「10代最強」の栄冠は誰の手に!? 過去最多のファイナリストが頂点争った「第3回 激闘!ラップ甲子園」決勝大会の記録 (2/2)

3回戦ではまさかの“投了”も

3回戦では、いよいよ各ブロックの決勝進出者が決まる。結果は次の通りだ。

TIGERブロック3回戦

両者ともに3連フロウやポリリズムを多用するなど自在にビートを乗りこなしながら的確なディスを吐いていく、ハイレベルなバトルが繰り広げられた。互角に近い戦いにも思われたが、要所で「アーティスト / あーちくしょう」「飛ばす / 2ヴァース」といったさりげないライミングも織り交ぜながら「インスタライブで『サイファー来てください』とかそれマジカッコいいの? え?」などの痛烈なディスも決めてみせたyujingが一歩リード。見事、一番乗りで決勝進出を果たした。

左からREDWING、yujing。

左からREDWING、yujing。


DRAGONブロック3回戦

直情一本槍のラップで挑むM.C.Tとハイレベルなラップスキルが武器のビシキマという、正反対とも言えるスタイルを誇る両者の対決。前回大会での敗戦のリベンジに燃えるM.C.Tがビシキマのスキルフルなフロウに対し「スタイル勝負かわいそう」と感情むき出しのリリックを畳みかけていくと、3ヴァース目の締めで「今日は俺の日や」と高らかに告げる。するとビシキマは「今日がお前の日 / もうちょっと無理 / だから俺諦める」「ぶっちゃけ俺勝ってもおもんねえと思ってたから」とまさかのアンサーで投了を宣言。フロアは轟音のような拍手に包まれ、M.C.Tが決勝行きを決めた。

左からビシキマ、M.C.T。

左からビシキマ、M.C.T。


LIONブロック3回戦

兵庫県勢同士かつファットボーイ同士の顔合わせとなったこの対戦。決勝の大舞台で同胞と戦える喜びを「遊び足りないまだまだ / 俺らにキャパなんてないしな」と表現しつつも貪欲に勝利への渇望をつづるBIG POISONに対し、Sirogarasは「兵庫の後輩マジでファット / イケてるかわいい後輩だけど / 俺は激ラステージの上じゃマジで意地悪サーセンごめんよ」と茶目っ気たっぷりに返す。和やかなムードも醸しながらのボースティング合戦となったこの対決は、1-4で先輩・Sirogarasが制した。

左からBIG POISON、Sirogaras。

左からBIG POISON、Sirogaras。

決戦巴戦

決勝戦は、前述の通り巴戦方式。3人のファイナリストたちが対戦相手を入れ替えながら1on1のバトルを繰り返していき、誰かが2連勝した時点でチャンピオン決定となる。逆に言えば、誰かが2連勝するまで延々と対戦が続くことになるわけだ。

左からyujing、M.C.T、Sirogaras。

左からyujing、M.C.T、Sirogaras。


決勝戦第1試合

奇しくも兵庫県勢のみで争われることとなった決勝のステージには、まずTIGERブロック代表のyujing、DRAGONブロック代表のM.C.Tが上がった。先攻はM.C.T。ここまでの戦いと同様に八方破れの直情型ラップスタイルを自画自賛するリリックを紡ぎながら「yujingくん、やり合いますよ」と告げると、対するyujingも真正面切って攻撃を仕掛け始める。M.C.Tの戦い方を「全然面白くないし興味がねえ」と一刀両断にすると、リズムを強調したフロウを交えつつ相手の服装を利用して「阪神タイガース / レザーのライダース」で踏むなどテクニカルなラップを浴びせ続けた。そして「言葉はめ込み / 音で合わせて / 俺ら楽しむだけ / お前に用はねえ / Sirogarasとやらせて」という身も蓋もない1行で相手のスタンスの無効化に成功。これ以上はM.C.Tが何を返しても負け惜しみにしかならない構図を作り出し、勝敗が決した。

左からM.C.T、yujing。

左からM.C.T、yujing。


決勝戦第2試合

1勝をもぎ取ったyujingが続いて対峙するのは、LIONブロック代表のSirogaras。どちらも相手を最大限リスペクトしながらも「でも勝つのは俺だ」という強い意志をまっすぐリリックに込めていく。yujingがSirogarasのラップスキルの高さを「こいつみたいにうまくはない」と称賛しつつ「だけど手に入れたマイクロフォン58(中略)あんときの自分に勝つまで」とあくまで自分を高めるのがラップバトルの目的だと定義してみせると、Sirogarasは心なしか受け身の体制となってしまう。

左からSirogaras、yujing。

左からSirogaras、yujing。

それでも「神様は俺に『勝つ』って言ってる」と応戦するが、すかさずyujingが「これは勝ち負けよりお前ら自分の価値磨けって / たったそれだけ」の1行で“結論”を叩きつけ、「お前とここでやれてよかったぜ」と追い打ち。音楽的な意味でのラップスキルにおいてはSirogarasがやや有利かとも見られたが、リリックのロジックとレトリックでバトルをジャックしたyujingが見事2連勝を果たした。

この瞬間、今大会のチャンピオンがyujingに決定。決勝戦でのM.C.T対Sirogarasというカードは実現しないまま、最短の試合数で決着する形となった。

yujingの優勝が決まった瞬間。

yujingの優勝が決まった瞬間。

「参加条件:19歳以下」というレギュレーション上、今回が最後の「激ラ」参戦となるyujingは、満足げな表情を浮かべながら「俺は卒業やけど、またがんばってやってるんでチェックしてくれ」と会場に呼びかける。その言葉通り、第4回大会が8月18日に神奈川・CLUB CITTA'で開催されることがその場で発表された。「優勝賞金100万円」の文字がスクリーンに大写しになると、会場はどよめきで埋め尽くされる。“本家・甲子園”こと全国高校野球選手権大会のように春・夏の恒例行事になりつつあるこの「激闘!ラップ甲子園」は、これからもまだまだ10代ラッパーたちの熱い戦いを見せ続けてくれそうだ。

yujing

yujing

yujing

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