辞めようかなとも思っていた
──金廣くんの手術前後で録った曲が分かれてるんですか?
金廣 そうです。手術前が「花火」「ダンスダンスダンス」「風と鳴いて融けてゆけ」「フライデイナイト」「アンカーズアウェイ」ですね。
──「ダンスダンスダンス」のボーカルは粗さを逆に生かしてるなと思って印象的だったんですけど。
金廣 「ダンスダンスダンス」は、「バリバリ、ポリープです!」っていう声を生かしちゃおうと思ったんです。逆に「フライデイナイト」や「アンカーズアウェイ」はすごくきれいに録れてるし、いいあんばいだと思いますね。歪んでる歌もあればきれいに歌えてるものもあって。
──ポリープはずっと患っていたと思うんですけど、どこかのタイミングでメスを入れなきゃいけないと思ってたんですか?
金廣 いや、正直そこまで考えてなかったです。
──うまく付き合っていこうと?
金廣 ボーカリストはポリープや結節を抱えてる人が少なくないと思うんですけど、僕はなかなか手術しようとは思わなくて。でも、去年の8月くらいに本当に声が出なくなっちゃったんです。調整はできないこともないけど、ポリープと結節が両サイドにあるから、どちらかが腫れると喉の振動が止まっちゃうので。これは手術しないと無理だと。ちょうど前作のツアー後に休みをもらう予定だったんですね。短期間でアルバムを作り続けているので、歌詞の表現方法とか似通ってきていて、これでいいのかな?という疑問もあって、それで休みをもらうことになっていたんです。そこに合わせて手術しようと思って。
──当然だけど、かなり不安だったでしょう。
金廣 めっちゃ不安でした。今年の4月くらいはかなり情緒不安定でしたね。
──荒れていた。
金廣 かなり荒れてました。イライラして、悪口ばっかり言ってましたね。
──誰の?
金廣 メンバーの。
──直接言ってたんですか?
金廣 直接は言ってなかったです。事務所の社長にぶつけたりして。今まであんまりそういうことはなかったんですけど、なんならバンドを辞めようかなとも思ってました。今思うと、どんどん悪いほうへ、悪いほうへ向いてましたね。
──喉のことだけではなく、バンドの状況についてもイライラしていたんじゃないですか?
金廣 そう、全部が悪い状況だったので、イライラしまくってましたね。そういう状態でレコーディングしていて。「なんで喉が悪い状態でレコーディングしなきゃいけないんだよ」とも思っていたし。全部の不満が溜まって、イライラして。実際、そういう精神状態は曲にも表れてるし。「ダンスダンスダンス」なんかはイライラしながら歌詞を書いてましたね。
──シニカルな曲ですよね。「踊ろう」って言いながら「死ね」って言ってるような歌詞ですよね。「皆で楽しく踊って生きましょう」とも歌ってるけど、それも皮肉でしかない。
金廣 そう、「死ね」「死のう」って言ってます。
──それをいかにも邦楽ロック然とした四つ打ちのサウンドで歌ってるのもシニカルだなと。
金廣 そういうバンドなんだな、そういう人生なんだなと思ってたんですよね。特にマイナス思考な時期でした。
──そういうバンドというのは?
金廣 ロックを鳴らしたいけど、こういうサウンドを鳴らさなきゃいけない、みたいな。
──ああ、クリシェを求められるシーンのレースの中にいるみたいな。
金廣 そうそう。そういうことにもイライラしてしまっていて、よくないなと思ってたんですけど、そこからどうしても抜け出せなくて。でも、「風と鳴いて融けてゆけ」ができて、けっこうスッキリしたんですよ。
──これはシンプルなギターロックでとてもいい曲ですよね。結局、音楽で解決するしかなかったんでしょうね。
金廣 そう、自分で曲を書いて解決するしかなかった。この曲ができるまではどうしようもなかったですけどね。もともと感情表現が苦手な自分を音楽で解放してきたと思うので。曲を作って自分をいい方向へ導けたのはよかったですね。
最悪の自分を救う曲ができた
──ちなみに1曲目の「ハルカカナタ」はいつ頃できたんですか?
金廣 これは手術後ですね。
──前を向いてますもんね。
金廣 うん、前を向いてます。例えば「フライデイナイト」はまだ暗いほうを向いてるんですけど。
──孤独って感じだよね。
金廣 そう。「アンカーズウェイ」の歌詞は「風と鳴いて融けてゆけ」のあとにできたので、希望に寄っていて。
──そうやって明暗が分かれている曲が共存しているのもアルバムの熱量になってると思うんですよね。
金廣 僕もそう思いますね。「風と鳴いて融けてゆけ」を作って、いい自分と悪い自分の中間を俯瞰で見れた気がするんですよね。だから、この曲を書いて救われたように思います。ディレクターには「幸せになるな」って言われてますけど。「ハッピーな曲なんて誰が聴くか」って(笑)。でも、最悪の自分を救う曲ができて本当によかった。
──ペギくんは金廣くんの混沌とした状況をどう見ていたんですか?
