですか。そのとき俺が「たまには食べてくださいよ」って言ったら、唐揚げを1個食べたんですよね。

東海林 よく食べたわねえ。

──そういうなんでもないことがむしろ記憶に残ってる?

木村 そうですね……。大切なことも記憶に残ってるんですけど、どこかで「言うのがもったいない」というのがあって。インタビューとかでも「hideさんはどんな方だったんですか?」って聞かれることが多いんだけど、わりと自分の中で封印しているというか。

東海林 私、全部しゃべっちゃう(笑)。自分だけで持ってたほうが、もったいない気がして。私はね、亡くなる年(1998年)の正月にインタビューしたんですよ。「ROCKET DIVE」のプロモーションビデオを作ってるスタジオに行って。今考えたらすごいこと言ったなって思うんだけど、「hideちゃん、これ売れるよ!」って言ったんですよね。

木村 ハハハハハ(笑)。

東海林 そうしたら「そう思う?」ってすごく喜んでくれたんですよね。あと、「またイベントをやるんだけど、今度はドレスコードを作ろうと思って」って言うから、私が「どうしたらいいの? 早めに教えてね」って言ったら、「いいんだよ、なんでも。例えば黄色のドレスコードだったら、何か黄色のものを付けてくればいいんだから」って。それが最後かな。

──1997年にhideさんは2回も骨折していて。1998年は心機一転、さらに気合いが入っていたんじゃないですか?

東海林 そうそう。「去年はすごく悪い年だったけど、今年はすごいよ。バリバリやるからね!」って。ハイテンションだった。

木村 実際、バリバリやってましたからね。前の年の暮れにX JAPANが解散して、ファンが落胆しているのもわかっていたから、「それをなんとかしなくちゃ」って。すごく行動が早かったんですよ。音源を作って、すぐ表に出ていって。

生きてたら何をやっていたか、全然想像つかないんですよ

──本当に幅広い才能を持ったアーティストだった思うんですが、お2人にとって、hideさんの一番すごいところはどこですか?

東海林のり子

東海林 ひと言で言うのは難しいけど、とにかくビックリさせるのが好きだったわよね。

木村 サプライズ好きですよね。

東海林 ライブのときもセットリストをちゃんと決めないんですよ。

──何が出てくるかわからないっていう。

東海林 そういう緊張感も楽しかったんじゃないかしら。演出もすごかったしね、裸の女の人が出てきたり。あれも確かメンバーに教えてなかったんじゃないかなあ。「おまえら、今日は楽しませてやるからな」って。

木村 代々木第一体育館のライブで、セキュリティのおじさんをいきなりステージに上げて、一気飲みさせたり(笑)。

東海林 結局ね、最後までビックリさせたんだと思う。「ざまあみろ、みんな」って。私、そう思ってるの。

木村 「生きてたら、どんなことやってたんだろう?」って考えることもあるんですけど、全然想像つかないんですよね。いきなり弾き語りっていうのもありそうだし、もっと歌謡テイストになったかもしれないし。

東海林 いつもいろいろ変化してたから。zilchにもビックリしたしね。

──今回のトリビュートシリーズをきっかけに、10~20代の若いリスナーにもぜひhideさんの音楽に触れてほしいですよね。

木村 そうですね。毎年、hideさんのバースデーパーティをやってるんですけど、スタッフに聞くと若い子が増えてるらしいんですよね。生前のhideさんを知らない新しい世代ですよね。

東海林 今回のトリビュートに参加しているアーティストも、hideさんのことを直接知らない人がいるわけでしょ? そういう世代の人たちもhideさんの音楽にインスパイアされてるっていう。今聴いても、全然古いって感じがしないしね。

木村 うん、そうですよね。

東海林 そうやって永遠に受け継がれていくんじゃないかな、hideちゃんの音楽は。

左から東海林のり子、木村世治。
V.A「hide TRIBUTE VII -Rock SPIRITS-」/ 2013年12月18日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ / TKCA-74018
V.A「hide TRIBUTE VII -Rock SPIRITS-」ジャケット
収録曲()内はカバーしたアーティスト
  1. ROCKET DIVE(氣志團)
  2. 限界破裂(D'ERLANGER)
  3. FLAME(J)
  4. DICE(筋肉少女帯)
  5. MISERY Remixed by INA(GLAY)
  6. POSE(CUTT)
  7. D.O.D.[DRINK OR DIE](THE CHERRY COKE$)
  8. DOUBT(THE NOVEMBERS)
  9. GOOD BYE(ZEPPET STORE)
  10. EYES LOVE YOU~Ver.2013(森雪之丞 with 今井寿(BUCK-TICK))
  11. ピンク スパイダー(THE PINK SPIDERS [Shame, PATA, CHIROLYN, JOE, INA])
V.A「hide TRIBUTE VI -Female SPIRITS-」/ 2013年12月18日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ / TKCA-74017
V.A「hide TRIBUTE VI -Female SPIRITS-」ジャケット
収録曲()内はカバーしたアーティスト
  1. ROCKET DIVE(AMIAYA)
  2. In Motion(mini)
  3. FLAME(chay)
  4. Beauty & Stupid(分島花音)
  5. HURRY GO ROUND(詩音)
  6. TELL ME(青山テルマ)
  7. MISERY(MAY'S)
  8. GOOD BYE(JAMOSA)
  9. ever free(小柳ゆき)
  10. ピンク スパイダー(倖田來未)
東海林のり子(しょうじのりこ)

大学卒業後の1957年にニッポン放送に入社し、1971年に退社。その後はフリーの芸能レポーターとしてテレビのワイドショーなどを中心に活躍し、レギュラー出演したフジテレビ系「3時のあなた」での「現場の東海林です」という決まり文句で一躍有名になる。その後X JAPANを知ったことをきっかけに、60歳近い年齢にしてヴィジュアル系を中心としたロックバンドの熱烈なファンに。「ヴィジュアルロックの母」の異名を持ち、ロックシーンと深く交流を持つようになる。

ZEPPET STORE(ぜぺっとすとあ)

1989年、木村世治(Vo, G)、五味誠(G)、YANA(Dr)の3人が中心となって結成したロックバンド。1994年に1stアルバム「Swing, Slide, Sandpit」をリリース。このアルバムがhide(X JAPAN)の目に留まり、彼の設立したレーベルLEMONedから1996年に2ndアルバム「716」をリリースした。同時期に中村雄一(B)が加入し、1996年にアルバム「CUE」でメジャーデビュー。1997年には五味が脱退し、翌年春に赤羽根謙二(G)が加入する。その後もライブやリリースなどの活動を精力的に展開するが、2005年に解散。6年後の2011年、東日本大震災を受けて楽曲配信でのチャリティを目的に再結成を果たす。再結成時より初代ギタリストの五味も加わり、5人編成で活動を行う。8月には新曲「SMILE」を配信およびライブ会場限定CDでリリース。2012年5月、hideのメモリアルイベント「hide FILM ALIVE!! ~hide Memorial Day 2012~」にて再結成後初のライブを開催。同年12月に約8年ぶりのオリジナルフルアルバム「SHAPE 5」を発表した。2014年1月には10thアルバムであり、5人編成での2ndアルバムともなる「SPICE」をリリース。3月にはトリプルギター5人編成でのライブツアー「Tour 2014 “GREAT DELIGHT”」の開催が決定している。