思いっ切り歌謡曲みたいにしちゃおう
──HIROSHIさんはいかがですか?
HIROSHI 僕は「Please Please Please [Re-Recorded]」ですね。再録にあたって日本語詞に書き直したんです。この曲が本当に大好きで、ライブではお客さんたちの歌声を聴きたくてやっているところもあって。オリジナルバージョンでは歌謡曲っぽさがあるサウンドに英語詞を乗せているので、それならこのタイミングで思いっ切り歌詞も含めて歌謡曲みたいにしちゃおうと。歌詞の内容は、普段あんまり書かないくらいのちょっとクサイ感じにしてみました。僕が書いてるんだけど作詞家の人が書いてる設定で。
HAYATO 設定があるんや(笑)。
HIROSHI 歌うほうが「え? ちょっとこの歌詞恥ずかしくないですか?」と言って、作詞家が「いいよ。これぐらい歌っちゃえよ!」と言っているようなテイでやってた(笑)。
WATARU 意外と設定が凝ってた(笑)。
HIROSHI 実はね(笑)。この曲はベタな歌詞にも耐えうる余白があるというか、より素敵なものになるはずって感じてたから。一度書いた歌詞をもう一度書き直すのはめちゃくちゃ難しかったけど、それが自分はできるんだということも発見できたので、ソングライターとしての柔軟性が高まったなと思います。ぜひリスナーの皆さんにもカラオケとかで歌ってみてほしいですね。たぶん口が気持ちいいので。
HAYATO じゃあ僕は……いっぱいあるので選ぶのが難しいけど、僕たちをメジャーのフィールドに上げてくれた「By Your Side [Re-Recorded]」(オリジナルバージョンは2017年6月リリースのメジャーデビューEP「BY YOUR SIDE EP」収録)で。ライブには欠かせないこの曲を、ベストアルバムの1曲目に入れられたのがうれしかったです。アレンジはライブのときに近い感じで、レコーディングも楽しかったです。
──個人的に「Hole [Re-Recorded]」のアレンジが生っぽい感じで好きなのですが、この曲はどういう思いでアレンジしていったのでしょうか? 収録曲の中では、オリジナルバージョンが2015年リリースと一番の古株ですよね。
HIROSHI 2023年7月にやったLINE CUBE SHIBUYA公演(FIVE NEW OLD初のホールワンマン「Painting The Town」)のときに、この曲を演奏するにあたって「同期にあまり頼らずに有機的な音楽にしたい」という話になって。そのときのライブアレンジが今回の再録のベースになっています。FIVE NEW OLDがポップパンクから、ジャズやR&Bの要素を取り入れた今の音楽性になるまでの過渡期の曲なので、再録するにあたっては、あえてオリジナルから変えすぎないことで自分たちの成熟が深く伝わるんじゃないかなと思いました。個人的に変化を感じたのはコーラス部分。僕はよく多重録音するので、これまでのその経験が生かされていて、1人でやっていると思えないようなコーラスワークになっていると思います。
今だから聞けること
──これまでの活動を振り返ってみて、お互いに「あのとき実はこう思っていた」ということや、今だから言えること、今だから聞いてみたいことはありますか?
SHUN 僕がまだサポートだったときに、だいたい打ち上げで酔っ払うとHAYATOくんとWATARUは「メンバーになれ!」ってしつこく言ってきてたんですよ。でも……HIROSHIくんだけは言ってくれなかったの、ちょっと嫌だった(笑)。
HIROSHI あー(笑)。いや、軽々しく言っちゃいけないなと思ってたんですよね。
WATARU めっちゃ軽々しく言ってた(笑)。
HIROSHI 立場上、俺のひと言が重くなってしまうかもなと思って。でもあのとき、WATARUとHAYATOが「やってくださいよ!」って言ってくれてたのはめっちゃ大事やったと思う。
HAYATO にぎやかし担当というかガヤのほうね(笑)。
HIROSHI それもめっちゃ大事だから。でも俺がそこに軽く乗っかっちゃいけない、覚悟が決まった状態じゃないと俺からは言えないなって。俺は人に甘えちゃうところがあるから、SHUNくんの優しさにそのまま甘えるのは違うって当時は思ってた気がする。だから然るべきタイミングでちゃんとお店をセッティングして伝えました。
SHUN 慎重になってるなというのは十分伝わってたからね。
HIROSHI うんうん。あとは、なんだろうね?
