音楽ナタリー Power Push - グッドモーニングアメリカ
渾身のアルバム携え武道館へ “育ての親” O-Crest店長・室清登と辿るグドモの歩み
11月27日にキャリア初の東京・日本武道館ワンマン公演を開催するグッドモーニングアメリカ。バンドにとっての大きな挑戦を1カ月後に控えた10月28日に、彼らは3rdアルバム「グッドモーニングアメリカ」を発表する。
今回音楽ナタリーでは、セルフタイトルが冠されたグドモ入魂の1枚を特集するにあたり、メンバーとTSUTAYA O-Crestの室清登店長の対談をセッティングした。「バンドが育った場所」とメンバーが公言するCrestでの思い出話から新作「グッドモーニングアメリカ」、そして1カ月後の武道館公演に至るまで、2組はバンドの歩みをじっくりと辿った。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 小坂茂雄
ライブをするたびに相談に乗ってもらってた
──まずは、グッドモーニングアメリカと室さんの出会いからお聞かせください。
室清登 最初は幸ちゃんだよね? 2007年くらい?
渡邊幸一(G, Cho) そうっすね。僕らずっと八王子を拠点に活動していたんですけど、友達のバンドが渋谷でライブをやり始めたって聞いて、彼らのライブを観るために初めてO-Crestに遊びに来たんです。「都会のハコってどんな雰囲気なんだろう」って興味津々だったんですけど、ライブを観ながら「いいライブハウスだな」って思った。そのあとに、友達に室さんとつないでもらいました。
室 Crestでバイトしてたロッキーってヤツがつないでくれたんだよね。そのときにCDをもらって初めてグドモの曲を聴いたんだけど、「曲がめちゃくちゃいいな」と思った。それで「ぜひライブをやりましょう」って。でも最初のうちはライブをやってもお客さんが1人とか2人とかだった。当時、歌詞を英詞から日本語詞に変えたタイミングだったりもして、ライブのやり方が定まっていない、ふわっとした感じだったのかな。「ノルマもあるしどうしよう」っていうところから始まった感じでね。
金廣真悟(Vo, G) そうですね。
たなしん(B, Cho) 普段八王子で自分たちの企画をやっても、平日だと集客が悲惨だったんですよ。でもCrestは平日のブッキングでもお客さんがいるイメージがあって、「僕らのライブにも来てくれるんじゃないか」って期待感があったんですよね。
室 そうなんだ。
たなしん そうなんですよ。あとはやっぱり都心だし、「もしかしたら業界人が来てるんじゃねえか」っていう思いもあったり(笑)。Crestは俺たちにとってそういうイメージがあるライブハウスだったんですけど、そんな場所のステージに立たせてもらう中でお客さんに自分たちの曲を、日本語の歌詞をどうやって届けたらいいんだろう、バンドの熱量をどう伝えればいいんだろうって悩んでました。
金廣 とにかくがむしゃらでしたね。企画ライブとかに出ても、お目当てのバンドを観たら帰るお客さんが多かったし……。ここでライブをするたびに「どうやったらお客さんたちに自分たちの歌がハマるんだろう」っていう相談に乗ってもらってましたよね。
室 そうだね。
渡邊 本当に必死だったから、ライブ1本終わるごとに室さんに相談に行って。「なんとかよくしたい」っていう一心で「今俺たちはどういう感じですか?」「この先どうしていったらいいですかね」って聞いて。そうしたら室さんが「じゃあ2週間後、このイベントに出てみる?」とか「今度グドモがハマりそうなイベントあるから出てみる?」なんてアドバイスをくれたりした。
室 ワンマンライブのオープニングアクトにグドモをぶっ込んだりもしたね。
渡邊 あったわ。
室 お互い初めましてだったけど、向こうもグドモのライブを気に入ってくれたよね。
渡邊 女子2人の弾き語りユニットの対バン相手になったときは「もっともっと熱いイベントに出させてくれ」って思ってた記憶があります(笑)。
室 ああ、そんなこともあったね(笑)。
渡邊 俺は店長さんがバンドを認めてくれたらいいイベントに出させてもらえると思っていたから、その日、室さんに「今日の対バンどうだった?」って聞かれたとき「全然ピンと来なかったです。俺らもっといけると思います」なんて偉そうなことを言った記憶がある(笑)。
室 そう言われるとこっちも熱くなるんだよ。「それだったらこのイベントはどうだ!」って(笑)。
渡邊 でも本当に、いつもすごくいいイベントにブッキングしてもらってたな。このハコを代表するようなイベントのオープニングアクトとして出させてもらって、お客さん100人以上の前で演奏したりだとか。当時自分たちのライブに100人いるって状況はなかったから。
プロレス入場と上半身裸
──これまでの中でお互い特に印象に残っている出来事はなんでしょう。
室 出会った当初、たなしんは今ライブでやってるようなパフォーマンスをしてなかったんですよ。そのたなしんが、1回バーのほうからお客さんをかきわけながら“プロレス入場”でステージに上がったときがあって。それを観て「これめちゃくちゃ面白いな」と思って、ライブ終わりで感想を伝えたんですよね。あれは印象的だったなあ。
金廣 プロレス入場、いつ始めたんだっけ?
たなしん いや、それが覚えてないんだよ。もしかしたらその日が始まりだったかも(笑)。
室 すごくいい感じだったんだよ。
たなしん その日のイベントの空気感をうまく使ってお客さんの興味を引きたいっていうことは常に思っているから、いつも自分たちの出番までその日の流れをちゃんと見てるんですよ。フロアにいるのはほかのバンドのお客さんなんで、前に出たバンドのMCを引用して話そうとか、そういう心がけはしてました。だから、その日は「プロレス入場をしたほうがいい」っていう場の空気感を察知したのかもしれないです(笑)。
ペギ(Dr, Cho) 室さんとの出来事で印象に残ってるのは……俺、最初の頃、上半身裸で叩いてたじゃないですか。
室 ああ、そうだったね。
ペギ 八王子にメロディックパンクシーンがあって、グドモに入る前にいたバンドがそのシーンにいたんです。すごい泥臭いバンドで、自分的には上半身裸でステージに出ることに違和感がなかったんですよ。でも、渋谷っていう土地でライブを重ねるにつれて、自分が都会に染まっていったんでしょうね……。ある企画ライブに出るってなったときに、俺、シャツ着て出たんですよ。それって、ちょっと色気付いてるじゃないですか。今まで裸だったのに企画ライブのときはシャツ着て出てくるって。
一同 あはははは!
ペギ そうしたらライブが終わったあと、室さんに「お前はそういうところがダメなんだ」っていうニュアンスのことを言われたんですよね。「お前はずっと上半身裸でやって来たのに、残念だ」って(笑)。
室 そうだっけ?(笑) でも、いろんなバンドに「お客さんがいるからってカッコつけるんじゃなくて、いつも通りにやろうぜ」っていうことは言ってるかもしれない。
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- 3rdアルバム「グッドモーニングアメリカ」 / 2015年10月28日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3292円 / COZP-1091~2
- 通常盤 [CD] / 2880円 / COCP-39297
CD収録曲
- ディスポップサバイバー
- サイダーでも飲んで
- コピペ
- 友よ
- オールグリーン
- 南風と太陽
- 雨ニモ風ニモマケズ
- 低気圧の夜
- アウトサイダー
- ビッグバン
- ハローハローハロー
- 一陽来復
初回限定盤DVD収録内容
グッドモーニングアメリカ「挑戦 㐧六夜」@八王子オリンパスホールライブセレクトDVD
- コピペ
- 南風と太陽
- inトーキョーシティ
- 未来へのスパイラル
- イチ、ニッ、サンでジャンプ
- STAY WITH ME
- グッドモーニングアメリカ「挑戦 第七夜」
- 2015年11月27日(金)東京都 日本武道館
グッドモーニングアメリカ
金廣真悟(Vo, G)、渡邊幸一(G, Cho)、たなしん(B, Cho)、ペギ(Dr, Cho)からなる4人組バンド。2001年に前身バンドfor better, for worseを結成し、2007年より現在のバンド名に変更。for better, for worse時代は英語詞だったが、バンド名変更を機に日本語詞へと切り替え、サウンドもよりポップさを増す方向へ転換した。2008年より現在の編成で活動を開始し、自主企画の開催や作品のリリースを積極的に行う。2012年冬には初のワンマンツアーを成功に収め、2013年5月に1stフルアルバム「未来へのスパイラル」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。2014年5月にはテレビアニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマに採用された「拝啓、ツラツストラ」をシングルとしてリリースした。同年10月に2ndフルアルバム「inトーキョーシティ」を発表し、12月から翌年3月にかけてレコ発ツアーを実施。8月にテレビアニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」のエンディングテーマ「ハローハローハロー」をシングルリリース。今作よりコロムビア内のロックレーベル・TRIADに移籍した。10月には3rdアルバム「グッドモーニングアメリカ」を発表。11月には初の日本武道館ワンマンが控えている。