「交換日記」はかなり特殊な作り
──千野さんが書き上げた歌詞を読んだときは、どう思われました？
住野 感動しました。しっかり感想を送ろうと思ったんですけど、まずすぐ担当さんに「『マジで素晴らしいです』とお伝えください」とお願いしたんですよ。それが率直な気持ちだったので。
千野 うれしいです（笑）。
住野 交換日記に書いたことをすべて取り入れてくださっているのも素晴らしいし、ファンとしては別の解釈もできるというか。15周年というタイミングでもあるし、ライブで「今日この日を迎えたこと 今日も一緒にいれること 特別よりも大切な 当たり前になれたこと」と歌われると泣いちゃうだろうなと思ったんですよね。この男女の物語としての楽しみ方だけではなく、GOOD ON THE REELが好きな自分にとっての感動も与えてくれる歌詞ですね。
千野 なるほど。そういう解釈もできるのかも。
住野 「一度は離しかけた手を 繋いで今立っている」もそうですね。長く活動していると、バンドの曲を好きで聴いてくれていた人や、小説を読んでくれていた人が離れる時期もあると思うんです。
──「前はよく聴いていたけど、最近のアルバムは聴いてない」みたいな。
住野 ええ。でも、離れていた人が戻ってくることもあって。そういう人にとって「一度は離しかけた手を」という歌詞はすごく実感できるんじゃないかと思うんですよ。
──しかもハッピーエンドの歌詞ですからね。「交換日記」の作曲は岡﨑広平（Ｇ）さん。すごくポップな仕上がりですね。
千野 そうですね。僕と広平と（伊丸岡）亮太（G）で曲を出し合ったんです。「明るめでキャッチーな曲がいいね」という話をしていて、広平の楽曲が採用されることになりました。一般的なAメロ、Bメロ、サビという構成ではなくて、かなり特殊な作りになってるんです。最初はメロディが全然覚えられなくて、だいぶ苦労しましたね。歌を録る前日まで歌詞とメロディの合わせ方を考えていたし、レコーディング当日もいろいろ試して。
住野 確かに口ずさむの難しいかも（笑）。
千野 そうなんですよ（笑）。自分としては、すごく新しい感じの曲になったなと思ってます。
物語を読むように楽しんでもらえたら
──「交換日記」のMVの監督はテレビドラマ「左ききのエレン」の監督でチーフプロデューサーを務めた後藤庸介さん。GOOD ON THE REELは「左ききのエレン」のエンディングテーマ「あとさき」を手がけていますね。
千野 今までにない感じのMVになりましたね。後藤監督とはドラマのエンディングテーマを制作するときも熱いやり取りをして。このタイミングでぜひ一緒にやりたかったので、声をかけさせてもらいました。僕らと住野さんが作った「交換日記」を、また違った角度から映像化してくれたというのかな。いいコラボレーションになったと思います。
住野 素晴らしいですよね。最初にMVを観たとき、泣いちゃいました。
千野 演技がすごいんですよ。僕らも撮影現場にいたんですけど、女の子が泣くシーンをモニターで見ていて、僕もマネージャーも泣きそうになって。セリフはないんですが、すごく悲しそうな表情で……「そんな顔をさせてしまって、ごめんね」と思いました（笑）。
──交換日記を書くところからはじまり、曲につながり、新しい映像表現も生まれ。意義深いコラボレーションになりましたね。
住野 本当によかったです。初めての試みに不安もあったんですけど、こんなにいい曲になって。「交換日記」で描かれた2人の物語が、聴く人の心に沁みついていくのもうれしいですね。
千野 そうですね。この曲を聴いてくれた人が共感したり、それぞれの思い出と重ねることで、新しい物語が生まれたらいいなって。僕自身もすごくいい経験になりました。普段とは明らかに違う書き方だったし、新しい表現ができたと思うので。
住野 それは僕も同じですね。今回は自分の企画ではないし、楽曲制作に混ぜていただく形だったので、いつも以上に緊張感があって。コロナ禍になってからは担当の編集者さんと会うことも少なくなって、ずっと家で小説を書いてたんですけど、どうしても緊張感がなくなる部分もあったんですよね。今回の企画は「最後に曲になる」というゴールを見据えていたし、千野さんが書いてくれたものに対してどう返すか、どう展開させるかをめちゃくちゃ真剣に考えて。そういう緊張感を与えてくださったこともありがたかったですね。
──住野さんにとっても刺激的な時間だったんですね。
住野 すごく刺激的でした。もともと小説を書くのが趣味だったので、1人でずっとやってると仕事だってことを忘れちゃいそうになるんですよ（笑）。書くことの緊張感を取り戻せたことはすごく大きいし、この先の僕の作品にもいい影響があると思います。GOOD ON THE REELファンの皆さんの反応は気になりますけどね。この企画が発表されたとき、「千野さんと住野よるの交換日記？」とツイートしている方がいて（笑）。
千野 ニュースだけ見ると「え？」となりますよね（笑）。
住野 しかも男女の交換日記ですからね。僕もGOOD ON THE REELのライブには何度も足を運んでいるし、ライブハウスですれ違っていたかもしれないファンの方に自分が書いたものを読んでもらえてるかもと思うと緊張します（笑）。