WATARU あんまりないんだよなあ。
SHUN わりと思ったことはすぐ話してるもんね。
HIROSHI ずっと一緒にいてなんかしゃべってるからな。
──確かに、先ほどの撮影のときも皆さんずっと一緒にいていろいろお話されていましたね。
HIROSHI そうなんですよ。うーん、最近メンバーに言われて一番ハッとしたことでいうと、WATARUの「HIROSHIは俺の人生も背負ってるんやで。一緒に音楽やろうって言ったやろ。だからそれは忘れんといてなって」という言葉で。メンバーの中で僕が一番気持ちの浮き沈みがあるというのもWATARUから言われたことがあって、自分ではそんなつもりなかったけど、知らず知らずのうちにみんなに迷惑をかけていたかもしれないなと。30代を迎えてからのここ数年、不安や焦り、自分の暮らしに対しての飽きみたいなものを感じていて。そういう漠然とした不安の中で、どういうマインドセットにすればいいか混乱していた時期に、WATARUからさっきの言葉を言われて。
SHUN ちょっとしたプロポーズの言葉みたいだね。
一同 ははは。
HIROSHI (笑)。やっぱり小学校のときから一緒に過ごしてきて、今も同じバンドでやっていけているのはうれしいですね。幼馴染のWATARUが音楽で一生食っていけるかどうかっていうのは僕にとっての命題だなと。自分の気持ちが落ちることで、そこに対する不安を感じさせるのはよくないなと反省しました。
WATARU バンドメンバーとして伝えた部分もあるけど、どちらかというと幼馴染として言ったところが強かったかな。やっぱりこう、自分にとってバンドってひと言で表すと人生やし、自分は音楽をするために生まれてきたと思ってるので。僕が改めてこの場を借りて言うとしたら、メンバー全員にありがとうって伝えたいですね。そしてこれからまた新しいFIVE NEW OLDを一緒に作っていきましょう、という。
HAYATO 胸アツやね。僕もいろいろ振り返っていたんですけど、その都度その都度気になったことは基本的に言っちゃってるなと。ただ、去年から僕はバンドのリーダーに就任したんですよ。もともとは誰か1人が偉そうに意見を言う、みたいなバンドになるのが嫌だったんです。でも去年「そろそろリーダーを決めてもいいんじゃない?」という話になったことがあって。
──結成14年目にして。
HAYATO はい(笑)。だからこの機会にメンバーに「俺がリーダーで本当にいいんですか?」と聞きたい。
SHUN これに関して言うと、メンバーそれぞれが個人で活動できるスキルを持っていることもあって、ある種バンドらしくない関係性になる瞬間が時折あって。そういう意味では、やっぱり最初に「バンドやろうぜ!」と熱量を持ってHIROSHIくんを誘ったHAYATOくんが今でも一番バンドマン然としてるというか、「FIVE NEW OLDってバンドだな」と思わせてくれる人なんです。だからその役割を担ってほしいというか。HAYATOくんが旗を振ってるところを見ると、一緒に力を合わせて目的地にたどり着こう、という気持ちになれるし、リーダーとして適任だと思いますけどね。
HAYATO がんばります(笑)。実は楽曲制作のときとかに、ドラマーだし曲も書いてないしという部分で、言おうと思ったことを1回飲む込む癖があって。でもリーダーという役職に就いたことで、しょうもないことでも言ってみたら、案外賛同してもらえることもあって。それでバンドの運命が変わるかどうかはわからないし、バカみたいなことかもしれないけど「もっと楽しもうぜ」「もっとシャキッとしろよ」「遅刻厳禁な」ということも言いやすくなりましたね。
──そもそもなぜ14年目にしてリーダーを決める流れに?
HAYATO これはぶっちゃけ、何年か前からSHUNくんに飲みながら「リーダーやったら」と言われていたんです。俺の中ではHIROSHIはたぶんやりたくなさそうやから、WATARUが向いてんちゃうかなと勝手に思ってたけど、SHUNくんの言葉もあって最終的には「やるわ」って。
HIROSHI うちのバンドに関してはリーダーだけが何かする、責任を背負うっていうことじゃないからね。
SHUN そうそう。
HIROSHI HAYATOは一番メンバーのことを見ていると思うよ。髪を切ったり、新しい服を着ていたりするとすぐに気付いて、ひと声かけてくれるんですよ。その気遣いもリーダー向きだなと。そういう細かいところも気付いてくれる人ってうちの中だとHAYATOだけなんで(笑)。音の面でもほかの面でも、一番下の部分を支えてくれる人です。
HAYATO リーダー、がんばります!
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SixTONESへの楽曲提供を通して見えたもの