ROOM|5人で過ごす自由な時間

  • Awesome City Club
  • モリシー(G, Syn)
  • ユキエ(Dr)
  • マツザカタクミ(B, Syn, Rap)

Interview

演奏者の心意気まで聴こえる

──今回、Awesome City Clubの最新アルバム「Awesome City Tracks 3」のハイレゾ版も聴いていただきました。

マツザカ ライドシンバルの細かいニュアンスとか、エフェクターのノリがすごい鮮明にわかりました。

PORIN コーラスも鮮明に聞こえるよね。コーラスをダブルにしてる曲も多いけど、それもすごくわかりやすかった。

ユキエ あとatagiくんが「Moonlight」を聴いたときに「定位がすごくわかりやすい」って言ってたけど、私もそう感じたな。

モリシー うん。レコーディングのときにウチらがスタジオのモニタで聴いてる音と一緒だった。

マツザカ 「Don't Think, Feel」のストリングスは、生で録ったものをあえてサンプリングしてるみたいな感じに劣化させていて。さらに生で録った音を切り貼りしるけど、ハイレゾならそういう部分も聴き手に伝わりやすそう。

モリシー レコーディングではテープレコーダーを通したんですけど、ハイレゾで聴くとテープならではの温かみが感じられてグッときちゃった。

atagi ローファイな音源をハイレゾで聴くって面白いよね。すごい不思議な感じ。

マツザカ 「エンドロール」は打ち込みで作ったけど、作ったときのまんま聴こえるなと。

PORIN そうだね。歌のニュアンスは丸裸になってて、聴いてて少し恥ずかしかった(笑)。

──作り手として、リスナーにハイレゾ音源で楽曲を聴いてもらうことについてどう思いますか?

atagi ハイレゾ音源って、もともとはオーディオマニアの人が音楽を楽しむために開発されたと思うんですけど、今はある程度市民権を得たというか。「音楽好きだったらハイレゾ音源とか聴いてみたらいいよね。やっぱ迫力違うよ」くらいのものになってきてると思うんですよね。5年前じゃハイレゾ音源をポータブルで持ち歩いたり、外で聴くなんて全然想像できなかったんじゃないかな。僕自身、音がいいものって基本外に持ち出せないと思ってたから。いいイヤフォンを使っても、外で聴いてちゃ雑音が混ざって意味がないと思っていたんですね。でもh.ear onはノイズキャンセリング機能が付いてたりして、外でもいい音を聴けるようになってるんだよね。

マツザカ 今、ほとんどのアーティストがハイレゾクオリティでレコーディングをしてると思うけど、今までわざわざ圧縮していたものを、解像度の高いもので出せるっていうのはすごく可能性があることだなと思う。最近お客さんが「ギターのカッティングが気持ちいいですよね」って褒めてくれたことがあったんだけど、そういうふうに細部まで聴いて楽しんでくれる人が増えたなと思っていて。そういう人ってきっとハイレゾも楽しめるよね。みんな音に興味を持ってくれれば、やってる側としては楽しい。

atagi こういうかなり純度の高いものができると、逆にチープなものもまた流行ってきたりするのかなって思う。現に今はアナログブームだけど、ハイレゾの精度がどんどん上がっていくことで、音楽においてもう1つ新しい波が出てきそうな気がする。いい悪いの基準ができるからこそ、悪いなりのよさが出てきたりもするし。作り手としては「意味がすごくあるんだろうな」と思いますね。

モリシー ハイレゾの精度が上がっていくことで作り手ももっと新しいことができると思うし、楽しみだね。

ユキエ すごく繊細に聴けるからこそ、演奏者の心意気とか、人間的な部分まで伝わると思うんだよね。気が引き締まるなあ。

モリシー そうだね、嘘付けなくなるね(笑)。

  • 左からPORIN(Vo, Syn)、atagi(Vo, G)。
  • h.ear on Wireless NC(MDR-100ABN)
  • 左からatagi(Vo, G)、モリシー(G, Syn)。

Interview

答えを探している今が一番楽しい

──7月に東京・LIQUIDROOMで行われたワンマンライブを観させていただきましたが、すごく自然体でパフォーマンスしている皆さんの姿が印象的でした。今話しているのに近い、皆さんの人となりが感じ取れると言いますか。

マツザカ そうですね。もともと見せ方を決め込んでいた部分があったんですけど、それだけだと届けたい人まで届かなかったんです。それで「普通にありのままでいることがカッコいいんだな」って思った瞬間があって。「Awesome City Tracks 3」を作ってるときに困難があったんですけど、それを乗り越えていく中でだんだんメッキが剥がれていって。それであの日のライブは自然体で挑めたんだと思います。今日の撮影も、普段の5人みたいな抜けた空気感の写真になっていて、客観的に見て「すごいいいなあ」って思います。今の空気はそういうものだし。「ちょっとヒップで、親しみやすさもあるよね」っていうのが、僕らには合ってるなあと。

──自然体でライブに挑めるようになるまで、苦労がありましたか?

