Faint★Starのやりたいことを凝縮した「Boyfriend -A.S.A.P-」

──3曲目「Boyfriend -A.S.A.P-」はアルバムのリード曲となっています。この曲がアルバムリード曲に選ばれたのはなぜなんでしょう。

YURIA　「Boyfriend -A.S.A.P-」はFaint★Starのやりたいことを凝縮した曲だと思うんです。

HINA　真骨頂だと思っています。

YURIA　うん。メロディはすごくポップなのにアレンジはEDMっぽかったり、歌詞には世界を意識して英語が使われていたり、Faint★Starのいろんな要素を1つにまとめたのがこの曲なんじゃないかなって。

──そうですね。この曲は恐らく“渋谷系”的なアレンジにすればそれらしくなるはずなのに、ビートが妙に強いんですよね。一聴すると少し不思議だけど、確かにFaint★Starの特色がいろんな形で詰め込まれている。

YURIA　逆にカジ（ヒデキ）さんのリミックスを聴くと「こっちが原曲かな？」みたいな（笑）。

HINA　レコーディングにはすごく時間がかかりました。トマパイ時代も含めて、こんなに英語が入った曲は初めてだったんですよ。覚えてきた英語の発音が全然違っていて、何度も何度も繰り返して……終わったときにはディレクターさんがバタッと床に倒れちゃうぐらい難航しました。

──以前ライブのMCでも「カタカナが苦手だ」っておっしゃってましたよね。

HINA　はい。世界を意識してるんですが、横文字が苦手で。でも、すごく苦労したからこそ思い入れが強い曲になったので、英語の発音も含めてじっくり聴いてもらいたいです。

──「ス ラ イ」は極端なまでに振り切ったEDM路線ですね。

HINA　シングルでも出していた「メナイ」もEDMでしたけど、それを超えたなと思いました。この曲は爆音で聴いてもらいたいです。体内で感じてほしい。

YURIA　あのズンズンくる感じ……ヤバいよね（笑）。あと一人称が「僕」という歌詞はこれが初めてなんですけど、すごく切ない、“僕”の喪失感を感じる曲ですね。

HINA　男の人の気持ちが書かれているので、じっくり意味を考えてレコーディングに挑みました。

──これもトマパイ時代から継承された部分だと思うんですけど、Faint★Starの歌詞にははっきりとした意味を持たせない、言葉遊び的な要素が強いものが多いですよね。「Hurly-Burly」や「Lips!!」はその典型だと思うんですが、「ス ラ イ」は真逆で強いストーリー性を感じます。

YURIA　切なくてグッと来るんですよね。それをこの激しい音に乗せて歌うのが余計に切なくて。

HINA　歌ってると感情が表に出ちゃって泣きそうになります。

得意のオマージュと初のバラード

──「今夜はRIDE ON TIME」はいろいろとオマージュが感じられる曲ですが。

YURIA　まず、タイトルがこれでホントにいいのかな？って思ったんですけど、大丈夫だって言われました（笑）。オマージュって奥が深くて面白いですね。

HINA　私の好みのタイプの曲で、デモをいただいたときはすごくいい曲だなってうれしくなりました。大人っぽい曲なんだけど、歌詞はお茶目なんですよね。「ブギーバック」とか「ライド・オン・タイム」というフレーズがサビに並んでて、ちょっと大丈夫かな？と思いましたが、大丈夫だって言われました（笑）。

──「Lips!!」は先ほど挙げた言葉遊びタイプの中でもかなり振り切った内容ですよね。

HINA　5月にインドネシアでライブをしたとき（参照：Faint★Star、七夕に1stアルバムを世界発売）、直前にこの曲が届いて「今日披露するぞ」ということになって。

YURIA　歌詞にガドガドというインドネシアの食べ物の名前が出てくるんですけど、現地で「ガドガドが出てくるからね」って説明したら「ガドガドー！」ってすごく盛り上がって（笑）。

HINA　アジアの名所とか名産品がたくさん歌詞に入っているので、歌詞カードを読みながら聴いてもらえると楽しいと思います。PUFFYさんの「アジアの純真」みたいな曲になったらいいね。

YURIA　ELO（Electric Light Orchestra）のオマージュと言われていたあの曲の、さらにオマージュのオマージュみたいな（笑）。そんな曲です。

──「Spilt Milk」はこれまでになかったバラード曲ですね。

YURIA　私が一番好きな曲です。私が普段聴いている音楽に近い曲で。バラードとかR&Bのメロディアスな曲をよく聴いてるんです。インドネシアから帰ってきた次の日がレコーディングだったので、覚えるために向こうで聴いてたんですね。ジャカルタに移動する車の中で5時間ずっとリピートしてたんですけど、夕暮れ時のじめっとした空気の中で聴いていたら泣きそうになっちゃって。こういう感情が湧き上がってくる音楽ってすごいなと思ったし、聴いてくれるみんなにもそういう気持ちになってほしいです。あと「Spilt Milk」は「覆水盆に返らず」という意味で、デビュー曲の「koboreteshimattamizunoyouni」も曲調は違うけど同じ意味があって。この2曲が続いているのもアルバムの聴きどころかなと思います。

HINA　トマパイに「ためいきはピンク」（アルバム「PS4U」に収録）という曲があって、私はあの曲の延長線上、第2章にあたる曲だなと思いました。「ためいきはピンク」の女の子がちょっと大人になったのが「Spilt Milk」なのかなって。タイトルを見たときは「Slipknot」と読み間違えて、デモをもらったときコンタクト付けてなかったから「アレッ？」みたいな。違う意味で興奮しちゃいました。