遥海「My Heartbeat」インタビュー|今だから歌える思いを込めて。“私の鼓動”を刻んだ1stフルアルバム (2/2)

「Pride」に出会い、居場所を与えてもらったような気がした

──「Two of Us」は、これまでの遥海さんらしいストレートなラブソングです。

最初に聴いたときは、「ウエディングソングみたいだな」と思いました。そのときは自分はもちろん、周りにも結婚している同世代がいなかったんですけど、実は今フィリピンに帰国している私の姉が結婚式を挙げることになり、ようやく“結婚”を身近に感じられるようになったし、今までよりももっと深いところでこの曲を表現できると思ったので、アルバムに入れることにしました。さっき「いろんなものを手放してきた」と言ったけど、本当は手放したくなかったのに、失ってしまった人もいるんです。この曲は、そういう人たちのことを思い出しながら歌いました。コロナ禍の2年間に、会えずにもうこの世からいなくなってしまった大事な人たち、「大切だよ」と言いそびれてもう会えなくなってしまった人たちにも、この歌が届いたらいいなと思っています。

──歌って、どこか“祈り”に近い部分がありますよね。

本当にそう思います。例えばうれしい気持ちをどう言葉にして伝えたらいいのかわからないとき、言葉では足りないくらい感謝の気持ちがあるとき、歌にすることでメロディや声が気持ちを代弁してくれる。感情が声に乗ってあふれるような感覚が歌にはありますよね。

──アルバムの最後には、2020年5月にリリースされたメジャーデビュー曲「Pride」を常田俊太郎さんが新たにリアレンジした「Pride(Strings and Piano Reprise)」が収録されています。

「Pride」は、間違いなく今までで一番歌ってきた曲。メジャーデビューした私をいろんなところに連れて行ってくれたし、支えてくれた曲なんですよね。16歳から音楽活動をスタートして、一昨年メジャーデビューするまでの間はずっと居場所がなくて、どこに行ってもうまく馴染めないしハマらないし、できることが限られているような気がしていました。でも今考えると、自分の求めていたものが大きすぎたというか。本来の場所ではなく、遠くで居場所を作ろうとしていたのかもしれないなと。「Pride」という曲に出会い、居場所を与えてもらったような気がしたし、しかもその居場所は私が求めてつかんだというより、ファンのみんなが作ってくれたと感じていて。だからこそ、今まで支えてくれた人たちに対して“感謝”をテーマに「Pride」を歌いたかった。遥海が守ってきたものを、一緒に守ってきてくれてありがとうという気持ちでこの「Pride(Strings and Piano Reprise)」を歌いました。

遥海

みんなが声を上げやすい世の中にしていきたい

──昨年12月に神宮球場で開催された「東京ヤクルトスワローズ ファン感謝DAY」では、山田哲人選手の入場曲に選ばれた「Pride」と、村上宗隆選手の入場曲に選ばれた「声」を生で披露しましたよね。いかがでしたか?

最高の気分でした! 山田選手と村上選手が私のことを見つけてくれたおかげで、いろんな人に遥海の歌が届いたし、それだけでも本当にありがたかったのに、まさか呼んでいただけるとは。「あのときの感覚を失いたくない」と思って、すぐ日記に書きました(笑)。そのくらい、神宮球場で歌ったときの景色ってすごかったんですよ。いつかドームツアーもやってみたいなという大きな夢があるので、その味見じゃないですけど、2曲も歌わせてもらえたのはすごくいい経験になりました。

──実際に球場に行ってみたことで、夢をより具体的に想像しやすくなったでしょうね。

まさにそうですね。「あれだけの人の前でも、自分は歌えるんだ!」という自信にもつながりましたし。

──同月にオンラインで開催された「国連『国際障害者デー』イベント:包摂的でアクセシブルなコロナ後の世界に向けて」では、ゲストパネリストとして特別スピーチとパフォーマンスを披露されました。Z世代を代表するアーティストとして、社会問題にも積極的にコミットしていきたいという思いはありますか?

そうですね。私は13歳のときにフィリピンから日本に移住してきて、「不便だな」と感じることがすごく多かったんです。言葉がうまく通じなかったり、そのことで「声を失ってしまった」という感覚もあったり。それで伝えられなかったこともたくさんあったからこそ自分はシンガーになりたいと思ったし、声を上げることの大切さを身に染みて感じてきたんです。日本では「声を上げる」ということがタブーというか、例えばメンタルヘルスについて話すことも、ちょっとはばかられるような空気があるじゃないですか。そういう空気を少しでも変えていきたい。自分の音楽活動を通じて、みんなが声を上げやすい世の中にしていきたいと思っていますね。

──では最後に、今年の抱負を聞かせてもらえますか?

目標を「これ!」と決めてしまうと、自分の性格的にプレッシャーを感じてしまうんですよ(笑)。考えすぎてしまって、それにとらわれてしまうことがよくあるので、自分の感情をちゃんとコントロールできるようにしたいです。がんばることも大切ですけど、それだけじゃなくて寝られるときは寝て、楽しむときには楽しんで。自分で勝手に背負い込みすぎちゃう荷物はいったん置いて、「もう意味がわからないくらい楽しい!」と思えるような1年にしたいですね。

遥海

ツアー情報

Harumi "My Heartbeat" 2022 TOUR

  • 2022年3月18日(金)大阪府 BananaHall
  • 2022年3月19日(土)愛知県 SPADE BOX
  • 2022年3月21日(月・祝)東京都 WWW X

プロフィール

遥海(ハルミ)

1996年、フィリピン生まれのシンガー。13歳のときに日本へ移住し、2013年に応募した世界的オーディション番組の日本版「X FACTOR OKINAWA JAPAN」で注目を浴びる。2018年8月には自分の歌がどこまで通用するのかを確かめるべく、単身で本場の「The X Factor(UK)」に挑戦し、イギリス・ウェンブリー・アリーナでパフォーマンスを披露した。2019年には、自身初の東名阪ワンマンツアーを開催。同年4月に配信限定作品「MAKE A DIFFERENCE EP」、10月にCD作品「CLARITY」をリリースした。2020年5月にシングル「Pride」でメジャーデビュー。11月にはミュージカル「RENT」の日本版公演にスパニッシュ系のダンサー・ミミ役で出演した。2021年2月にリアーナやアリシア・キーズのカバーを含む5曲を収録した音源作品「INSPIRED EP」を発表し、9月に映画「科捜研の女 -劇場版-」と、テレビ朝日系木曜ミステリー「科捜研の女」Season21のダブル主題歌「声」を配信リリース。12月には東京・明治神宮球場で行われた「東京ヤクルトスワローズ ファン感謝DAY2021」で「Pride」「声」を披露し、大きな反響を呼んだ。2022年1月に1stアルバム「My Heartbeat」をリリース。3月にライブツアー「Harumi "My Heartbeat" 2022 TOUR」を開催する。