聴くたびに楽しくなっていく感覚
──11曲目に収録されているのは「Paradox Re:Write」。「In the Nude」(2021年1月リリースのアルバム「多世界解釈」収録曲)の系譜を感じるような、ゴージャスなサウンドの1曲ですね。
大倉 もうこの曲は僕、大の好みですね!
杢代 すごく壮大さがあって、アリーナクラス(の大型会場)でやるのが似合う曲だなと思います。曲の雰囲気的にメンバーがショーを見せるようなパフォーマンスになると思うし、このテンション感のカッコいい曲をマスターしたら、ライブがもっと強くなる。この曲もラップの言葉遊びがすごいんですよ。聴くたびに楽しくなっていく感覚がありますね。ぜひ何度も聴いて、ライブでもノってほしい曲です。
大倉 「正答↔︎誤答」と書いて「正しさ」と読む言葉遊びとか、いいですよね。あとラップパートで「凡才脱細詰漫悩(凡才だっさいつまんない)」と全部漢字で表記する、この遊び心。歌詞を読んでいるだけでも楽しめて最高です。
──メロディラインがすごく動く曲で歌いこなすのが難しそうに感じますが、そのあたりは全然?
大倉 そうですね。僕は、流れが大切だからいつもほかの人のパートも全部覚えてレコーディングに入るんですよ。そのときにすごく練習するので。いやあ、この曲はカマしたいですね~!
小泉 観測者も声を出して楽しめそうだよね。
「僕らが歌うこと」が一番の意味
──そして、アルバムの最後を飾る14曲目は「貴方らしく」。歌詞のメッセージも曲調もまっすぐなポップソングです。
杢代 いろいろ面白い曲が収録された中で、最後の曲が王道バラード。原因は自分にある。の曲は裏をかいたり逆張りしてみたり、ひねくれた曲が多いので、この曲調は逆に新鮮に感じます。「貴方らしく」は本当にまっすぐに「らしく生きていこう」とメッセージを伝える曲なんですが……僕たち、原因は自分にある。として生きている中で「原因は自分にある。とは?」ということをずっと考えながらここまで来たんです。“ゲンジブらしい”って言うけど、僕たちはいろんなものになれているし、いろんな曲を歌えている。じゃあ自分たちって何?と考えてしまう中、アルバムの最後で「自分らしく進んでいこう、人生を歩んでいこう」と歌えることが、僕の中でグッときて、熱くて。
長野 うん。
杢代 “コアに触れる”をテーマに、原因は自分にある。のいろんな側面や新たな一面に触れてきたアルバムで、最後に「自分らしくこれからも進んでいこう」と歌うことに、僕はすごくメッセージ性を感じました。僕たちはメッセージを伝える側だけど、僕たちもこの曲から教わることがあるなと感銘を受けた曲です。
武藤 そうだね。
杢代 あと、この曲は歌割りもアツいんです。例えばサビは3人、2人、2人に分かれて歌うんですね。空人が落ちメロを歌っているところに雅哉と凌大が加わるんですが、この3人は事務所に入ったのが早い組なので、3人の長年の絆が出ているように思う。潤くんと要人が歌うパートは、優しい歌詞に2人の関係性が現れてるように感じるんです。で、僕と光咲が2人で歌うんですけど、「僕らだけにしかわからない言葉で 変わらぬ思いを伝えるから」というフレーズがすごく好きで。実際光咲と会話するとき、みんなにあまりわからないような言葉で会話してるから(笑)。こういう関係性も、7人でここまで進んできたからこそ出てくるものだから、なんかいいなって思います。
吉澤 1年目、2年目の僕らではこの歌は歌えないと思うし、逆に10年目まで行っても違う気がして。6年目というこのタイミングだからこそ、この歌詞に深みが出るように思うんです。過去の話もするし、未来の話もする。僕らはまだ道の途中にいるんだという。“現在進行形”で歌える楽曲だからこそ、歌う意味がすごくあるなと思います。
大倉 「貴方らしく」という曲が最後にあることで、「アンチノミー」を表題に掲げたアルバムが一気に“肯定”されるんです。結局は、あなたらしくていいんだよって。このアルバム自体の全肯定ソングでもあるので、この曲がラストに置かれている意味も、皆さんに一緒に感じていただけたらうれしいです。
──「貴方」という言葉は、凌大さんが客席に呼びかけるときに選ぶ言葉という印象があって。なので、この曲が凌大さんのインパクトある頭サビから始まるのも、すごく感じ入るものがあります。
長野 ありがとうございます。
──凌大さんはこの曲をどう捉えていますか?
