ナタリー PowerPush - ゴスペラーズ

最新作「STEP FOR FIVE」メンバーのフィーチャー曲を徹底解説

「2080」のコンセプトは未来の80年代

──アルバムの中でまず最初に登場するソロフィーチャー曲は3曲目、酒井さんの「2080」。キラキラ感のあるサウンドが印象的な80's的ナンバーです。

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酒井 80年代の音楽、特にアメリカの曲ってなんでこんなに明るいんだろうって思ったところからスタートしました。自分が聴いて育ってきたあの頃の感じを出せたらなと。コンセプトとしては未来の80年代。仮タイトルは「未来80's」でした。

──あ、だから「2080」なんですね。

酒井 そうなんです。80歳まで20本の歯を残そうっていう運動のことではないんですよ。

黒沢 歯は大事だけどね。

村上 そう思う人もいるかもしれない。

黒沢 だからサウンドがキラキラしてるんだね、みたいな(笑)。

酒井 俺に話させてよ(笑)。で、最近は80'sの音を現代風な解釈でやっているバンドがいたりもするので、そこを着地点にしようと。アレンジを年下の江上(浩太郎)くんにお願いしたのも、80'sに対して感覚の違う人とやってみたかったからなんです。

──いい意味での感覚のズレが生み出す化学反応に期待したわけですね。

酒井 80'sを完璧に再現できる巨匠とやるっていう選択肢もあったとは思うんですけどね。でも、当時を知りすぎてない人とやることで、得体の知れないものができて良かったと思います。曲順的にも、頭の「STEP!」とか黒沢のソロとか、ズビャーっとした80's感のあるシンセを使うという部分でまとまる感じにもなったので、アルバムの頭のパンチにはなったと思いますね。

黒沢 うん。いわゆるハーモニーっていうものを考えたときに出てくるサウンドではないからね。アルバム序盤としての統一感が出てる気はします。

マイケル・ジャクソンのトリビュートソング「CLASH」

──続いての曲が、そんな黒沢さんのソロ「CLASH」。これはもうマイケル・ジャクソンへの愛が随所に詰め込まれた楽曲ですね。

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黒沢 はい。これは元々持っていた曲だったんですけど、今回ソロをフィーチャーした曲をやるとなったときに、マイケル・ジャクソンのトリビュートソングとして仕上げるのはどうかなというアイデアが浮かびまして。だったら日本におけるマイケル・ジャクソン研究の第一人者である友人の西寺郷太くんにプロデュースをお願いしようと。

──納得の人選だと思います。

黒沢 でしょ。ミーティングを重ねる中で、本当にいろんなアイデアが出てきて。途中、NEW EDITIONみたいに他のメンバーが一言ずつ出てくるのも郷太くんの提案で。結果的に、盛り上がっている僕を他のメンバーが止めるという新しい構図が生まれた曲になりました(笑)。

──歌詞の内容的に、他のメンバーの声が入る必然性がちゃんとあるんですよね。

安岡 そうそう。歌詞の物語性がしっかりしてるからいいんですよ。

黒沢 そもそもマイケルの歌詞は物語性のあるものが多いからね。そこをちゃんとイメージして郷太くんに書いてもらいました。この曲はライブ映えすると思うんですけど、汗だくになりそう。歌入れのときもだっくだくだったからね(笑)。

北山 踊りに関しても今からイメージトレーニングばっちりみたいなんで、ぜひ期待しててください。

黒沢 イメトレだけはできてます。具現化できるかどうかは別問題ですけど(笑)。

北山曲ならではのイントロの長さ「astro note」

──北山さんは「astro note」というロマンチックな曲を手掛けました。

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北山 これは作曲にクレジットされている池田(陽介)くんが「ゴスペラーズに歌ってもらえたらうれしいです」って持ってきてくれた曲なんですよ。で、それを僕が「こうしたほうがもっと良くなるんじゃない?」って半分くらい書き直したもので。ソロのライブで歌ったことがあるんですけど、もしゴスペラーズとしてやったらどうなるのかなっていう興味があったので今回やってみました。まあでも僕が1人で歌い切って、他のメンバーにコーラスをお願いする形になったので、気持ち的には“どソロ”な感覚ではありますね。

村上 イントロが長いっていうのが北山っぽさだよね(笑)。アカペラを作らせると短いのに、イントロはどうしてそんなに長いんだっていう。

北山 アレンジャーさんには何もオーダーしてないんですけどね。上がってきたらそうなっていて、僕の好みなんで全然OKですっていう。

安岡 アルバムの曲順を決めるときって、それぞれの曲の頭と終わりの30秒くらいをつなげて聴くんですけど、北山の曲だけ声が出てきませんでしたからね(笑)。

黒沢 だからサウンド感だけで並びを決めたっていう(笑)。

──でも、あの長いイントロがあってこそですよね。それがあることで曲の世界観にグッと引き込まれていく感じがあります。

北山 そうなんですよね。イントロの機能ってまさにそういうことだと思うんですよ。僕が歌い出すまでに、ちゃんと曲の世界に塗り替えてくれる感じがして。アレンジャーの岸(利至)さんに頼んでほんとに良かったと思います。

ニューアルバム「STEP FOR FIVE」 / 2012年11月7日発売 / Ki/oon Music
ニューアルバム「STEP FOR FIVE(初回限定盤)」[CD+DVD] / 4000円 / Ki/oon Music / KSCL-2143~2144
ニューアルバム「STEP FOR FIVE(通常盤)」[CD] / 3100円 / Ki/oon Music / KSCL-2145
CD収録曲
  1. STEP!
  2. It's Alright ~君といるだけで~
  3. 2080
  4. CLASH
  5. 真夏の夜の夢
  6. Love me! Love me!
  7. astro note
  8. Your Hero
  9. Soul Song Juke
  10. ギリギリSHOUT!!
  11. BRIDGE
初回限定版DVD収録内容
  • マイケル鶴岡先生の「STEP!」振付講座
  • マイケル鶴岡先生の「ギリギリSHOUT!!」振付講座
ゴスペラーズごすぺらーず

北山陽一、黒沢薫、酒井雄二、村上てつや、安岡優の5人からなるボーカルグループ。1991年、早稲田大学のアカペラサークル「Street Corner Symphony」内で結成され、1994年にシングル「Promise」でメジャーデビュー。シングル「永遠に」「ひとり」が立て続けに大ヒットを記録し、トップアーティストの仲間入りを果たす。毎年精力的に全国ツアーを行う一方、他アーティストへの楽曲提供・プロデュースやソロ活動なども活発に行っている。2012年11月7日、約1年5カ月ぶりとなる最新フルアルバム「STEP FOR FIVE」をリリース。11月16日からは全国ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2012~2013“FOR FIVE”」を開催する。