音楽ナタリー Power Push - 水本有(フリサト)×小高芳太朗(LUNKHEAD)対談

1980年生まれが語る“オールドルーキー”の魅力

メンバーが決まったきっかけは“伝説のライブ”

──25歳くらいのときに単身で東京に来て、10年以上バンドを続けることも、相当がんばらないとやれないことだと思いますけどね。

水本 そうですね……。一番帰りたくなったのは、上京した1日目だったんですよ。高円寺の6畳風呂なしのアパートで、布団と小説1冊しかなくて。電気を消すときに「契約更新するまでの2年間だけにしよう。2年経ったら、絶対に帰ろう」と思って。寂しいし、友達もいないし……。

左から小高芳太朗、水本有。

小高 すごいな。よく続けてきたね、今まで。

水本 ありがとうございます(笑)。上京してすぐの頃にCLUB Queでハンサム兄弟とLOST IN TIMEのツーマンがあったんですよ。

小高 知ってる! 伝説のライブだよね。

水本 ですよね。ハンサム兄弟とは宮崎で何度か一緒にやらせてもらってたから、観に行ったんです。そのときにハンヂさんにベースとドラムの人を紹介してもらって、バンドを始めたんですよ。

小高 へー! すごい話やね、それ。

水本 で、そのバンドがダメになったあと、フリサトを始めたんです。それが2006年だから、一応、来年で結成10年なんです。だから自分たちでオールドルーキーって言ってるんですけどね(笑)。

バンド名の由来はファイナルファンタジー

小高 フリサトが結成された2006年って、俺らが一番チヤホヤされてたときだな(笑)。音楽でお金をもらえるようになって、「バイトしちゃダメ」って言われて。

水本 僕、バイトばっかりでしたよ。ライブ以外で高円寺から出ることもなかったし。

──それはかなりシビアな状況だと思うんですが、音楽をあきらめなかったのはどうしてなんですか?

水本 まだ才能があるって思ったし、書きたい曲が自分の中に溜まってる状態だったんです。バンドを続けてると、どうしても「この曲、アレに似てるな」とか「前にも同じような曲を書いた」みたいなことを思ってしまうんですけど、バンドが変わったら似てるも似てないもないから、またバーッと作り始めて。

小高 メンバーが入れ替わっても、バンド名を変えようとは思わなかったんやね。というか、そんなにカッコいいか? このバンド名。

水本 ハハハハハ!

小高 (笑)。いや、バンド名のことも聞きたかったんだよ。

左から水本有、小高芳太朗。

水本 もともとは“FRESUBT”だったんです。FREE(自由)とSUBTLE(曖昧な)を合わせたんですけど、「読めない」って言われて、カタカナに変えて。そのときは「バンド名を読ませたくない」って思ってたんですよね。何を考えていたか、まったくわからないんですけど(笑)。まあ、今のは表向きの話で、ホントは「ファイナルファンタジー」のブリザド(ゲーム中に登場する魔法の名称)の濁音を取っただけなんですけど。

小高 あ、そうなんや!

水本 バイトもバンドもやってない時期があって、ガラケーの小さい画面で「ファイナルファンタジー」をやってたんです。サンダラっていう魔法があるんですけど、アコースティックユニットのサンタラって、ここから来てるんじゃないか?って勝手に思って。で、このバンドを始めたときに「フリサトってどう?」ってメンバーに言ったら、「それがいい」ってことになったという(笑)。

まずはちゃんとバンドのことを知ってもらいたい

──LUNKHEADもこの10数年、決して順風満帆ではなかったですよね。

小高 だいだい状況はよくないですよ(笑)。でも、メジャーデビューしてから9年間もビクター(エンタテインメント)にお世話になりましたからね。売れてるバンド以外で、そんなに長く在籍したのは俺たちくらいなんですけど、それは現場の人たちの愛ゆえなんですよね。今は徳間(ジャパンコミュニケーションズ)に所属してるんですけど、名古屋とか大阪でライブをやると、ビクター時代の人が観に来てくれて、物販を手伝ってくれたりするんです。この前の野音(2015年9月22日に行われた東京・日比谷野外大音楽堂での単独ライブ)にもビクターの人たちがたくさん来てくれたし。ありがたいですよね。仕事ではなくて、自分たちのことを純粋に好きでいてくれてることだから。

水本 すごいですね、それは。

──マネージメントに関しては?

小高 直球という事務所なんですけど、ボビーが亡くなってから(直球を立ち上げたボビー湯浅こと湯浅壮太氏。2012年に41歳で逝去)は、ほとんどセルフですね。メンバーもやれる事はどんどんやって、みんなで力を合わせています。もしかしたら、バンドも会社の感覚に近いかもしれないです。

──そうやって進んでいくしかないですよね、ホントに。フリサトも今回のアルバムによって、また次の段階に進めそうですね。

水本 はい。次のCDを出すのが、当面の目標ですね。

小高 そのためにはこのアルバムを売らないと。

水本 そうですね。これが売れないと、次は出せないので。まずはちゃんとバンドのことを知ってもらいたいです。今回のアルバムのリリースが決まって、「こんなバンドがいたんだ」って気付いてくれた人もけっこういたみたいなんですよ。でもそれって「今までどれだけ知られてなかったんだろう?」ってことだとも思いました。

──活動していく上での目標はありますか?

