音楽ナタリー Power Push - 水本有(フリサト)×小高芳太朗(LUNKHEAD)対談

1980年生まれが語る“オールドルーキー”の魅力

怒髪天、フラワーカンパニーズなどをはじめとする、リアルな人生を歌うロックバンドの系譜にある5人組バンド・フリサトが新作「ハグミーハグミーハグミー」をリリースする。本作には「ふんばれ ふんばれ」と聴く者を鼓舞する「春が来た」、「一番大切なものは 何だったっけな?」と問いかける「原始」など全8曲を収録。熱さと青さを共存させた歌、生々しいライブ感を備えたバンドサウンドを含め、このバンドの音楽性が真っ直ぐに伝わる作品に仕上がっている。

今回音楽ナタリーでは、フリサトのボーカリスト・水本有と彼らのオフィシャルサイトに熱いメッセージを寄せているLUNKHEADの小高芳太朗の対談を企画。1980年生まれの2人による、バンドと音楽と人生を巡るトークが展開された。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 後藤壮太郎

出会いは下北沢CLUB Que

──フリサトの新作「ハグミーハグミーハグミー」の特設サイトに小高さんが「ダサくてカッコ悪くて恥ずかしくて封印してきた俺の青春をこんなにも肯定してくれた音楽が他にあったかなあ。退屈で飽き飽きしてて逃げ出したかったつまらなかった日常がこんなにドラマティックだったんだって気付かせてくれた音楽が他にあったかなあ」という素敵なコメントを寄せていまして。

水本有 ありがとうございます。コメントをいただいたときにお礼のメールを送ったんですけど、あのとき実は泥酔してたんですよ。

小高芳太朗 そうらしいね(笑)。Twitterで見た。

水本 その後、号泣してしまったんですよね。本当にうれしくて。

──お2人が初めて会ったのは、東京・下北沢のライブハウスCLUB Queだったそうですね。

左から水本有、小高芳太朗。

水本 はい。2年くらい前ですね。

小高 QueでLUNKHEADのライブがあって、打ち上げで飲んでいたら水本くんがいて。話してるうちに面白くなって、一緒に焼酎のボトルを入れたんですよね。そのボトルは水本くんに飲み尽くされてしまったんですけど(笑)。すごくキャッチーな人だなって思いましたね。同い年(1980年生まれ)だってことは、ついさっき知りました。ちなみに何月生まれ?

水本 12月です。

小高 かろうじて僕のほうが早い(笑)。お互い、35歳までよく生きてきたよね。

弾き語りもやってみたけどやっぱりバンドがよかった

──水本さんは兵庫生まれで、宮崎の大学に行って、卒業後も宮崎でバンド活動を続けていたんですよね?

小高 え、そうなの? 

水本 はい。宮崎はいいところですよね。人が優しくて。

小高 そうなんだ。でも、宮崎ってあんまり行ったことないな。

水本 東京のバンドがツアーをするときも、福岡、大分、熊本、鹿児島を回って……。

小高 宮崎と佐賀はなかなか行けないっていう。

水本 そうですね。僕は宮崎でバンドをやりながら、いろんなところに音源を送っていて。もちろん今回のアルバム「ハグミーハグミーハグミー」をリリースするUK.PROJECTにも送ったんですけど、どこからも反応がないまま、結局バンドが解散してしまったんです。その後「1人で何ができるだろう?」と思って、東京に来て。それが2004年です。

小高 2004年って、ちょうど僕らがメジャーデビューした年だ。

左から小高芳太朗、水本有。

水本 東京に来たばかりの頃、周りの人たちに「LUNKHEADって知ってる?」ってよく言われましたよ。

小高 そうなんや。今のメンバーがそろったのって、いつくらい?

水本 えーと、去年くらいですね。

小高 え、最近やん!