ペギ そんな感じになってるとは思わなかった。今初めて聞いたくらいで。
金廣 メンバーには言わなかったので。
──金廣くんの喉のこと以外のイライラって、いい曲を作っている自負はあるのに伝わらないというジレンマによるものだと思うんですね。いい曲が書けないからバンドが葛藤を覚えてるわけじゃないから、余計にイライラするっていう。ペギくんはそういうことも踏まえて積極的な発言をしてるんじゃないかと思うんですけど。
ペギ そこは考えてることがあって。ずっといい曲であり、いいアルバムを作ってるし、それを続けていれば多くの人に認めてもらえると思ってるんですよ。それは絶対的に。でも、うまくいかない。むしろ自分が全然いいと思わない曲が世の中に届いてる現実を理解できない。「じゃあ、もしかしたら俺たちがいいと思ってる曲はいい曲ではないのか」と思うこともあります。でも、そのうえで俺たちがいいと思う曲をもっともっと突き詰めて作りたいと思うんですよね。だから、自分たちの武器ともっと向き合って演奏やコーラスの魅力を押し出したいと思ったし。やっぱり「風と鳴いて融けてゆけ」はすごくいい曲だと思うし、これがいい曲だと認めてもらえる日が来ると俺は信じているので。
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自己満足で終わるような内容じゃないと自負
- グッドモーニングアメリカ
「502号室のシリウス」 - 2017年10月4日発売 / 日本コロムビア
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初回限定盤 [CD+DVD]
3600円 / COZP-1379~80 -
通常盤 [CD]
3000円 / COCP-40117
- CD収録曲
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- ハルカカナタ
- 花火
- ダンスダンスダンス
- 風と鳴いて融けてゆけ
- あなたの事だよ
- The Sheeple
- 煙に巻かれたい
- フライデイナイト
- アンカーズアウェイ
- 星は変わらない
- ハブーブの後に
- She's...
- 初回限定盤DVD収録内容
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オフィシャルファンクラブ「グドモクルー」限定LIVE「今宵会」SHIBUYA TSUTAYA O-Crest 2017.8.1
- そして今宵は語り合おう
- 2014年6月25日我思ふ
- 春が迎えに来るまで
- 下らない毎日が
- たった6文字じゃ
- STAY WITH ME
- 世界終わらせないで
- ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ
- 言葉にならない
ライブ情報
- 八王子天狗祭2017
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- 2017年11月11日(土)
東京都 エスフォルタアリーナ八王子
OPEN 10:00 / START 11:00 - 出演者 グッドモーニングアメリカ / a flood of circle / 175R / COUNTRY YARD / Gacharic Spin / ゴールデンボンバー / 四星球 / Halo at 四畳半 / 04 Limited Sazabys / POETASTER / フラチナリズム / BRADIO / MAGIC OF LiFE / Rhythmic Toy World / 忘れらんねえよ / and more
- 2017年11月11日(土)
- グッドモーニングアメリカ「502号室のシリウスツアー」
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- 2017年12月15日(金)千葉県 千葉LOOK
- 2018年1月13日(土)京都府 KYOTO MUSE
- 2018年1月14日(日)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
- 2018年1月20日(土)東京都 八王子Match Vox
- 2018年1月21日(日)神奈川県 横浜BAYSIS
- 2018年1月27日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2018年1月28日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2018年2月3日(土)岡山県 IMAGE
- 2018年2月4日(日)静岡県 HAMAMATSU FORCE
- 2018年2月10日(土)福岡県 LIVE HOUSE CB
- 2018年2月11日(日・祝)広島県 CAVE-BE
- 2018年2月12日(月・祝)香川県 DIME
- 2018年2月18日(日)北海道 BESSIE HALL
- 2018年2月24日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2018年2月25日(日)群馬県 前橋DYVER
- 2018年3月3日(土)長野県 ALECX
- 2018年3月4日(日)石川県 vanvanV4
- and more
- グッドモーニングアメリカ
- 金廣真悟(Vo, G)、渡邊幸一(G, Cho)、たなしん(B, Cho)、ペギ(Dr, Cho)からなる4人組バンド。2001年に前身バンドfor better,for worseを結成し、2007年より現在のバンド名に変更。for better,for worse時代は英語詞だったが、バンド名変更を機に日本語詞へと切り替え、サウンドもよりポップさを増す方向へ転換した。2008年より現在の編成で活動を開始し、自主企画の開催や作品のリリースを積極的に行う。2012年冬には初のワンマンツアーを成功に収め、2013年5月に1stフルアルバム「未来へのスパイラル」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。2014年5月にはテレビアニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマに採用された「拝啓、ツラツストラ」をシングルとしてリリースした。同年10月に2ndフルアルバム「inトーキョーシティ」を発表し、2015年8月にテレビアニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」のエンディングテーマ「ハローハローハロー」をシングルリリース。今作よりコロムビア内のロックレーベル・TRIADに移籍した。10月には3rdフルアルバム「グッドモーニングアメリカ」を発表。11月に初の東京・日本武道館単独公演を行った。2016年1~4月にワンマンツアー「グッドモーニングアメリカ TOUR 2016」を実施し、11月には地元・八王子で主催イベント「八王子天狗祭2016」を成功させた。12月に4thアルバム「鉛空のスターゲイザー」をリリース。同作のレコ発ツアー終了後より金廣の声帯ポリープ摘出手術に伴い、3カ月間ライブ活動を休止する。2017年7月に活動を再開し、10月にニューアルバム「502号室のシリウス」を発表した。