長野 過去の自分に歌ってあげたいなって思います。
小泉 うーん!
吉澤 なかなかない相槌(笑)。
大倉 急に、だいぶ強めの相槌でしたね(笑)。
小泉 わかる、わかるよ。
長野 原因は自分にある。は「僕らが原因を作っていこう」というポジティブな意味を持つグループ名ではあるのですが、それがネックになって「僕らにしかできないことってなんだろう?」「僕たちが伝えたいことってなんだろう?」とすごく悩んでいた時期が2、3年くらい前にあったんです。歌やパフォーマンス技術に関しても悩みがあって、すごく頭が固くなっていた。ただ、そういった悩み自体が自分らしさを消していたんだなというのを今になってすごく感じるというか。自分自身苦しかったことはあったけど、いつもそばにはメンバーがいてくれて、ステージで隣を見たらそこに立ってくれている6人の存在に、僕はまた「ステージに立つのが楽しい」と思えるようになったし……っていうのをひっくるめて、今の自分だから歌えるし、過去の自分に歌ってあげたいです。
──このアルバムに触れるとき、やはり「原因は自分にある。の“核心”とは?」ということを、自分もそうですし、きっと観測者の皆さんも考えると思うんです。リリースを重ねるごとに皆さんの表現の幅が広がり、それによって受け取る側の“ゲンジブらしさ”の解釈の幅も広がっているのではないかな?と感じる中、メンバーの皆さんはこれをどう捉えているんだろうと思っていたのですが、「貴方らしく」に対する皆さんの思いを聞いて、そこに答えがあるように感じました。
長野 「僕らが歌うこと」が一番の意味だなというのは思っています。僕らの声が乗ることで原因は自分にある。になる。それが成り立つための努力を僕らはしてきたと思うし、これからもし続けていくので。そこが“ゲンジブらしさ”なのかな、というのは感じます。
7人の“核”にあるもの
──ここまではグループとしての核に触れるお話を聞かせてもらいましたが、最後に皆さんそれぞれのことを聞かせてください。皆さんがゲンジブの一員として活動していくうえで、一番大事にしている気持ち、「これだけは譲れない」と思っていることを教えてもらえたら。
小泉 僕は「自分らしくいること」です。一般的に見て「変だな」と思われるかもしれない部分も、自分のよさになるかもしれないから。「ずっとこのままでいたいな」と思います。
長野 光咲らしくね。
小泉 このメンバーだからこそ、自分が自分らしくいられる環境なんだなとも思います。
大倉 僕は、「自分の気持ちをちゃんと伝える」。表情込みで。どれだけ長くそばにいても、家族でさえも自分の気持ちを全部わかるわけはなくて。だからこそ「自分は今、この出来事に対してこう思っているんだよ」って、顔でも声色でも声量でも、すべてを使って誰よりも一番に全身全霊で伝えて思いを知ってほしいし、それに対しての皆さんの意見を聞きたい。そうやって切磋琢磨していきたいんです。自分たちの関係性や作品をよりいいものにしていきたいという気持ちがあるので。
桜木 僕は「一番近い人たちを驚かせたい」という気持ちがあって。ライブ中とかに、6人を「わっ」と言わせたくていろいろ考えていたりするんです。それは相当難しいことで、メンバーが驚いたなら、観測者も絶対に驚くと思うから。一番身近な人をびっくりさせたい、楽しませたいということは常に頭に置いています。
吉澤 僕は「礼儀」です。メンバーに対して、友達みたいな感覚になるときもあれば、家族みたいだなと思うときもある。その時々でいろんな感覚になるんですが、元をたどれば一緒に夢を追いかける仕事仲間。それが根本なので、その当たり前を守るのは大切だよなって。当たり前が当たり前じゃなくなった瞬間にすべてが崩れてしまうことが僕は一番怖いので、グループ活動をしている以上は相手に人としての礼儀を持つこと。一緒に仕事をしていくうえで、相手を尊敬する気持ちと礼儀は何年経っても忘れちゃいけないなと思っています。
