音楽ナタリー Power Push - 永積 崇(ハナレグミ)×野田洋次郎(RADWIMPS)

共鳴しあう魂──2人が語る「おあいこ」制作秘話

“野田街”の人たちの顔が見える

──この「おあいこ」という曲は、シンプルな言葉の中にすごく複雑な感情が詰め込まれていますよね。

永積 うん、1つのことを言ってるんだけど、ちゃんとその裏側も聞こえてくる。いびつな部分もあって当たり前でしょ、一言で切り取れることばかりじゃないでしょっていう、そんな気配を曲に宿せるのがすごいんです。例えば松本隆さんは自分が生まれ育った風景を“風街”として歌詞の中に落とし込んでるけど、洋次郎にもある意味“野田街”っていうのがあって、洋次郎の歌詞からはその街の中にいるたくさんの人たちの顔が見えるんですよね。すごく多面的にものを見てる。

野田 今まで2人で話してて感じた、崇くんの持ってる感覚を俺の言葉で表現して、それがさらに崇くんの声で歌われる。それによっていくつものレイヤーが重なって意味のあるものになりそうだなっていうのは思いましたね。

──じゃあもし野田さんが自分で歌うためにこの曲を書いていたら、もっと違うものになっていた?

「FUJI ROCK FESTIVAL '15」のFIELD OF HEAVENで7月24日に行われたハナレグミのステージにRADWIMPS・野田洋次郎がゲスト出演したときの様子。(ライブ写真撮影 / 久保憲治)

野田 そう思います。「抱きしめるふりして 抱きしめてもらってた / 愛するふりして 愛してもらってた」っていう最初の2行があるんですけど、これがもしRADWIMPSの曲だとしたら、その歌い出しから始めると、たぶん終わりは違うものになっていただろうと思うんです。もうちょっと何か結論めいたものを出してた気がする。でも崇くんが歌うなら結論は必要ないし、そのまま完結できるんじゃないかなと思って。

永積 なんか思い出しちゃうなあ。

野田 レコーデイングで歌いながら何行か変えたもんね。崇くんには結論じゃない途中の美しさを歌ってほしいと思って。人間はみんな途中だし、今回はそういう“たゆたう途中”をちゃんと歌にしたかったんです。

──2人の共同作業がいい化学反応を生んだんですね。

野田 俺が書いてるけど、やっぱり最終的にはハナレグミの曲だから、そのおかげでお互いどこかで無責任でいられるんじゃないですかね。いつもだったらブレーキをかけてしまうところを1歩も2歩も超えられる。一緒に何かをやるっていうのは、もしかしたらそういうことなのかもしれないです。

修学旅行に行ったあとぐらいの関係性

──もともと飲み友達だったという2人ですが、今回の共同作業を通じて今までの関係性が変わった部分はありますか?

永積 変わったのかな?

野田 修学旅行に行ったあとぐらいの感じかな。

永積 それ最高だね(笑)。

野田 一晩一緒に過ごすと、同じだけど、ちょっと違うじゃないですか。同じ冒険を共有したみたいな。そのレベルだと思うんですけど。

永積 同じ時間を過ごしたよね。やっぱりあのレコーディングは大きかった。

野田 いまだに3人で集まると、あのレコーディングの話になるからね。俺、郁子のコーラスのあまりのすごさに、思わず「結婚してください!」って言ってたもん(笑)。

永積 最後のほうは「お母さん」って呼んでたよね(笑)。

野田 そうそう(笑)。

永積 「俺、こういうお母さんが欲しかったー!」とか言い出して。

野田 「なんなんだ、この包容力は!」とか思って。

永積 で、郁子も洋次郎の言葉とか本当にすごいって言ってて。2人が共鳴しあってるのを見てすごくうれしいっていうか、この人たちには出会ってほしいと思ってたから本当によかった。これから先、自分が音楽を続けていく上で、その記憶がお守りになるんじゃないかなって思うくらい。

──有意義なレコーディングだったんですね。

永積 うん、でもまた洋次郎と会って飲むとベロベロになっちゃうんだろうけど(笑)。

野田 それがいいんでしょ、きっと(笑)。

左から永積 崇(ハナレグミ)、野田洋次郎(RADWIMPS)。

ハナレグミ ツアー情報

ハナレグミ弾き語りツアー「弾きが旅ばっ旅 ~2015 門出を祝して緊急ミーティング編~」

  • 2015年8月21日(金)東京都 キチム
  • 2015年8月22日(土)東京都 キチム

ハナレグミ弾き語りツアー「弾きが旅ばっ旅 ~2015 まだまだ行ってないとこで歌いたい!から緊急ミーティング編~」

  • 2015年9月7日(月)兵庫県 旧グッゲンハイム邸
  • 2015年9月8日(火)京都府 金剛能楽堂
  • 2015年9月22日(祝・火)岩手県 岩手県公会堂
  • 2015年9月24日(木)福島県 創空間 富や蔵
  • 2015年9月26日(土)山形県 山形県郷土館 文翔館 議場ホール
  • 2015年10月10日(土)鳥取県 Galeria大正蔵
  • 2015年10月12日(月・祝)島根県 松江イングリッシュガーデン
  • 2015年10月14日(水)岡山県 ルネスホール

