フジファブリック×ライブナタリー特集|共演者アイナ・ジ・エンドと対談&デビュー20周年祝う著名人コメント (2/3)

山内総一郎×アイナ・ジ・エンド 対談

アイナさんの声は表現力の塊

──「フジファブリック×ライブナタリー“FAB FUN”~フジファブリック×アイナ・ジ・エンド~」はフジファブリック側からアイナさんにオファーして実現したイベントだとか。

山内総一郎(フジファブリック) はい。去年の「ARABAKI ROCK FEST.」で「奥田民生アラバキ☆ライダー」というセッションが行われて。民生さん、フジファブリックのメンバー、伊藤大地(Dr)さんのバンドでいろんなゲストの方をお迎えしたんですが、そのときにBiSHも参加していたんです。いろんなミュージシャンから「アイナさんのボーカルはすごい」と聞いてたんですけど、実際に歌を聴かせてもらって「本当にすごいな」と。僕ら自身が「アイナさんのワンマンを観てみたい」と思っていたし、ライブナタリーからお話をいただいたときに、すぐに対バン相手としてアイナさんの名前を挙げさせていただきました。

アイナ・ジ・エンド ありがとうございます。お話をいただいたときは「びっくりした」というのが正直な気持ちで。アイナ・ジ・エンドとして対バンはやったことがなくて、初めてお誘いいただいたのがフジファブリックさんだったんですよ。

左から山内総一郎(フジファブリック)、アイナ・ジ・エンド。

左から山内総一郎(フジファブリック)、アイナ・ジ・エンド。

山内 そうなんですね!

アイナ はい。ライブ自体、ソロとしてはまだ数えるほどしかやったことがなくて。ただフジファブリックさんとご一緒すればいい化学反応が生まれるだろうし、ぜひやらせていただきたいなって。

山内 よかったです。アイナさんは一聴しただけで個性がすごく伝わるし、存在感が本当に大きくて。いろんなタイプの楽曲を歌ってらっしゃいますけど、声自体はまったくブレず、まさに表現力の塊だなという印象ですね。

アイナ ……うれしいです。褒められることに慣れてないんですけど(笑)。

アイナ・ジ・エンド

アイナ・ジ・エンド

ソロになってどんどん素直になれている

──アイナさんがフジファブリックを知ったきっかけは?

アイナ もともとはラジオで流れているフジファブリックさんの曲を聴いたのが最初ですね。

山内 地元の大阪にいた頃ですか?

アイナ そうだったと思います。自分でちゃんと聴き始めたのはBiSHになってからで。ひなっちさん(日向秀和)が主催した「HINA-MATSURI」というイベントにボーカルで誘っていただときに「好きな曲を歌っていいよ」と言われて、「陽炎」を歌わせてもらったんですよ。

山内 ありがとうございます。

アイナ 好きな曲はたくさんあるんですけど、山内さんがソロで歌っていらっしゃる「白」もすごく好きで。あの曲のミュージックビデオ、本当に雪の中で撮ったんですよね?

山内 そう、寒くてヤバかったです(笑)。長野県の蓼科高原で撮ったんですけど、スタッフの皆さんにとっても過酷だったと思いますね。ソロ名義で曲を発表するのは「白」が初めてだったので、今までと違った撮り方をしたくて。

アイナ 景色もすごくキレイだったし、歌詞の内容もプラスされて、儚さがにじみ出てるのがすごくいいなと思いました。

山内 僕もいろいろ感じてましたね。誰も孤独からは逃れられないけど、ソロで歌うと特にそれが色濃く出てしまうというか。普段はバンドをやっているから、1人で歌うとどうしても心もとないんですよね。アイナさんはどうですか? ソロになって。

アイナ どんどん素直になれている感じはあります。BiSHのときは女性6人で8年間ずっと一緒にいて。「この6人でやっていくにはどうしたらいいか」と考え続けていたし、よくも悪くも呪いにかかっていたんだと思うんです。