武藤 僕は「練習は裏切らない」ってことです。たくさん練習してできるようになったことも、練習不足だからうまくできなかったこともありますが、それはすべて練習は裏切らないから。この言葉を自分の核に持って、音楽もお芝居もやっていきたいなと思っています。
杢代 僕は、そうですね……「利他的に動く」ということかもしれないです。自分のために動くのもそれはそれでいいと思うけど、誰かの幸せを自分の幸せにできることって素敵だなと思っていて。自分が何かしたことで相手が幸せになる、そのこと自体を自分の幸せとしたいという思いを一番大切にしていますね。活動を通してファンの皆さんを幸せにするのを大前提に、皆さんが幸せになったことに対して自分も幸せに感じること。これは日常生活も含め、関わる方すべてに対して思っていることです。
長野 僕は「説得力を持つこと」です。僕、けっこういろんな人にいろんな話をするんですよ。「ゲンジブはこうでありたい」とか。メンバーに対しても個々に自分が思い描いている夢をぶつけるんですけど、そうやって言っている本人の中身が空っぽだったらなんの説得力もないし、付いて来てくれないと思うから。スタッフさんに「こういう演出をやりたいんです」「こういうところでライブしたいです」と言っても、自分に知識がなければ「何を言ってんだ」で終わっちゃう。ダンスも歌も説得力をもっともっと増したいし、説得力を増すために誰よりも学んで誰よりも自分ができるようになって、行動で見せていくことを常に大事にしています。観測者のみんなにも「東京ドームに立ちたい」とか「海外でライブがしたいです」って言葉で伝えるのは簡単だけど、そこで「私もその場所に行きたい」とか「そこで一緒にライブを体験したい」と思ってもらえるようにするには、それ相応のショーを見せ続けないといけない。成長していく過程は、言葉だけじゃなく結果として見せないといけないと思います。だから説得力を持つこと。そこは、僕がずっと大事にしている部分です。
公演情報
原因は自分にある。「ARENA LIVE 2025 序破急」
- 2025年7月12日(土)東京都 国立代々木競技場第一体育館
OPEN 16:00 / START 17:00 - 2025年7月13日(日)東京都 国立代々木競技場第一体育館
OPEN 16:00 / START 17:00
プロフィール
原因は自分にある。(ゲンインハジブンニアル)
大倉空人、小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、武藤潤、杢代和人、吉澤要人による7人組ダンスボーカルグループ。グループ名には「原因」という言葉を肯定的に捉え、自身が引き起こす事や作り出す物を“原因”として音楽シーンに新たなインパクトを与えたいという意味が込められている。2019年10月に1stシングル「原因は自分にある。」でCDデビューし、2021年1月に1stアルバム「多世界解釈」をリリース。4月に初のワンマンライブを成功させ、12月には2ndアルバム「虚像と実像」を発表した。2023年1月に3rdアルバム「無限の終わり」、8月には7人が主演を務めたテレビ東京系ドラマ「沼オトコと沼落ちオンナのmidnight call~寝不足の原因は自分にある。~」の主題歌「蝋燭」を配信リリース。11月には神奈川・ぴあアリーナMMにて、初のアリーナワンマンライブ「因果律の逆転」を成功させた。2024年3月にコンセプトEP「仮定法のあなたへ」をリリース。11月に2度目となるぴあアリーナMMでのワンマンライブ「白昼夢への招待」を開催し、ユニバーサルミュージックとのパートナーシップ締結を発表。2025年4月に4thアルバム「核心触発イノベーション」をリリースした。