水本 絵空事のような目標としては、武道館でやりたいっていうのがあるんですけど……。

小高 おお! やっぱり武道館は目標だよね。知り合いや友達が武道館でライブをやるときは、なるべく行くようにして、自分たちがステージに上がってるところを想像しながら観てるので。あ、そうだ。フラカン(フラワーカンパニーズ)の武道館、行くでしょ? 12月19日。

水本 絶対行きます! 怒髪天さんの武道館もめちゃくちゃよかったし……。

小高 あれこそ50歳を目前にした青春だよ。俺、すごすぎて感動できなかったからね。増子(直純)さんはずっと泣いてたけど、演奏はキレキレで、それこそQueでライブをやってるような感じで。すごく勉強になった。

──では、最後に小高さん、フリサトを今回の対談で初めて知った人に向けてメッセージをお願いします。

小高 フリサトみたいな音楽って、今は少ないじゃないですか。最近はパーティ感のある曲をやってるバンドが多いから。でも絶対にシーンの状況は変わってくるし、こういうバンドが注目されるんじゃないかなって思ってますよ。だからぜひ聴いてみてほしいですね。

水本 そのときを待ってます。がんばりますよ。

フリサト ニューアルバム「ハグミーハグミーハグミー」 / 2015年11月11日発売 / 2160円 / LookHearRecords / UK.PROJECT / LHRUK-1982
「ハグミーハグミーハグミー」
「ハグミーハグミーハグミー」
収録曲
  1. 春が来た
  2. ジョハリの窓
  3. YaYaKo-C
  4. 原始
  5. トマト
  6. ふうてんさん
  7. 藍いこころたち
  8. EEE
フリサト
フリサト

2006年に水本有(Vo)を中心に結成され、数回のメンバーチェンジを経て現在は5人編成のバンドとして活動中。フォークロックやギターロックをベースに、ユーモラスかつ実直な歌を歌っている。下北沢CLUB Queの店長・二位徳裕氏をプロデューサーに迎えて制作したアルバム「ハグミーハグミーハグミー」を2015年11月にリリースする。

フリサトライブツアー2015-2016「ハグユー!」
2015年11月21日(土)東京都 下北沢CLUB Que
<出演者>
フリサト / HANZI BAND / SUNDAYS
2015年11月26日(木)大阪府 FANDANGO
<出演者>
フリサト / 空団地 / and more
2015年11月27日(金)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
<出演者>
フリサト / qualm / Third fly / suicide in April / and more
2015年12月10日(木)千葉県 千葉LOOK
<出演者>
フリサト / CHERRY NADE 169 / BARICANG / YUEY / オオヌキシンゴ
2015年12月15日(火)千葉県 柏Thumb Up
<出演者>
フリサト / Helloes / and more
LUNKHEAD(ランクヘッド)
LUNKHEAD

小高芳太朗(Vo,G)、山下壮(G)、合田悟(B)桜井雄一(Dr)からなる愛媛県出身のロックバンド。メンバーはともに愛媛県立新居浜西高校の在学時に出会い、卒業記念に1度だけライブを実施。その後全員が大学進学で上京する頃に改めてLUNKHEADを再結成し、下北沢のライブハウスを中心に活動し始める。2004年1月にシングル「白い声」でメジャーデビュー。自主企画イベント「みかん祭」を主催するなど精力的に活動を行い、ライブバンドとしての評価を高めた。結成10年目に突入した2008年3月には初のベスト盤「ENTRANCE~BEST OF LUNKHEAD age18-27~」をリリース。2010年にメンバーの脱退により桜井雄一(ex.ART-SCHOOL)が加入。2015年1月にはメジャーデビュー10周年イヤーを締めくくるライブイベント「一世一代のみかん祭」を東京・新木場STUDIO COASTにて開催し、同年4月にはレーベルを徳間ジャパンコミュニケーションズに移籍して10枚目のアルバム「家」をリリースした。11月にアコースティック編成のワンマンツアーを行い、2016年3月には東京・TSUTAYA O-EASTにてワンマンライブ「千客万来のみかん祭」を開催する。

LUNKHEAD東名阪アコースティックワンマンツアー~Very Best of Acoustics~
2015年11月22日(日)東京都 渋谷7th FLOOR
2015年11月26日(木)大阪府 cafe Room
2015年11月27日(金)愛知県 ell.FITS ALL
千客万来のみかん祭
2016年3月19日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST