福本大晴インタビュー|「本当の自分」と「アイドル」の狭間で考えること (2/2)

ファンのために生きるアイドルとは相反する

──恋愛の曲も多い中、「EVERYBIRTHDAY」の歌詞は生き様が描かれていますよね。

この曲も「恋の上昇気流」と一緒でKan Yamamotoさんと作ったんですが、「昭和っていいよね」っていう話から生まれましたね。僕やKanさんの中では昭和のアイドルソングのイメージ。昭和時代の夏に流れてたCMソングのイメージなんです。

──歌詞がほかの曲とは違う方向性になったのはどうしてだったんでしょう?

いろんな曲を作っていく中で、聴き馴染みのいい王道アイドルソングを目指したい一方で、「歌ってたらただただ幸せじゃん」みたいな、ある意味楽観的な曲も作りたくなったんです。そこからスタートしていって、「毎日が誕生日だったら幸せ」という方向性で作っていきました。個人的には、応援歌でもあると思っています。

福本大晴

──「自分らしくあればいい」というメッセージも感じました。

昔から、父親に「素直に生きることを大事にしろ」とずっと言われてきたんです。それが歌詞にもにじみ出ていると思いますね。一番伝えたかったことは、Bメロの「素直に生きることできっと見つかる」っていう歌詞。「素直に生きること」はファンのために生きるアイドルとは相反するところがある気もしますが、いろんなアイドルソングを聴いていくと、意外と自分の中ではアイドルっぽくない曲のほうが記憶に残っていて。僕はアイドルであることにこだわっているけど、こだわりすぎると面白くなくなるかなと思って、バラエティ色を優先しました。ギャップを作っていかないと飽きられちゃうと思うんですよね。

──「オトナソーダ」はかわいさに振り切ったような曲ですよね。

だいぶかわいい曲ですね。これはサビからできた曲です。擬音がたくさん入った曲を作りたいというところから始まったんですよ。「シュワシュワ」っていう言葉は残ってますけど、当初は擬音がもっとあって。でも考えていくうちに迷走していって(笑)、最終的には「もうシュワシュワだけにしよう」ってなりました。高校の文化祭が終わったとき、教室にみんなで集まって「おつかれさま!」ってジュースで乾杯した思い出があるんです。普段は教室でやっちゃいけないことだけど、文化祭だから先生が「今日は大丈夫やで」と言ってくれて。紙コップに入れた炭酸がもうめっちゃうまくて。しかも教室には夕日が差してる……そんな光景、青春の1ページを「オトナソーダ」の歌詞に盛り込みました。あと、「果汁炭酸」っていう歌詞がありますが、実は最初は具体的な商品名で。でもここはボカしたほうが幅広い人に聞いてもらえるかなと思って変えました。これもスタッフさんと作った曲ですが、人と一緒に作ることで客観的になれるのでありがたいですね。最後の「オトナでよさそうだ」っていうフレーズはギリギリまで決まらなくて、レコーディングの日に「ここの歌詞、まだ考えてなかった!」と焦っていた中で思いついた歌詞なので思い出深いです。

福本大晴

──作詞作曲をやるようになって音楽の聴き方は変わりしましたか?

変わりました。どんな楽器使ってるんだろう?って気にしたり、以前よりも歌詞をすごく意識したりするようになりましたね。音楽を聴く頻度も増えましたし、いろんなジャンルの曲を聴くようになりました。最初はラップやチルっぽい曲ばかり聴いてたんですが、今は幅広く。Nissyさんや藤井風さん、Vaundyさん、Mrs. GREEN APPLEさんの曲を特によく聞きます。中でも、ミセスさんの曲を聴いてリスナーに寄り添うことの大事さに気付かされましたね。幅広いジャンルの楽曲を生み出せるのは本当にカッコいい。Nissyさんの曲は、どれも「ライブでどういうパフォーマンスになるんだろう」ってワクワクさせられます。いろんな曲を聴けば聴くほど自分ができることも増やしたくなるんですが、どこまでやるかが難しいところで。

──ピアノだけじゃなくて、いろいろな楽器に挑戦することもできるわけですし。

そうなんです。やろうと思えばなんでもできるんで。自分でできることをどんどん増やしていけば自然と僕の色が生まれると思ってます。けっこう手を広げたので、今度は濃度を上げていく時期かな。

天才って思われたい、けど……

──今一番伸ばしたいと思っていることは何ですか?

ピアノと歌ですかね。ピアノを弾いててもコードや音程を探すのにけっこう時間がかかっちゃうので、そこが早くなれば、自分が作曲に携われる割合をもっと増やせますし。作曲面では、最初に作った「よんもじ」くらいしかスタッフさんから一発OKをもらってないんです。ほかの曲は僕が作ったメロディをスタッフさんと一緒に改良していって完成した曲なので、一発OKになる曲をもっと増やしていきたいです。

──ちなみに、今の活動の中で一番楽しい瞬間は?

やっぱりライブかな。ありがちな答えですけど。あとファンクラブの活動もすごく楽しいです。

──やはりファンの方と直接交流できる場が大事なんですね。

そうですね。ライブが始まる前に起きる大晴コールを聞くと感情がエグいくらいたかぶりますね。あのコールにファンの人の気持ちがめっちゃ乗ってると思うんです。「このコールを聞け! 大晴!」っていう思いがすごく伝わってきますし、そこで僕が登場したときにめっちゃ湧いてくれるので本当にありがたいですね。

福本大晴
福本大晴

──最後に、今後の目標を教えてください。

いっぱいありますね。でもあまり先のことを言うのもあれなんで……まずはCDをちゃんと売ることですね。たくさんの人に僕の曲を聴いてもらうことが直近の目標です。自分が作った曲っていうこともあって、だいぶドキドキします。あと、先に曲が売れて、あとから「あれって福本大晴が歌ってたんだ」と気付いてもらえるような曲を出すのも目標。僕、一般的なイメージでは「めっちゃ明るい」「おっちょこちょい」って思われてると思うんですが、ライブに来てくれるようなファンの方からはネガティブだってことがバレてると思うんです(笑)。態度やMCにそれが出ちゃってると思うんで。僕がめっちゃしゃべるときはただ「しゃべりたい」わけじゃなくて、自信のなさの表れというのも知られちゃってると思う。だけど本当はファンの人に天才って思われたいんですよ、僕。なんでもさらりとやっちゃう人ってカッコいいじゃないですか。でもファンの人は僕の性格を見抜いてるので絶対にそうは思ってくれない(笑)。僕ががんばって、どれだけさらっとやりました感を出してもバレちゃう。だから悔しいですよね。ファンの方に天才って思ってもらえるようになるのも1つの目標です。

プロフィール

福本大晴(フクモトタイセイ)

1999年生まれ。大阪府堺市出身。2024年6月にセルフプロデュースを手がけるソロアイドルとして活動を始動し、同年8月から11月にかけて初の全国ツアー「よんもじ」を開催。2025年3月、1stシングル「恋の上昇気流」をリリースした。