蒼井翔太流のアイドル要素満載の1曲
atsuko 今回の翔太くんの「give me ♡ me」はさ、1期の「BAD END」と比べると、タイトルだけ見るとかわいいじゃないですか。ハートマークまで付いてるし。だから「BAD END」の対極のようにも見えるんだけど、曲を聴くと引き続き攻めていますよね。
蒼井 はい。攻めの部分は継続なんですけど、これも制作サイドの方から……。
atsuko なんて言われたの?
KATSU 気になるよね。そっちはなんて言われたの?
蒼井 「BAD END」のときと同じく「作品に縛られなくていい」と言ってもらえたんですけど、今atsuko姐さんが「対極」とおっしゃったように、「BAD END」がかっこいい男性的な楽曲だとしたら「give me ♡ me」はちょっとかわいらしくガーリーにしてみたくて。
atsuko ああー、確かにMVも中性的ですね。
蒼井 そうなんですよ。「BAD END」では「俺のモノになればいい」とジオルドの強引な愛を歌っていたのに対して、「give me ♡ me」はタイトル通り「愛をください」っていう。それプラス、僕はアイドルグループが大好きなので、そのテイストも盛り込みたくて。第2期は登場人物も増えてカタリナを中心とした渦もより大きくなっていくので、そのスパイラル感とロイヤル感をデジタルサウンドに落とし込みつつ疾走感のあるダンスチューンに仕上げた、蒼井翔太流のアイドル要素を詰め込んだ1曲でございます。
atsuko それ聞いて、ちょっとびっくりしました。
蒼井 だからMVでも、僕が特に好きな某アイドルグループをリスペクトして、ダンスに横揺れを入れてるんですよ。こうやって(横揺れしながら)。
atsuko サビのところね(笑)。MVで気になったんだけど、バックダンサーの方たちが常にどちらかの手で口元を隠しているじゃないですか。
蒼井 さすがatsuko姐さん、よくお気付きで。
atsuko ずっとこうやってて(バックダンサーの振り付けを真似ながら)。
蒼井 やっぱり1つの画角に何人もいてしまうと、今のご時世だとみんなを心配させてしまうんじゃないかって。かといってマスクをしてダンスをするのもおつらいので、ダンサーの皆さんには口を閉じつつ手で覆ってもらうという振りを付けてもらったんです。
atsuko 本当に? まさか飛沫防止じゃないだろうと思ったんですけど……。
蒼井 完全に飛沫防止です。
atsuko すごい。
KATSU 時代を捉えるという意味でもすごいよね。例えば5年後、10年後にこのMVを観た人が「なんでみんな口を押さえてるんだろう? あ、そうか2021年は……」みたいに思ったら、そこでも作品として完成する。そしてMVとジャケ写の翔ちゃん、めっちゃギャルやな。
蒼井 ビジュアルでも何か面白いことがしたくて、僕自身のビジュアルも少し寄せてしまおうと(笑)。
♡と♥でシンクロした
──たびたび「プロのジオルド」という言葉が出てきますが、「give me ♡ me」を歌うにあたり、蒼井さんの中でジオルドと蒼井翔太の配分みたいなものはあるんですか?
蒼井 ああー。もちろん「BAD END」でも「give me ♡ me」でもジオルドの気持ちも込めつつ歌ってはいるんですけど、僕はその配分が苦手で、ともすれば100%ジオルドの歌になってしまいがちなんですよ。なのでジオルドとしてアニメ本編で精一杯演じて、エンディングは蒼井翔太として歌うことで次回のお話につなげたい。そういうスタンスで臨みました。ただ「BAD END」に関しては、歌詞にあるような強引さは自分にはないというか、僕は「俺に付いて来い」じゃなくて「付いて行きます」みたいなタイプなので。
KATSU いい人だ(笑)。
蒼井 そこはジオルドに力を貸してもらった部分がありました。逆に今回の「give me ♡ me」は、さっきも言ったようにガーリーな要素も盛り込んだより自由度の高い曲なので、100%蒼井翔太で歌っているつもりでございます。
atsuko そこは声優さんならではというか、どこまでキャラを意識するかみたいなことは、私は経験したことないなって思いました。
KATSU 俺も思った。プロのジオルドだから楽曲に挑みやすいのかなと思いきや、そう単純な話でもないんだなと。
atsuko 逆に、キャラソンだったらゴリゴリのジオルドで行けるわけでしょ?