山内 呪いですか。

アイナ はい。でもライブになるとまた違って。バンドの方もそうだと思うんですけど、「いいライブがしたい」「お客さんに受け取ってほしいものがあるから歌うんだ」という気持ちが出てくるじゃないですか。BiSHもそうで、気が付くとみんなが同じ方向を向き始めるんです。その瞬間だけはメンバーと共鳴できたし、それがすごく幸せで。そのために8年間もやってたんだろうなと思うんですけど、今は1人になって、呪いは解けたはずなのにどこか心寂しいんですよね。同じ方向を向いてくれる仲間が急にいなくなって「自分1人で、どう舵を取っていこう」と考えることもあるし。「どうしよう」みたいな瞬間が月に2、3回、急に訪れますね。

山内 わかるような気がします。そういう瞬間ってふと来ますよね。

自分の恥部が出ている曲のほうが愛おしい

アイナ 「PORTRAIT」も聴かせていただいたんですけど、そのときも「寂しい時期なのかな」と感じて。勝手なイメージですけど……。

山内 曲を書いてたときはめっちゃ寂しかったですね。みんな孤独だとわかってはいるんだけど、それが精神的にきちゃうこともあったり。そういうときに曲を書いて、あとで聴いたときに「こんな自分も好きかも」と思ったりするんですけど(笑)。

アイナ 半分半分じゃないんですか? 「こんな自分も好き」と「恥ずかしい」の。

山内 あ、確かに100%好きってことではないですね。孤独を感じている自分を「めんどくさいな」と思うこともあるし。ただ時間を置いてから聴くと、自分の恥部みたいなものが出ている曲のほうが愛おしく感じるんですよ。

アイナ 懐が深いんでしょうね。そういう自分も受け入れられるキャパがあるというか。

山内 懐はわからないですけど(笑)、「そういう状態のときにしか書けない曲もあるだろうな」とは思ってますね。

アイナ そうなんですね。さっきおっしゃってた恥部みたいな部分って、あんまり人に見せないですか?

山内 全然話さないんですよ。最近気付いたんですけど、自分はすごくおしゃべりでメンバーともよく話すんだけど、そういう部分は話してなかったみたいです。自分の恥ずかしい部分に関してはどうやらストッパーがかかるみたいで。

アイナ だから曲にするのかもしれないですね。そのことに気付いたのって、いつ頃ですか?

山内 去年ですね。

アイナ え、去年ですか!? それまではどうやって生きてこられたのか……。

山内 「ギター弾いて歌って楽しい」という感じで生きてました(笑)。それは今も変わらないんですけどね。

アイナ 興味深いです。曲を聴いて、歌詞を読んでいても「私とは違う感じの孤独があるんだろうな」と思っていたので、こうやってお話を聞けるのは楽しいです。

山内 自分のことってよくわからないですからね。それをちょっとでも明確にしようと思って、最近、メモを取るようにしてるんですよ。悩み事とかも書いて、それが歌詞につながることもあるので。

左から山内総一郎(フジファブリック)、アイナ・ジ・エンド。

左から山内総一郎(フジファブリック)、アイナ・ジ・エンド。

誰かの青春の一部になるようなアルバムを作りたい

──アイナさんはステージで孤独を感じることはありますか?

アイナ ステージで孤独を感じることはないですね。さっき言ったみたいに心寂しいところはあるんですけど、お客さんはお仕事や学校でがんばっていて、安くないチケット代を払って来てくれてるわけじゃないですか。中には「ずっと引きこもっていたけど、アイナのライブだけが楽しみでギリギリ生きてた」みたいな子もいて。そういう人たちと一緒にいるだけで、私はまったく孤独じゃないです。ステージに出るまではめっちゃ怖いし「私なんか誰にも受け入れてもらえない」みたいな気持ちになるんですけど、ステージに上がって「アイナ!」って呼ばれると「OK!」みたいな(笑)。

──やっぱりオーディエンスの存在が大きい、と。

アイナ すごく大きいし、ありがたいです。フジファブリックさんの「音楽」(アルバム「PORTRAIT」に収録)でもそういうことを歌ってますよね。

山内 そうですね。

──「届けたい人がいる現在を 信じられないだろう」というフレーズもあります。

アイナ 私はBiSHになる前、秋葉原で1カ月ビラ配りして、30人集めてやっとライブをやらせてもらったりしてたんです。その当時を思うと、曲をリリースして、聴いてくれる人がいて、ライブができることってミラクルだと思います。

