音楽ナタリー Power Push - fhána×アニメ「コメット・ルシファー」シリーズディレクター 中山敦史

作り手たちがのめり込む「コメット・ルシファー」の魅力

“fhánaの冒険”の始まり

──オープニングテーマ「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」の制作の際にはアニメサイドとどういう話をしたんでしょうか?

佐藤 オープニングテーマは「fhánaらしく作ってくれ」としか伺ってなかったんです。でも、もしかしたら本当はいろいろと細かいオーダーをしたかったんじゃないかなって思っていて。実際はどうなんですか?

左から中山敦史、佐藤純一。

中山 実際にオーダーしたのは僕ではないので具体的なことはわかりませんが、僕は最初にオープニングテーマを聴いたとき「きっと細かいオーダーがあったに違いないな」と思ったんですよ(笑)。それくらいアニメに寄り添った楽曲だと感じたので、今fhánaさんにお任せだったと聞いてビックリしました。

佐藤 ありがとうございます。ちょうどfhánaの置かれている状況と、「コメット・ルシファー」のストーリーがシンクロする部分があったと僕は思っていて。fhánaは今年の頭に1stアルバムを発表し、その後はツアーも開催してある意味“活動が一周した”タイミングだったんです。これからfhánaの新しい冒険が始まる、というタイミングで冒険活劇のアニメである「コメット・ルシファー」のタイアップのお話をいただいて。

──バンドの置かれた状況とアニメのストーリーがシンクロすることで、楽曲作りには何か影響がありましたか?

佐藤 これまで僕は自分たちの活動をどこか俯瞰して見ていたんです。“fhánaっていうゲーム”を画面の外で操作しているプレイヤーみたいな視点に立っていたというか。でも「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」を作るときって、僕はもう画面の中に入っていて、プレイヤーではなくて登場人物の視点に立ち、これから訪れるであろう新しい冒険にワクワクしていた。「コメット・ルシファー」というアニメの冒険だけじゃなくて、fhánaとしての冒険も始まると考えたとき、やっぱり駆け抜けるような音楽がいいなと思ったから今回は疾走感のある曲を書いたんです。

towana

towana この曲を作るとき「よしやるぞ!」みたいな感じがfhánaのチームにすごくあって。そういう空気感の中でレコーディングに入れたので、早口で難しい曲ではあるんですけど、集中して短い時間でいいテイクが録れました。

──中山さんはオープニングテーマとして「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」を聴いて、どういう印象を持ちましたか?

中山 アップテンポで畳み掛ける感じがすごくよかったです。「コメット・ルシファー」には戦闘シーンもあるので、こういうテンポのほうが映像も乗りやすいんですよ。僕らみたいな上の世代の人間には「やっぱりオープニングはアップテンポでスピード感があるもの」というイメージがあるので、今作にバッチリの楽曲を書いていただきました。

佐藤 バトル要素とかもあるようなアニメのオープニングって、“マイナー調のロックで速い”みたいな曲が多いと思うんですけど、今回の「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」はサビも明るくて、なおかつ攻めてる曲にしたんです。それは「コメット・ルシファー」が王道的なSFジュブナイル冒険活劇といっても、保守的な内容じゃなくて、すごく攻めた新しい要素がたくさんあると思ったから。だからオープニング曲は、SFジュブナイルモノのこれからのスタンダードみたいな作品が作れたらいいんじゃないかと思って、おこがましいですけど、そういうことを夢見てワクワクしながら作りました。

ひと言もしゃべらないヒロイン

──fhánaの皆さんは視聴者よりもひと足先に「コメット・ルシファー」の本編もご覧になったと思いますが、アニメを観た感想はいかがでしたか?

kevin mitsunaga

kevin 先行配信で1話を観ましたが、もうシンプルに最高でした。好きな要素の塊みたいな作品でしたし、1話の時点では多く語られてない部分もいっぱいあるのでまだ全然先は見えないんですが、気になる要素がたくさんあって。

yuxuki アニメを観て真っ先に思ったのが、ソウゴが乗ってる宙に浮いたバイクに乗りたいなって(笑)。僕は2話まで見せてもらったんですが、1話ではフェリアがひと言も喋ってなくてスゴいなと。

中山 ひと言もしゃべらないヒロインとかいいのかなって、僕も思ってます(笑)。

yuxuki でもめっちゃかわいいんですよね。

中山 オリジナル作品なので紹介することが多くて2話まで観ていただいてようやく話の全容がつかめるという感じですからね。ぜひ2話まで観ていただいて、アニメの世界を堪能してほしいです。

音楽が場面を支配する

──中山さんが考えるアニメにとっての音楽の役割ってどういうものですか?