蒼井 はい。ゴリゴリのプロのジオルドで。
KATSU ゴリゴリのプロのジオルド(笑)。
atsuko あとさ、「BAD END」も「give me ♡ me」もめちゃくちゃキーが高いじゃないですか。これは自分で設定してるの? 例えば、原曲に対して「あと3つ上げてもらえますか?」みたいなことを言ったり。
蒼井 いや、原曲のキーのまま歌っています。最近、そのキーが高めなんですけど。
KATSU 「キーを下げてください」って言ったことある?
蒼井 ありますけど、下げるとだいたいしっくりこないんですよ。例えば最初に原キーで歌ってから、試しに1つ下げて歌わせてもらったりすると、ディレクターさんたちの反応があんまりよくなくて(笑)。
atsuko あるある(笑)。下げると確実にキラキラ度が落ちるんですよね。
蒼井 そうなんですよ。僕としては、キーを下げたのを歌い終わって2、3秒みんな無言だったら「これは原キーだな」と(笑)。特に今回はアイドルっぽい曲なので高いほうがハマりますし。アイドルっぽいといえば、タイトルの表記も悩んだんですよ。どうすればよりよりアイドルっぽくなるか。
atsuko そこ大事ですよね。
蒼井 悩んだ末に「♡」を「love」と読ませることにしたんですけど、「アンダンテに恋をして!」の歌詞カードを読んだら……atsukoさんも同じことをしてますよね?
atsuko ああ! 「I ♥アイスクリーム」!
蒼井 いえーい!
atsuko いえーい!
蒼井 シンクロしましたね。
atsuko まあ、お互いに「ハートマークを使いましょう」って示し合わせていたんですけどね。
蒼井 ちょっ!? 「シンクロ」言うてるのに(笑)。
atsuko 冗談です(笑)。本当に偶然で、私もびっくりしましました。
蒼井 やっぱり作品自体も第1期でドタバタの地盤ができて、第2期から「love」のほうにもシフトしていくので、それを象徴しているのかなって僕は思いました。
ニュートラル蒼井翔太
──「give me ♡ me」のカップリング曲の1つ「Baby Steady Go!!」は、ゲーム「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった... 〜波乱を呼ぶ海賊〜」のオープニングテーマなんですね。
蒼井 はい。
KATSU 俺、こういう曲好き。明るくて元気が出る。
蒼井 ありがとうございます。ゲームのサブタイトルにある「海賊」というワードから、水平線の向こうを目指して大海原を航海するようなワクワク感が僕の中に湧き上がってきたので、作家さんに「とにかくワクワク感を詰め込みたい」とお願いしまして。もちろんゲーム版「はめふら」のタイアップ曲なんですけど、何か新しいことを始めようとしている人や、一歩踏み出したいのにあとちょっと勇気が出ない人の背中を押せるような楽曲にもなるんじゃないかなと。
atsuko うんうん。
蒼井 つい最近、Twitterでも書いたんですけど(参照:蒼井翔太 (@shouta0811aoi) | Twitter)、人間って不思議なもので、「できない」と思った瞬間からできなくなるんですよね。逆に「できる」と思えばその瞬間から、スピードはゆっくりでも目的に向けてちょっとずつ前進しているんだと実感したことがあって。「Baby Steady Go!!」の歌詞にも「可能性は不可能と隣り合わせ」とあるように気持ちはどっちにでも転んでしまうけれど、やりたいことがあるならあきらめる必要なんてないし、自分に正直でいたい。きっとみんなもそうだろうし、そうあってほしい。そういう思いを込めて歌いました。
──楽曲も歌声もまっすぐで、とても清々しいですね。
蒼井 僕にとって、この「Baby Steady Go!!」 の歌い方はすごく新鮮だったんです。声に色が付いていない感じがして。例えば和ロックとかだったらそれっぽい節回しになったり、僕はけっこう楽曲の影響を受けやすいタイプなんですよ。でも「Baby Steady Go!!」は、それこそ今ここから航海に出るような心境で歌えたので「もしかしたらこれが僕の素の歌い方なのかな?」みたいな感覚もありました。
atsuko ニュートラル翔太くんだね。
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