難しい曲を難しく聴かせない

──「High Hopes」のビートは打ち込みと生ドラムが混在しています。前作の収録曲「ライフイズビューティフル」では打ち込みのドラムを生楽器に変えたとおっしゃってましたが、今作ではそれを混在させているんですね。

小室　打ち込みが鳴る中で生のドラムを叩くアプローチって今まで僕らの曲にはなかったので、ちょっと挑戦してみたくなったんです。打ち込みのハットと絡み合う生楽器のフレーズを考えるのは難しかったけど、楽しかったですね。

オキタ　今までのétéの曲にはゆっくりとしたテンポから激しい展開になる曲ってなかったんですよ。メロディを思い付いた段階では静かな曲にしてしまおうと思っていたんですけど、響の生ドラムも入るわけだし「展開で遊べるな」と思って。何より新しいことに挑戦してみたくて、作り始めたときとは違う仕上がりになった曲ですね。

──4曲目「Over」の曲中にはクラップが入っていますが、曲の前半と後半でクラップが入る拍が微妙にズレているんですよね。そこがすごく気になりました。

ヤマダ　よく気付きましたね（笑）。パズルみたいな曲だと思います。

オキタ　この曲は基本的には四つ打ちなんですが、ベース、ギター、ドラム、打ち込みのクラップすべてのノリが違うんです。5つか6つくらいの音が違う法則で鳴っている感覚ですね。どの音に注目しても楽しめる曲だと思います。

小室　四つ打ちだけどドラムはすごく難しかったな。ちゃんと自分の中でどこの音を鳴らしているか理解していないと叩けないんですよ。

──この曲をライブでどう再現するのか気になりますね。

オキタ　「Over」はライブでやるのが難しい曲ですね。クラップを叩いてもらいたいけど、ひと筋縄ではいかないクラップだし……。

ヤマダ　難しい曲だけど、この曲でオーディエンスを躍らせたいですね（笑）。

オキタ　難しいことを難しく聴かせないのが僕らの目標なんです。だからこういう難しい曲で盛り上げられたら僕らの勝ちだなって。

遠征中に生まれた名曲

──「何者でもない」にはストリングスが入っていて、étéの新境地を感じました。

オキタ　これは遠征中の車内でiPhoneのGarageBandで作った曲です。「ストリングスをこんな感じで乗せてみようかな」みたいな感じでフレーズを考えていて、その時点でサビはほとんど完成していました。実は今回のミニアルバムに入れるつもりはなかったんですけど、「名曲になりそうだから入れたいな」と思っちゃって（笑）。ミニアルバムの最後に“どう聴いてもいい曲”を聴いてもらいたくなった。

小室　この曲に関しては特に手直しすることもなくて、トラックは完全にオキタが作りました。「こうしたほうがいい」みたいな提案もしなかったよね。

ヤマダ　あとはこの名曲をどうライブで表現するかですね。「何者でもない」に限らず、ライブで再現するのが難しい曲がいくつかあるので。

──étéの楽曲ってどの曲も演奏の難易度が高いですよね。

オキタ　どの曲も難しいです。僕らスタジオに入って合わせることを部活と呼んでいるんですよ。

ヤマダ　完全に部活だからね。同じ箇所をひたすら繰り返して練習する。

小室　ちゃんと遅いテンポで弾けるようになってからだんだん速くするんですよ。吹奏楽部とかでやってる合奏とたぶん一緒。

ヤマダ　CDは完成したけど、ライブだとアレンジが全部違うから、また部活をがんばらないといけません（笑）。

変化がないのはつまらない

──発売を延期したとはいえ短いスパンで音源を制作していますし、音楽性もどんどん幅広くなっていると思います。今年の活動がどのようなものになるのか楽しみですね。

オキタ　僕らは音源を出すたびに、これまで蓄積してきたものを拡張させる作業と、足場を固める作業を繰り返しているんです。もし次回作をリリースする機会があれば「episode」で提示したスタイルを固めて自分たちのものにしたうえで、新しいアプローチにも挑戦したいですね。やっぱり変化がないのはつまらないので、どんどん深く、強くしていきたいと思っています。

──昨年小室さんはレーベルメイトの面々と新しいバンド・マオエニア（参照：ぜん君。ましろ、水谷和樹、été小室が新バンド・マオエニア結成）を結成しました。個々がそれぞれ違う経験を積んでいくのも面白いですね。

小室　マオエニアのライブはすごく楽しかったですね。étéで叩くドラムとは趣向を変えているんですよ。だから新鮮な気持ちでライブに取り組めました。

オキタ　僕もマオエニアのライブを観に行ったんですけど、そのときに「こんなドラム叩いちゃった」みたいにうれししそうに話していて（笑）。個々の活動で得たものをétéに持ち帰ってきてくれたらうれしいですね。

ヤマダ　オキタもソロ活動やればいいじゃん。

オキタ　いや、まあ僕はバンドで曲を作れていればいいからなあ。

──皆さんそれぞれ、何か挑戦したいことはありますか？

ヤマダ　僕は自分主体のプロジェクトをいつかやってみたいと思っています。ただ、なかなかタイミングがつかめなくて、本格的に始めるのはいつになることか……。

小室　僕はシンプルに「étéにこんなジャンルも取り入れたい」みたいなことをよく考えるんですよ。

オキタ　たまに話すよね。「こういうジャンルの曲どうかな？」って話をした2週間後にデモを持ち寄ったりして。もっといろんなことに挑戦してみたいのは僕も同じかな。それ以外で言うと、僕はライブが好きなのでもっと大きな会場でやりたいですね。まだまだ僕らのことを知らない人は多いので、少しずつでも知ってもらって、いつか大きいステージでétéのライブを見せつけてやりたいですね。