千野 ははは（笑）。「ワンマンライブは気が楽だけど、対バンに呼ばれるときは緊張する」みたいな感覚と同じかも。住野さんのおかげでいい作品になったし、物語を読むように「交換日記」を楽しんでもらえたらうれしいです。
──6月9日には「交換日記」と「あとさき」が収録されたニューアルバム「花歌標本」がリリースされます。
住野 ひと足先に聴かせていただいたのですが、素晴らしかったです。僕が「花歌標本」から受け取ったのは、「あなたの人生すべての時間が素晴らしいだけではないだろうけど、ここで一緒にいられるのは素晴らしいよね」ということで。千野さんが意識していたかは別にして、この時代、このご時世の中で歌ってほしいことが詰まっているなと。
千野 僕自身もこのご時世を生きているし、意識せずとも、この時代の影響は出ていると思います。今回のアルバムは“1対1”“私とあなた”という近い距離をイメージして作った曲が多くて。そのテーマ自体も、今の時代の影響かもしれませんね。
ツアー情報
- GOOD ON THE REEL 2021 TOUR「HAVE A "GOOD" NIGHT vol.91-99 ～ハナウタツアー～」
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- 2021年6月11日（金） 宮城県 仙台MACANA OPEN 18:30 / START 19:00
- 2021年6月13日（日） 北海道 BESSIE HALL OPEN 17:30 / START 18:00
- 2021年6月19日（土） 千葉県 千葉LOOK OPEN 17:30 / START 18:00
- 2021年6月23日（水） 新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE OPEN 18:30 / START 19:00
- 2021年6月25日（金） 愛知県 ElectricLadyLand OPEN 18:30 / START 19:00
- 2021年6月26日（土） 大阪府 BIGCAT OPEN 17:00 / START 18:00
- 2021年7月9日（金） 広島県 広島セカンド・クラッチ OPEN 18:30 / START 19:00
- 2021年7月10日（土） 福岡県 THE Voodoo Lounge OPEN 16:30 / START 17:00
- 2021年7月14日（水） 東京都 新宿BLAZE OPEN 18:00 / START 19:00
- GOOD ON THE REEL「交換日記」
- 2021年4月28日配信開始 / lawl Records / Universal Connect / Universal Music Artists
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[配信]
- 収録曲
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- 交換日記
- GOOD ON THE REEL「花歌標本」
- 2021年6月9日発売 / lawl Records / Universal Connect / Universal Music Artists
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初回限定盤 [CD+DVD]
税込4400円
POCE-92118 -
通常盤 [CD]
税込3300円
POCE-12164
- CD収録曲
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- あとさき
- 交換日記
- 虹
- ノーゲーム
ほか計10曲
- 初回限定盤DVD収録内容
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配信ライブ「スノードームの内側より」ダイジェスト映像
- GOOD ON THE REEL（グッドオンザリール）
- 2006年に結成された5人組バンド。千野隆尋（Vo）、伊丸岡亮太（G）、岡﨑広平（G）、宇佐美友啓（B）、高橋誠（Dr）からなる。バンド名は“なんか良い感じ”という意味を込めて付けられた。2016年に東京・日比谷公園大音楽堂（日比谷野音）で自主企画ライブ「HAVE A "GOOD" NIGHT」を成功させた。2019年にレーベル・lawl recordsを立ち上げ、ユニバーサルミュージックアーティスツ合同会社とパートナーシップ契約を結んだ。同年9月にセルフカバーベストアルバム「GOOD ON THE REEL」を発売。2021年3月に結成15周年を迎えた。同年6月にオリジナルアルバム「花歌標本」をリリースする。
- 住野よる（スミノヨル）
- 小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿していた「君の膵臓をたべたい」が話題を集め、同作で2015年にデビュー。以後、「また、同じ夢を見ていた」「よるのばけもの」「青くて痛くて脆い」「麦本三歩の好きなもの」「この気持ちもいつか忘れる」などを発表。「君の膵臓をたべたい」は2017年に実写映画化、2018年にアニメ映画化され、「青くて痛くて脆い」も2020年に映画化された。
