ナタリー PowerPush - HEAD PHONES PRESIDENT

ヘヴィロック界の至宝が語る バンド再生とメンバーの絆

太陽の光が似合わないバンドの挑戦

──今作はアルバムのアートワークも今までとは違った作風ですね。

HEAD PHONES PRESIDENT

ANZA デザイナーの方といろいろお話ししてから描いてもらったんですけど、予想以上にすごいのができたと思います。それに、今回はPVも……観ましたか?

──アルバムタイトル曲「Stand In The World」のPVですよね。屋外での演奏シーンが印象的でした。

ANZA 実はHEAD PHONES PRESIDENTって、今まであんな青空の下でPVを撮ったことがないんですよ。本当にありえないくらい、太陽の光が似合わないバンドってよく言われてたんですけど、今回はあえてそれを覆すチャレンジをして。そういう点でもわかりやすさだったりメジャー感だったりが出せたかな。内に向いているHEAD PHONES PRESIDENTじゃなくて、外に向けた新しいHEAD PHONES PRESIDENTっていうものを見せていけたらなって思ってます。

──そうなるとライブも変わってくるんでしょうか?

ANZA とはいっても、HEAD PHONES PRESIDENTの軸にある世界観っていうのは絶対に崩せないものだし、それが柱になっているので、どんなに曲が明るくなろうとやっぱりあのダークな世界観っていうのは残るんじゃないかな。大幅な変更はないにしても、ある程度見せ方は変わるかもしれませんけどね。例えばある曲の中で今までにないギターソロが入ったり、ベースやドラムが前面に出たり、1人ひとりのパフォーマンスは変わっていくと思うんです。あとは、以前の曲と新曲を織り交ぜて演奏したときにどう変わるのか。そのへんは自分たちでも楽しみにしてます。

海外ライブで要求されるスキルは「交渉術」

──ところでHEAD PHONES PRESIDENTは海外でも積極的にライブを行っていますが、日本と海外とではどのような違いがありますか?

ANZA 海外でライブをするようになって気付いたんですけど、向こうのライブハウスって日本みたいに機材が揃ってる環境じゃなんですよ。「本当に音が出るの?」っていうようなボロボロの機材ばかりで、下手すると対バン相手からドラムセットを借りることもあるくらい。4月にニューヨークでツアーしたときも、ドラムセットがボロくて大変でしたよ。

BATCH(Dr)

BATCH そうですね。今後はできればそういう環境でやりたくない(笑)。

ANZA それでも、その国に次はいつ来られるかわからないし、そんな環境の中でもリハーサルなしで本番をやって、きちんと結果を残さなくちゃいけないんです。

──それは日本だけで活動していたらわからなかったことですよね。

ANZA そうですね。海外でライブをすることで、バンドとしてすごく成長することができたし、人間的にもいろんな経験ができてると思います。

──ある意味試練ですし。

ANZA 試練ですね。特に楽器隊にはきついと思います。

HIRO 僕は海外でライブをするとき、何時に到着してホテルはどこで……ってことより、まず機材はどんなものがあるのか、何を用意してくれるのかを確認します。で、必要な機材が揃わないのであれば、当日の共演者から借りることができるか交渉するんです、「いいアンプ使ってるね?」みたいに。

一同 あははは!

HIRO 日本ではまず必要とされないようなスキルも要求されるので、けっこうスリリングな生活ですよね。そういう意味ではすごく精神的にもタフになれるし、普段使っていない楽器で自分たちの音を作り上げる技術も身に付く。本当に試練ですよね。だから日本のバンドはどんどん海外に行って、そういう過酷な環境に身を投じてみたらいいんじゃないかな(笑)。

初海外公演で自分たちのオリジナリティを認識

──ちなみに、HEAD PHONES PRESIDENTとして初めて海外でライブをしたのっていつ頃だったんですか?

HIRO 2002年のニューヨークが初海外ライブです。ニューヨークってヘヴィロックやメタルをやってるバンドが少なくて、いざ行ってみたら「大変なところに来ちゃったな」っていう感じだったけど、逆にそれが良かったのかもしれないですね。

ANZA 自分たちの感覚だと、アメリカに行けばこういうラウドな音楽があふれかえってるイメージがあったんですけど、初めてニューヨークでライブしたときにお客さんから「お前らのやってるような音楽は今まで聴いたことがない」って言われて。いろんな人が集まってるのがニューヨークなのに、そこで珍しいバンドっていう見方をされて、「自分たちにはオリジナリティがあるんだ」ってポジティブに考えられるようになりました。あの初海外ライブは本当に素晴らしい経験だったと思います。

──そこでの経験が自信になったから、現在まで精力的に海外展開を続けることができたと。そういえば4月にアメリカ限定シングル「PURGE THE WORLD」を発売するまでHEAD PHONES PRESIDENTは海外で音源を正式リリースしてませんが、海外のファンはどういうきっかけでHEAD PHONES PRESIDENTを見つけてくるんでしょうね?

ANZA 私もそれがずっと疑問だったんです。私は以前セーラームーンのミュージカルをやってたので、セーラームーン経由で入ってきた子たちも比較的多くて。日本だとアニメファンとヘヴィロックのファンって交わることがあまりないのに、海外だとアニメもメタルも好きって人が多いんですよ。そこから口コミで広まったり、単に日本の文化やヴィジュアル系が好きな子たちが私たちを見つけて好きになってくれたりして。自分たちは何もしてないのに、海外の人たちがネットを通じて私たちを見つけてくれて、ライブをするのを待っていてくれるっていう状況は本当にすごいことだと思います。

HEAD PHONES PRESIDENT - "Stand In The World"

収録曲
  1. Stand In The World
  2. My Name Is
  3. In Scrying
  4. Melt
  5. Dive
  6. Where Are You
  7. Just A Human
  8. Rainy Stars
  9. Enter The Sky
  10. Lost Place
  11. Rise And Shine
  12. Eyes
  13. Purge
HEAD PHONES PRESIDENT
(へっどふぉんぷれじでんと)

ANZA(Vo)、HIRO(G)、NARUMI(B)、BATCH(Dr)からなるヘヴィロックバンド。ANZAの華やかかつアグレッシブなボーカルと、トライバルなリズムとヘヴィなグルーヴを取り入れたメタルサウンドで人気を博す。2002年にはニューヨークで初の海外ライブを敢行。以後、ロサンゼルスやフランス、スウェーデン、台湾、中国、韓国などでもライブを行っている。国内でもIN THIS MOMENTヤTHE AGONIST、DOMENICAといった海外バンドと共演。2008年には「LOUD PARK 08」「TASTE OF CHAOS」といったフェス、イベントにも出演し好評を博した。2012年4月には10万人の動員を誇るアメリカのカルチャーフェス「MTAC OMEGA」にヘッドライナーとして出演。同年6月に通算3枚目のフルアルバム「Stand In The World」をリリースした。