PORIN ありましたし、今もあります。「いい」って言ってくれる人もいっぱいいるんですけど、やってて「まだまだだな」って思うことのほうが多いですね。ワンランク上に行くための明確な答えとかは全然出ないんですけど、必死でがんばっています。

──ワンランク上に行くための明確な答えって難しいですね。

atagi 難しいですよね。ライブをしてる人って、たぶんみんな“お客さんが何も思わないこと”を実現させるために努力してる部分がたくさんあるんじゃないかなって思って。例えば「ここで間延びするとお客さんが冷めちゃうから、お客さんが冷めないようにがんばろう」みたいな。ショーとか人を楽しませることって、そういう努力も必要だし、それとはまったく別に、そのときの気持ちが人の心を動かすこともたくさんありますからね。でもメンバーで今出せるベストを尽くせてると僕は思ってます。

マツザカ 見え方をがんばって決め込んでいたところから、“ありのままでいる”っていうところにたどり着いたときに、逆に真面目さが出ちゃうメンバーなんですよね。こういうインタビューで「いやー、まだダメなんですけどねえ」って素直に言っちゃうし(笑)。でも僕は単純に、世の中やお客さんが「Awesomeってすごいいいね」って、“Awesomeな気持ち”になってくれることが一番いいと思うんです。もっと大きいところにいきたいですね。

モリシー 俺は「ライブはこうすればいい」という明確な答えが見つかったとき、一個満足しちゃうと思うんですよね。だから答えを探している今が一番楽しめてるというか、「どうやんだろうな」っていうときが一番パワーがあると思うので。そこは永遠に楽しんでいきたいなと。

ユキエ どのアーティストさんもきっと何かしら背伸びをしながら人前に立ってるのかなって思うんです。でも背伸びをする方向はそのバンドさんごとに違うと思うんですよ。それは自分の持ち味をどう出すかっていうところにつながってくると思うんですけど、「その背伸びの方向がAwesome City Clubはなんなんだろうね」っていうのが、今Awesomeががんばって取り組んでるところかなと。それがわかってきたら、また違う景色が見えてくるんじゃないかな。

──11月17日には大阪・umeda AKASO、24日には東京・TSUTAYA O-EASTで自主企画ライブ「Awesome Talks」が行われますね。大阪公演は東京カランコロン、東京公演はnever young beachとのツーマンライブとなりますが、ゲストはどのようにして決めたのですか?

マツザカ カランコロンとは前から一緒にやれたらなっていう話をしていて、今回実現することになりました。never young beachはこれまで対バンの機会があったけど、自主企画には誘ってなかったんですね。彼らは僕らと同じ頃に出てきたバンドなんですけど、小さい箱でこの若手2組でツーマンライブをやるのはすごいリアルでちょっとカッコ悪いなと思ったんです。なんかインディーバンド感がすごいというか。でもO-EASTで若いバンド2組でツーマンやって、人がパンパンになってたら「やるやん」って思ってもらえるだろうなっていう算段があって、このタイミングでお誘いさせていただきました。

atagi never young beachのライブをこの間ひさしぶりに観たらすごい楽しそうだったんだよね。

モリシー それこそありのままだったよね。

マツザカ うん。カランコロンも、never young beachとは違うベクトルで楽しいライブをやってるバンドだと思うので。僕らはカメレオンみたいにいろんな面があるから、どっちのバンドにもリンクすると思うんですよ。僕らも今楽しいライブをしたいと思ってるし、対バン相手との相乗効果で楽しい夜にしたいですね。

最新アルバム「Awesome City Tracks 3」
「Awesome City Tracks 3」
2016年6月22日発売 / [CD] 2160円 / VICL-64572CONNECTONE
ハイレゾ版
ライブ情報
Awesome Talks -Vol.5
2016年11月17日(木)大阪府 umeda AKASO
<出演者>
Awesome City Club / 東京カランコロン
Awesome Talks -Vol.6
2016年11月24日(木)東京都 TSUTAYA O-EAST
<出演者>
Awesome City Club / never young beach
Awesome City Club(オーサムシティークラブ)

Awesome City Club

「架空の街Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマにシティポップを発信する男女混成5人組バンド。2013年春、それぞれ別のバンドで活動していたatagi(Vo, G)、モリシー(G, Syn)、マツザカタクミ(B, Syn, Rap)、ユキエ(Dr)により結成される。2014年4月、サポートメンバーだったPORIN(Vo, Syn)が正式加入して現在のメンバーとなる。初期はCDを一切リリースせず、音源はすべてSoundcloudやYouTubeにアップし、早耳の音楽ファンの間で話題を集める。ライブを中心に活動しており、海外アーティストのサポートアクトも多数。2015年、ビクターエンタテインメント内に設立されたレーベル・CONNECTONEの第1弾新人アーティストとしてデビューする。4月にmabanua(Ovall)プロデュースの1stアルバム「Awesome City Tracks」、9月に2ndアルバム「Awesome City Tracks 2」をリリース。2016年3月には配信シングル「Vampire」を、6月に3rdアルバム「Awesome City Tracks 3」を発売した。


2018年3月27日更新