2016年に“バーチャルYouTuber”という言葉が誕生してから、コンピュータグラフィックスを用いたキャラクターを通して音楽やトークを配信するアーティストは増え続けている。そんな中、5月に波羅ノ鬼という女性ボーカリストが活動を開始した。彼女はCGキャラクターを通してTwitterやYouTubeでオリジナル曲やカバー曲を配信しているほか、バーチャルアーティストとしては異例の路上ライブも定期的に行っている。
音楽ナタリーでは波羅ノ鬼にメールインタビューを実施。インタビューを受けるのが初めてだという彼女に、音楽活動を始めたきっかけや路上ライブについて、さらに今後の目標までを語ってもらった。
取材・文 / 酒匂里奈
歌っているときは自分の気持ちをさらけ出せる
──まず始めに、自己紹介をお願いします。
初めまして。波羅ノ鬼です。あと何回か言っていいですか? ハラノオニです。ハラノオニです……。普段は路上ライブを中心にYouTubeやTwitterにオリジナル曲やカバー曲をアップしたり、イベントに出演させていただいたりしています。インタビューなんて初めてなので緊張します。よろしくお願いします。
──アーティストになろうと思ったきっかけはなんですか?
私は自分の気持ちを言葉にすることが得意ではなくて……。いつも自分の気持ちを押し殺して生きていました。でも幼い頃から歌うことが好きで、歌っているときだけは抑え込んでいた気持ちをさらけ出すことができたんです。歌うことで私の思いを伝えたり、「私はここにいるよ」と自分の存在を証明できる。だからアーティストとして歌を歌いたいと思いました。
──衣装は和と近未来が融合したような素敵なデザインですね。こだわりがあれば教えてください。
個人的には、この厚底の靴がお気に入りです。ツノのデザインになっていてカッコいい。
私が歌う理由
──9月22日に千葉・幕張メッセ 幕張イベントホールで開催されたイベント「DIVE XR FESTIVAL」に出演された際の感想を聞かせてください。MCではご自身の名前を何度も叫んでいましたね。
まさかあんなに大きな舞台で歌えるなんて、本当に夢のような時間でした。私はオリジナル曲の「余命宣告」を歌わせていただいたのですが、私が話す言葉やセリフ、歌の1つひとつに会場の皆さんが反応してくださって、それが本当にうれしくて、本当に楽しかった。どうしても私のことを少しでも覚えていってもらいたくて、何度も名前を叫んでしまいました(笑)。
──波羅ノ鬼さんの公式Twitterアカウントでは、フォロワーからリクエストがあったカバー楽曲が日々アップされています。カバーして印象に残った曲や歌っていて楽しかった曲、難しかった曲があれば教えてください。
どの曲も、歌うのは難しいです。この曲には一体どんな思いやストーリーがあるんだろうとか、どんな人が作ったんだろう、どうしてこの音なんだろうとか……いつも考えながらカバーさせていただいてます。私はアコースティックギターを始めてまだ数カ月で、本当にまだまだなんです。それでもTwitterのフォロワーさんたちはいつも温かいコメントをくださるので、本当に幸せです。いつも聴いてくださって、ありがとうございます!!
──オリジナル曲「余命宣告」についても聞かせてください。この曲はどういったメッセージを込めて歌われていますか?
この楽曲は私が歌う理由、私の証明になっています。自分に嘘をついて生きていく人はきっとたくさんいて。それは楽だけどすごく辛いことだと思うんです。私もそうだったから。だから「もうそんな偽りの自分なんて捨ててしまえ」というメッセージを込めた曲です。この記事で私のことを初めて知ったという人には、ぜひこの曲を最初に聴いてほしいです。YouTubeに上がっているミュージックビデオの映像と歌詞を一緒に観ていただけたらうれしいです。
──この楽曲のプロデュースは誰が行っているのですか?
閻魔Pさんという方です。つかみどころがない人で謎な部分も多いのですが、とてもお世話になってます。
ただ誰かに聴いてほしくて始めた路上ライブ
──波羅ノ鬼さんは5月から路上ライブを行っていますよね。バーチャルアーティストとしては異例の試みかと思います。路上ライブを始めようと思った経緯を教えてください。
ただ、誰かに私の歌を聴いてほしくて。私の思いや声を少しでも誰かに気付いてほしくて。だから路上で歌っています。
──お客さんの反応はどうですか?
ときどき、立ち止まって聴いてくださる方がいます。拍手をしてくださる方もいます。手を振ってくれたり、話しかけてくださる方もいます。そんな日はすごくうれしいです。本当に。またどこかでお会いできたらいいなと思います。
──路上でパフォーマンスをするうえで心がけていることはありますか?
私のことを少しでも知ってもらえるように、自己紹介を何度も何度も、繰り返すようにしています。あとはその場にどんな人がいるのか注意して見てパフォーマンスするようにしてます。手を振ってくれている方がいたら私も手を振ったり。ライブを観てくれている方とのやり取りを大事にしていますね。
夢は武道館ワンマン
──アーティスト活動を通して伝えたいことは?
悲しいことがあったり、本当の自分をさらけ出せずに周りに気を使って苦しんでいる人に、力強く一歩踏み出してみようと思ってもらえたらうれしいです。
──今後の目標や実現してみたいことを教えてください。
「第2回 アルテマ音楽祭」(6月に開催されたVRライブイベント)や「DIVE XR FESTIVAL」に出演させていただいて、今度は“私”のライブ、ワンマンライブをやってみたいと強く思いました。いつか日本武道館で、ワンマンライブをやってみたいです……!!! まだまだ全然力が足りていないけれど、憧れの舞台に立てるようにこれからも毎日精一杯歌い続けます! がんばります!
──最後に音楽ナタリー読者にメッセージをお願いします。
「このアーティストは誰?」と思われた方がきっとほとんどだと思います。もしよければこれをきっかけに、波羅ノ鬼のこれからを見守っていただけたらうれしいです。YouTubeにはカバー楽曲や、オリジナル楽曲をアップしています。Twitterでは毎日弾き語りの動画を投稿しています。よろしければぜひ、私にカバーしてほしい楽曲をリクエストしていただけたらうれしいです。お待ちしております。大切に歌わせていただきます。そして最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました!! 波羅ノ鬼でした。
ライブ情報
- 波羅ノ鬼 路上ライブ
-
2019年11月6日(水)東京都 秋葉原駅周辺
※詳細は随時波羅ノ鬼のTwitterオフィシャルアカウントにてアナウンスされる。