水本 はい。ベース(木村享史)とは5年くらいやってるんですけど、あとは入れ替わり立ち代わりで、なかなか固まらなくて。でも、バンドで活動することにはこだわっていて。弾き語りのCDを作ったこともあるんですけど、やっぱりバンドがいいなって思ったんです。自分にないものを音楽の中に入れてもらえるし、弾き語りで「よくないな」と思う曲でも、バンドでやってみたら「めっちゃいいやん!」っていうこともあるから。それが楽しいんですよね。

小高 うんうん。まあ、逆もあるけどな。曲を持っていってもメンバーの中でピンと来なくて「うわー、全然伝わらない。面白いな」とか(笑)。

水本 ありますね(笑)。

小高 俺、昔は弾き語りでメンバーに聴かせてたんだけど、いまはカッチリとデモを作ってから渡すようにしていて。それをメンバーみんなで見事にブチ壊して、結果的にまったく違う感じの曲になるんだよね。

水本 デモを作るんですか! 意外でした……。

小高 弾き語りで歌って、メンバーが「?」っていう状態になると、1時間くらい音を出さないこともあって。そうなるとスタジオ代がもったいないでしょ。

水本 あー、そうですね。スタジオ代、高いから。

小高 だから自分で打ち込みをやるようになっていったんだよね。最近はストリングスやピアノのアレンジも、全部自分でやってる。

フリサト ニューアルバム「ハグミーハグミーハグミー」 / 2015年11月11日発売 / 2160円 / LookHearRecords / UK.PROJECT / LHRUK-1982
「ハグミーハグミーハグミー」
「ハグミーハグミーハグミー」
収録曲
  1. 春が来た
  2. ジョハリの窓
  3. YaYaKo-C
  4. 原始
  5. トマト
  6. ふうてんさん
  7. 藍いこころたち
  8. EEE
フリサト
フリサト

2006年に水本有(Vo)を中心に結成され、数回のメンバーチェンジを経て現在は5人編成のバンドとして活動中。フォークロックやギターロックをベースに、ユーモラスかつ実直な歌を歌っている。下北沢CLUB Queの店長・二位徳裕氏をプロデューサーに迎えて制作したアルバム「ハグミーハグミーハグミー」を2015年11月にリリースする。

フリサトライブツアー2015-2016「ハグユー!」
2015年11月21日(土)東京都 下北沢CLUB Que
<出演者>
フリサト / HANZI BAND / SUNDAYS
2015年11月26日(木)大阪府 FANDANGO
<出演者>
フリサト / 空団地 / and more
2015年11月27日(金)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
<出演者>
フリサト / qualm / Third fly / suicide in April / and more
2015年12月10日(木)千葉県 千葉LOOK
<出演者>
フリサト / CHERRY NADE 169 / BARICANG / YUEY / オオヌキシンゴ
2015年12月15日(火)千葉県 柏Thumb Up
<出演者>
フリサト / Helloes / and more
LUNKHEAD(ランクヘッド)
LUNKHEAD

小高芳太朗(Vo,G)、山下壮(G)、合田悟(B)桜井雄一(Dr)からなる愛媛県出身のロックバンド。メンバーはともに愛媛県立新居浜西高校の在学時に出会い、卒業記念に1度だけライブを実施。その後全員が大学進学で上京する頃に改めてLUNKHEADを再結成し、下北沢のライブハウスを中心に活動し始める。2004年1月にシングル「白い声」でメジャーデビュー。自主企画イベント「みかん祭」を主催するなど精力的に活動を行い、ライブバンドとしての評価を高めた。結成10年目に突入した2008年3月には初のベスト盤「ENTRANCE~BEST OF LUNKHEAD age18-27~」をリリース。2010年にメンバーの脱退により桜井雄一(ex.ART-SCHOOL)が加入。2015年1月にはメジャーデビュー10周年イヤーを締めくくるライブイベント「一世一代のみかん祭」を東京・新木場STUDIO COASTにて開催し、同年4月にはレーベルを徳間ジャパンコミュニケーションズに移籍して10枚目のアルバム「家」をリリースした。11月にアコースティック編成のワンマンツアーを行い、2016年3月には東京・TSUTAYA O-EASTにてワンマンライブ「千客万来のみかん祭」を開催する。

LUNKHEAD東名阪アコースティックワンマンツアー~Very Best of Acoustics~
2015年11月22日(日)東京都 渋谷7th FLOOR
2015年11月26日(木)大阪府 cafe Room
2015年11月27日(金)愛知県 ell.FITS ALL
千客万来のみかん祭
2016年3月19日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST