映画「ゴーストマスター」 PR

映画「ゴーストマスター」ヤング ポール×成海璃子×渡邊琢磨鼎談|現場では誰もが狂ってる!? 監督、キャスト、劇伴作家が語るなんでもアリの怪作映画

キラキラ恋愛映画を撮影していたスタッフが、突然、謎のモンスターに襲われて次々と血祭りにあげられていく……恋愛、ホラー、アクションといったさまざまな要素を詰め込んだ映画「ゴーストマスター」が公開された。「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM」で準グランプリを受賞したこの話題作の監督を務めたのは、本作が長編デビューとなるヤング ポール。ヒロインの渡良瀬真菜を演じて、ハードなアクションシーンもこなしたのは成海璃子。そして、劇中音楽を担当したのが音楽家・渡邊琢磨だ。

渡邊は近年、「ローリング」(2015年公開)、「ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-」(2016年公開)、「美しい星」(2017年公開)などのサントラを数多く手がけ、映画監督にも挑戦している。映画関連の仕事が増える中で制作された「ゴーストマスター」のサントラは、彼の多彩な音楽性が伝わるアルバムに仕上がった。今回音楽ナタリーではヤング ポール、成海、渡邊に登場してもらい、映画と音楽の関係、そして、それぞれの魅力について語ってもらった。

取材・文 / 村尾泰郎 撮影 / 須田卓馬

映画の撮影現場は一番おかしい場所

──「ゴーストマスター」はさまざまな要素が詰まった映画ですが、どんなアイデアから出発したのでしょうか?

左からヤング ポール、成海璃子、渡邊琢磨。

ヤング ポール 僕は以前、低予算のVシネマの世界で働いていたんですけど、現場のスタッフのキャラがとにかく強烈で。そういう人たちの物語を作りたいと思ったのが最初ですね。映画のスタッフって狂った人が多くないですか?(笑)

成海璃子 そうですね(笑)。私は子供の頃からこの世界で仕事をしてきたから、ずっと当たり前だと思ってきたんですけど、撮影現場以上に面白い経験をしたことがない。私が知ってる中で、一番おかしい場所だと思います。

ヤング ホントにおかしいですよね。撮影現場には不思議な磁場があって、みんなおかしくなっちゃうんですよ。現場で濃密な時間を過ごすうちに、普段は平穏な人が豹変したり、自分の中からよくわからない汁が出てきたりしませんか?

成海 確かに(笑)。

渡邊琢磨 先日、とあるきっかけで映画監督という重責を担うことになりまして、「ゴーストマスター」のキャストの、川瀬(陽太)さんにも出演していただいて、たった3日間の撮影でしたけど、この映画で描かれているようなうまくいかない現場や状況もあったのですが、それが逆に楽しくて。その、うまくいかない原因は私にあったのですが(笑)。

ヤング ポール

ヤング (笑)。最初のアイデアは、低予算でホラー映画を作っている撮影クルーの目の前で次々と心霊現象が起こるという話だったんです。でも、脚本に楠野(一郎)さんが合流したときに、「これ、ホラー映画じゃなくて、キラキラ恋愛映画にしたらどうですか?」と言ってきて。「えっ!?」と思ったけど、それがめちゃくちゃ面白くなる気がしたんです。ホワンとした恋愛映画から、血みどろのホラーになっていくグラデーションが面白いなって。

成海 最初に脚本を読んだときはわからないことだらけでした。「“首が肩にめり込む”って何?」とか(笑)。状況がわからないし、全然イメージできないけど、脚本が面白くて、すごく笑ったんですよ。

ヤング 初めて成海さんに会ったとき、「脚本読みました?」と聞いたら「わけわかんないですね、これ」って笑いながらポジティブに言ってくれたのが印象的で。その成海さんの言葉を聞いて胸を撫で下ろしたんですよ。「わけがわからないのを楽しんでくれてる!」と。

成海璃子

成海 この映画の撮影では、何かを疑問に感じたら終わりだと思ってました。たぶん、みんなもそうだったと思います。現場で「なんでこうなるんですか?」とか誰も言わなかったですもんね。

ヤング 言わなかったですね。でも、僕の印象としては、みんな脚本に書いてあることをそのままやるんじゃなくて、それぞれ盛ってる気がしました。麿(赤兒)さんの演技とか「そうなっちゃうの!?」という驚きがあって、その演技に周りの役者が触発されたりして。

成海 そうですね。でも、私と三浦(貴大)さんはそのままやってたと思います。

ヤング いや。盛ってましたよ(笑)。

成海 ホントですか?

成海璃子のアクションシーンにハマる音楽

──知らない間に変なテンションになっていたと(笑)。まさに現場の魔力ですね。そんなわけがわからない物語に音楽を付けるのは大変だったのでは?

渡邊 大変でしたね。レイヤーがたくさんある映画ですし、映画内映画もあるし、物語をどう解釈して音楽を付けていくのかは悩みました。まず、僕は“キラキラ恋愛映画”に相当する映画に詳しくなかったので。それで監督に「キラキラ恋愛映画のオススメはなんですか?」と聞いて、いろいろ作品をリストアップしてもらい、それを観るところから始めたんです。

左から渡邊琢磨、成海璃子、ヤング ポール。

ヤング ちゃんと全部観たんですよね。

渡邊 観ました。好きな作品もありました。ただ、そういうキラキラ恋愛映画の楽曲と、本編の劇伴の相違というか、個々の音楽のスタンスを探るのに時間がかかりました。3テイクくらい作って監督に聴いてもらったんですけど、なかなかOKが出なかった。

ヤング 「キラキラ恋愛映画の音楽は、こんなにリッチじゃない!」とか言ってね(笑)。「もうちょっと安っぽい感じで」「でも、最初に流れる音楽なのにチープでいいの?」とか、いろいろ話をしました。そこが一番大変だったかもしれない。

渡邊 キラキラ恋愛映画の音楽でありつつ、本編の劇伴のバリエーションにもなっているという。そこらへんの解釈とすみ分けが難しかったですね。

──その解釈の難しさは、キラキラ映画の箇所に限らないことかもしれないですね。

渡邊 そうですね。監督にシーンの演出意図を伺いながら、見たままの音を付けていいのか、それともちょっとシーンと相反するような音の付け方をしたほうがいいのか、そこはけっこう考えました。成海さんのアクションシーンの曲なんかは、独断であっという間に作っちゃいましたけど。

ヤング アクションシーンの曲は、めちゃくちゃよかったです。あれはブレイクコア?

渡邊 ドラムンベースとか、ハードコアとか、ノイズとかいろいろ入ってるんですけど、ああいうふうにジャンルを横断するスコアを書く機会はあまりないですね。普通ならもう少し一貫性を持たせますが、あの場面は雑多でグチャグチャのほうがいいと思ったんです。そのほうが成海さんのアクションにハマる気がして。

ヤング ハマってましたね! 曲を聴いたときに爆アガりしたのを覚えてます。曲の後半にサイレンみたいな音が「ウォーン!」って鳴るところとか鳥肌立ちました。