中山 アニメにとって音楽は“演出の肝”だと考えています。絵だけ追っていくと今どういうシーンなのか意味付けが弱いケースがあって、音楽を入れることによってアニメは完成するんです。逆に言うと音楽の力が強すぎて、楽しいシーンでも悲しい音楽をかけると悲しいシーンになっちゃうこともあって。“音楽の強さ”を注意して使わないと意味付けが変わってしまう、それぐらい音楽っていうのは場面を支配する力のあるものだと思っています。

towana すごい。初めてこういう話を聞きました。

中山 映像の演出が足りないところは音楽に頼ることも多いですから(笑)。常に音楽には助けられています。

yuxuki waga

yuxuki アニメを制作している中で、音楽はどのタイミングで付くんですか?

中山 基本的には絵がすべてでき上がった映像を音響監督さんや音響効果さんにお渡しして、音を付けてもらうんです。極力完成に近い状態でお渡しするというのを心掛けてはいるんですけど、制作状況が悪くなってくると色がなくなり、線が少なくなり……。最終的には絵が文字になってしまうこともあります。画面に「ここで爆発」みたいに書いて。

yuxuki アフレコはどういうタイミングで行うんでしょうか?

中山 アフレコは音楽が付く前の段階なので、絵の状況はもっと悪いですね(笑)。キャラクターの名前しか出てこない画面に声を吹き込んでもらうこともありますから、声優さんの職人技に助けられることは多いです。

towana えー! 口の動きとかもない状態で吹き込むってことですよね?

中山 そうです。キャラクターがしゃべりますよっていうタイミングで、キャラの名前を入れた「ボールド」っていう目印を出すんです。そのボールドが出ている間にしゃべってもらうんです。そこにピッタリ合わせてくれるんですよ。声優さんは。

towana すごーい!

中山 今のところ「コメット・ルシファー」は、そこまでひどい状況にはなってないですから(笑)。そうならないように気を引き締めて作業を進めています。

メジャー1stシングル「TOY」2015年10月28日発売 / 日本コロムビア
初回限定盤 [CD+DVD]1944円 / COZA-1089
通常盤 [CD]1296円 / COCA-16999
アーティスト盤収録曲
  1. コメットルシファー ~The Seed and the Sower~
    [作詞:林英樹 / 作曲:佐藤純一 / 編曲:fhána]
  2. c.a.t.
    [作詞:林英樹 / 作曲:yuxuki waga / 編曲:fhána]
  3. コメットルシファー ~The Seed and the Sower~(Instrumental)
  4. c.a.t.(Instrumental)
アニメ盤収録曲
  1. コメットルシファー ~The Seed and the Sower~
  2. コスモスのように
    [作詞:林英樹 / 作曲:佐藤純一、加藤達也 / 編曲:fhána]
  3. コメットルシファー ~The Seed and the Sower~(Instrumental)
  4. コスモスのように(Instrumental)
テレビアニメ「コメット・ルシファー」 / 10月より放送開始
「コメット・ルシファー」

青く輝く鉱石ギフトジウムに覆われた惑星ギフトと、そのギフトジウムの採掘で栄える街ガーデン・インディゴを舞台に繰り広げられる少年少女の冒険譚。ガーデン・インディゴの少年ソウゴ・アマギやその仲間たちと、鉱石の中から現れた謎の少女フェリアとの出会いと、それがもたらす若者たちの成長と絆を描く。

メガホンを取るのは菊地康仁。「マクロスF」など、本格的なメカバトルと音楽を効果的に使った演出で知られる監督作とあり、巨大ロボット・ガーディアンらを巡る戦闘シーンと、ストーリーの進行にあわせてフェリア役の声優・大橋彩香が歌うエンディングテーマが変化する点も注目ポイントとなっている。

fhána(ファナ)
fhána

佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga(s10rw)、kevin mitsunaga(Leggysalad)という3人のプロデューサーと、女性ボーカリストtowanaによる4人組ユニット。それぞれ個別に活動していた佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaの3人が2009年に出会い、ボーカリストを固定しないユニットとして始動した。2012年秋にはゲストボーカルの1人だったtowanaが正式加入。「僕らはみんな河合荘」「ウィッチクラフトワークス」「ぎんぎつね」「有頂天家族」「天体のメソッド」といったアニメ作品でテーマソングを担当して高い評価を集めた。さらにChouChoや相沢舞のプロデュース、さよならポニーテールやDECO*27の楽曲のリミックスなども行っている。2015年2月には1stフルアルバム「Outside of Melancholy」を発表。翌3月には初のワンマンライブ「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」を開催した。同年10月、アニメ「コメット・ルシファー」とのタイアップ曲を収めたニューシングル「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」をリリース。