ハナレグミ弾き語りツアー「弾きが旅ばっ旅 ~2015ホール編~」

  • 2015年10月31日(土)東京都 東京グローブ座
  • 2015年11月1日(日)東京都 東京グローブ座

ハナレグミ弾き語りツアー「弾きが旅ばっ旅 ~2015元キャバレー編~」

  • 2015年11月3日(火・祝)大阪府 ユニバース
  • 2015年11月4日(水)大阪府 ユニバース

RADWIMPS ツアー情報

RADWIMPS「RADWIMPS 2015年 国内ライブツアー」

  • 2015年11月4日(水)東京都 Zepp Tokyo
  • 2015年11月5日(木)東京都 Zepp Tokyo
  • 2015年11月9日(月)大阪府 Zepp Namba
  • 2015年11月10日(火)大阪府 Zepp Namba
  • 2015年11月16日(月)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2015年11月23日(月・祝)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2015年11月24日(火)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2015年11月25日(水)神奈川県 横浜アリーナ

※各公演ともゲストアクトあり。

ハナレグミ ニューアルバム「What are you looking for」2015年8月19日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
完全限定生産盤 豪華“手触りいいぜ”書籍仕様 ※色糸で綴った背がそのまま見えるコデック装 / 凹凸加工 / 全64ページ [CD+書籍] 4320円 / VIZL-862 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3240円 / VICL-64398 / Amazon.co.jp
収録曲
  1. Overnight trip to Chiang Mai
    [作曲:永積 崇]
  2. 祝福
    [作詞・作曲:YO-KING]
  3. 旅に出ると
    [作詞:大宮エリー / 作曲:永積 崇]
  4. フリーダムライダー
    [作詞:永積 崇 / 作曲:永積 崇、池田貴史]
  5. 無印良人
    [作詞:永積 崇 / 作曲:堀込泰行]
  6. 11Dandy
    [作詞・作曲:永積 崇]
  7. ぼくはぼくでいるのが
    [作詞:永積 崇、辻村豪文 / 作曲:辻村豪文]
  8. おあいこ
    [作詞・作曲:野田洋次郎]
  9. Oi
    [作詞・作曲:永積 崇]
  10. 金平糖
    [作詞・作曲:永積 崇]
  11. いいぜ
    [作詞・作曲:永積 崇]
  12. 360°
    [作詞・作曲:Cobhams Emmanuel Asuquo、Elemide Bukola / 日本語詞:永積 崇]
  13. 逃避行 ~よなよなおっぱじめ!! live ver.~
    [作詞:大宮エリー / 作曲:永積 崇]
ハナレグミ

ハナレグミ1974年東京生まれの永積 崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、そのおだやかな歌声が好評を得る。2005年9月には 東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催し、台風に伴う大雨にもかかわらず約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの東京・日本武道館公演を成功させる。2011年9月には5thアルバム「オアシス」を発表。2013年5月リリースのカバーアルバム「だれそかれそ」では多くの名曲をさまざまなアプローチで歌い上げ、ボーカリストとしての力量を見せている。2015年8月、野田洋次郎(RADWIMPS)、YO-KING(真心ブラザーズ)、池田貴史(レキシ)、堀込泰行(ex. キリンジ)、辻村豪文(キセル)、大宮エリーら、さまざまなアーティストが参加したニューアルバム「What are you looking for」をリリース。

RADWIMPS(ラッドウィンプス)

RADWIMPS2001年に野田洋次郎(Vo, G)が友人に誘われバンド結成。バンド名の「RADWIMPS」とは「カッコいい弱虫」という意味を持つ造語。2002年8月に「YOKOHAMA HIGHSCHOOL MUSIC FESTIVAL 2002」に出場してグランプリを獲得し、2003年7月にはアルバム「RADWIMPS」をインディーズからリリースするも、野田の受験を理由に活動休止。2004年3月に現メンバーで活動再開し、2005年11月にシングル「25コ目の染色体」でメジャーデビュー。2007年8月には神奈川・横浜アリーナでのワンマンライブも開催し、大成功を収めた。2009年3月に「アルトコロニーの定理」、2011年3月に「絶体絶命」、2013年12月に「×と○と罪と」とフルアルバムを発表。東日本大震災の発生直後には特設サイトを立ち上げ、以降毎年3月11日にYouTubeを通じて被災地復興の思いを込めた楽曲を発表している。2015年6月、野田の初主演映画「トイレのピエタ」の主題歌「ピクニック」をシングルとしてリリース。