スカパー!×ナタリー PowerPush - FUJI ROCK FESTIVAL '12

日高正博×ブライアン・バートンルイス対談

好きなバンドしかやらない

──では、フジロックの前と後で変わったと感じることを教えてください。

日高 例えば、俺がフェスティバルを始めるときに、レコード会社の人に説明した話なんだけど……、彼らはアーティストの新作ありきで来日してくれたほうがキャンペーンしやすいっていうのがあるじゃない。でも俺はそうじゃない、新作がなくても来る、そこで新しいお客さんを掴めれば古い作品が売れる、何年か後に新作が出たときに買ってくれるかもしれないって言ったの。だって何万人ものお客さんが観てくれるわけだからさ。

ブライアン あとSMASHは、PRIMAL SCREAMがまだ有名じゃないときに日本に呼んでるんだよね。「どうなるかわかんないけどやってみちゃおう」ってノリは、当時の音楽業界のパターンではなかったんだよ。

──いつか芽が出て、誰かがそれを認めてくれるかもしれない。音楽における地道な植樹運動ですね。

対談風景

日高 そう。80年代頭に俺ともうひとりだけでSMASHを作ったときに、自分たちが好きなバンドしかやらないって決めたんだ、ほんとに。ビジネスになるからってだけで音楽をプロモートしたらさ、死ぬ前に絶対後悔するもん。当時は信用もゼロだったから、海外のマネージメントやレコード会社に行ってこっちの意図をわかってもらったり、こういうアーティストをやりたいって説得したり。その間日本では、「海外アーティストの来日は必ず新作が出てからだ」「国内外でまず売れてからだ」ってパターンだったんだよ。そのほうが安心だから。でも俺は違う、新しいバンドはシングル1枚しか出していなくても日本に来て、ちっちゃな会場でもライブしたり、インタビューしたり、そういうやり方もあるんじゃないかって。最初は反対されたりケンカしたりしたけど、今ではその来日プロモーションが当たり前になってるからね。とにかく、なんか面白いことやんないと自分の動機が持たない、会社にとって危険なことをやらないと(笑)。

──そこまで日高さんを奮い立たせるものってなんなんでしょう?

日高 一番大事なのは音楽だよ。これだよ。もちろん俺の性格もあるかもしれないけど。

やっぱりフェスティバルは来るもんだって

──さて、今回フジロックをスカパー!で生放送するわけですが、「ライブ」と「放送」で思うところがあれば。

ブライアン 生放送を通して、今までフジロックに来てたけどなんらかの事情で来れなくなった人とか、今年行けなかったけど来年足を運ぼうと思ってくれる人とかに、現場の臨場感を伝えるっていうのは橋渡しとしてすごく意味のあることだと思ってる。でも実際は複雑な気持ちです(笑)。

日高 いやー、すごいいい言い方だねえ。俺は何回テレビやめようって言ったかわかんないよ。やっぱりフェスティバルは来るもんだって! 簡単に観られたら良くないよ! でも、テクノロジーの発達はすごいね。CS、BS、機材、ハードウェア……、中継に入ってる人たちはみんな長年来てもらってる人たちなんだけど、厳しい天候の中でいい映像を撮って送るってのは彼らの情熱がなせる技だよね。その現場の人たちの情熱を、新しいテクノロジーを通して家で観れるっていうのは、テレビの楽しみ方かもしれないね。

──違法ダウンロード厳罰化や風営法改正、原発問題など不穏な状況が続く日本ですが、その中でフェスティバルが担う役割があるとすれば、それはなんだと思いますか?

日高 俺はフェスティバルでは、ありとあらゆるものを紹介する義務があると思ってる。例えばNEW POWER GEAR Field / AVALONというフィールドにNGOビレッジを作って、あらゆる地球上の問題、環境破壊から人権問題、オーガニックなことまで紹介してる。でも、そこのスタッフに必ず言うんだ、「テントの外に出て大きい声で誘いこむな」「チラシも外で配るな」って。とにかくお客さんにとって嫌味なく、世の中にこんなことがあるんだと知ってもらえたらうれしい。押しつけは嫌いだからさ。

──それでは最後に、日高さんにはこれからのフジロックをこうしたい、ブライアンさんにはこうなってほしいというのをそれぞれお聞きしたいんですが。

日高 ないよ。これからどうするかとか、どういう具合にシフトアップしていくかとか、ほんとに行き当たりばったり。

──でも苗場ではずっと続けていく?

日高 やめるって言ったら、苗場の人に何されるかわかんないからねえ(笑)。この前、苗場で地元の人とお酒飲んでるときに「日高さん、ずっと苗場でやりますよね?」って訊かれたんだけど、つい本音が出て「わかんねえなあ」って言っちゃったんだ。そしたら、向こうが本気になっちゃって、「俺らを殺す気か!?」って。まあ、それはもちろんジョークだけど、これから先も苗場でいくと思う。

ブライアン フジロックには、変化しながらも続けていってほしい、それが唯一望むことですかね。自分にとってこんなに情熱が冷めないフェスティバルは、ほかにないから。

対談風景

FUJI ROCK FESTIVAL

1997年よりスタートしたロックフェスティバル。1997年に山梨・天神山スキー場で開催された1回目は2日間の開催を予定していたが、台風が直撃したことで2日目は中止となってしまう。翌年開催された2回目は東京・東京ベイサイドスクエアで開催。そして1999年より新潟・苗場スキー場を会場に現在まで続いている。国内外のさまざまなアーティストを招聘し、ライブパフォーマンスだけでなく、反核運動やNGOによるレクチャーなども行われている。2012年はTHE STONE ROSESやRADIOHEAD、サカナクションといったビッグアーティストから無名の新人まで、幅広いラインナップを揃えて開催する。

チケット

3日通し券 42800円
1日券 17800円
駐車券 3000円(1日1台)
キャンプサイト券 3000円(1名)

※3日通し券と7月28日(土)29日(日)の1日券は売り切れ。

FUJI ROCK FESTIVAL'12 現地より生中継

BSスカパー!(BS241ch) / スカチャン5

2012年7月27日(金) 15:00~18:20
2012年7月28日(土) 15:00~18:20
2012年7月29日(日) 15:00~18:20

日本最大級の野外ロックフェス「FUJI ROCK FESTIVAL '12」を新潟県苗場スキー場から独占生中継! 今年も国内外のビッグネームをはじめ、注目新人など総勢200組近くが大集結する。番組では主要5ステージのほか、音楽と自然と人が一体となる3日間の模様をさまざまな角度から伝える。司会はブライアン・バートンルイス。各日の放送アーティストは未定。

16日間無料体験サービス

スカパー!スカパー!では9月30日までBSスカパー!を始めとする約70チャンネルを16日間無料で楽しめるスペシャルキャンペーンを実施中。もちろん「FUJI ROCK FESTIVAL'12 現地より生中継」も観られるので、未加入者はこの機会に新規加入してみよう。契約の詳細はオフィシャルサイトで確認を。