アイナ・ジ・エンド

アイナ・ジ・エンド

山内 「音楽」はメモがもとになってるんですよ。あの曲を書いているときは声帯の調子がよくなくて、休まなくちゃいけなくて。そのときの気持ちをバーッと書いてるんですけど、やっぱり自分は音楽に救われているし、バンドメンバーもいて、お客さんもいてくれて。届けたい相手がいるなんて、こんな最高なことはないよなと。ファンの皆さんと一緒に成長させてもらってるという気持ちも強いですね。

──アイナさんも「音楽に救われている」という感覚はありますか?

アイナ ありますね。私はBUMP OF CHICKENさんが大好きなんですよ。この前ライブを観たときも最高すぎて、1曲目からずっと泣いてて。そのときに「もっと音楽と向き合わないと」と思ったんです。BUMPのアルバムって全部が誰かの青春の一部になってるんですよ。私も「中学のときはこのアルバムを聴いてたな。高校のときはあのアルバムを聴きながら通学してたな」という思い出があって。だから私も誰かの青春の一部になるようなアルバムを作りたいし、そのためにはもっともっと音楽と向き合わなきゃなって心から思って。おうちに帰って、弾けないくせにギターをずっと弾いてました。

山内 その気持ちはすごくわかります。僕もこの前、L'Arc-en-Cielのライブを観させてもらって。演奏がめちゃくちゃうまいし、あんなにも長く、大きな規模で活動を続けられるってすごいことだなと。僕も家に帰って、発声練習しましたね(笑)。

観てくれた方が帰りに居酒屋に行きたくなるライブに

──「フジファブリック×ライブナタリー“FAB FUN”~フジファブリック×アイナ・ジ・エンド~」、とても楽しみです。どんなイベントにしたいと思っていますか?

アイナ そうですね……ARABAKIでご一緒させていただいたときは、フジファブリックの皆さんは寡黙なイメージがあって。でも「めっちゃおしゃべり」とおっしゃってたので、私も皆さんのおしゃべりな部分を引き出したい(笑)。

山内 (笑)。おしゃべりなんだけど、しゃべりが下手なんですよ。「俺は今、何をしゃべってるんだろう?」という瞬間もあって。

アイナ わかります(笑)。だけどファンの方は、そういう姿も見たいみたいですよ。イベントではあまり気負いすぎず、お客さんと一緒に楽しく過ごせたらいいなと思ってます。

左から山内総一郎(フジファブリック)、アイナ・ジ・エンド。

左から山内総一郎(フジファブリック)、アイナ・ジ・エンド。

──アイナさんはMC得意ですか?

アイナ 「歌ってるときとのギャップがある」とよく言われますね。今ツアーをやってるんですけど、「ドッグランしよう!」って、客席に緑の人工芝を敷いてるんですよ。「犬になろうぜ!」「憧れはシベリアンハスキー!」って叫んでます。

山内 さらに楽しみになってきた(笑)。「ワンワンワン」って歌う曲(「ZOKINGDOG」)もありますよね。

アイナ そうなんです! 声出しも解禁になったので、みんな「ワンワンワン」って歌ってくれてます(笑)。ふざける曲もあるけど、もちろんガチでちゃんと歌う曲もありますし。

──山内さんはイベントに対して、どんな意気込みがありますか?

山内 前回のライブナタリーではVaundyくんと対バンしたんですよ。両方のリスナーはそんなに被ってないだろうなと思ってたんだけど、ライブが終わったあと、お客さんがすごく幸せそうに帰路についている姿を見て。今回のアイナさんとのツーマンでも、観てくれた方が「めっちゃよかった!」って笑顔になって、帰りに居酒屋に行きたくなるようなライブにしたいですね。あと、僕としてはやっぱりアイナさんのライブが楽しみです。

アイナ ……ちなみに、一緒に歌えたりしますか?

山内 ぜひやりましょう!