été|普通じゃない音楽を鳴らす3人

コドモメンタル、STEEL STREET、CINRA, Inc.の3社協賛で “未検出なアーティスト”を発掘する目的で今年2月より行われた「404 AUDITION」。このオーディションの優勝バンド・étéが2ndミニアルバム「Burden」を12月5日にリリースした。

2016年に結成されたétéは、オキタユウキ(G, Vo)、ヤマダナオト(B)、小室響(Dr)からなる3ピースバンド。「404 AUDITION」を主催したレーベル・コドモメンタルINC.より発表される「Burden」には、ポストロックやハードコアといったサウンドを軸にしながらも、ポエトリーリーディングの手法を用いた独自の音楽性を前面に押し出した楽曲が並べられている。音楽ナタリーではメンバー3人にインタビューを実施。各メンバーのバックボーンやミニアルバムの制作プロセスなどを追いながら、étéというバンドのオリジナリティについて語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦

étéの音楽性が見えてきた「眠れる街の中で」

──そもそもétéはどういう背景で生まれたバンドなんでしょうか?

オキタユウキ(G, Vo)

オキタユウキ(G, Vo) étéは今年で結成3年目のバンドなんですけど、僕とヤマダ(ナオト)はもともと別のバンドで一緒に活動していたんです。前のバンドのボーカルが脱退したことをきっかけに僕がボーカルをやることになって、「せっかくだから新しいバンドをやろう」という話になって生まれたのがétéですね。

ヤマダナオト(B) 結成当時は今の音楽性とはちょっと違ったんですが、去年の8月に小室(響)が加入してから、étéとしてどういう音楽を鳴らすべきかをけっこう模索してきた感覚はありますね。

──あとから加入した小室さんはétéというバンドに対してどういう印象を持っていましたか?

小室響(Dr) ほかのバンドと違って、けっこう難しいことをやろうとしてるバンドだなと思ってました。それと、オキタの声が特徴的でバンドの武器になってるなと。

オキタ よく「声が特徴的だ」って言われるんですけど、ボーカルをやる前は全然意識したことがなかったんです。ボーカリストとして歌うようになって初めて「あ、自分の声って少し変わっているのかもしれない」と思ったくらいで。そこに気付いたからポエトリーリーディングの要素とか、今のétéの音楽性が見えてきた感覚はありますね。

──結成当初のétéはどんな音楽性のバンドだったんですか?

オキタ 最初はシンプルなギターロックっぽかったんです。ポエトリーリーディングが好きだったので、語りが入った曲もあるにはあったんですけど、明確に自分たちの武器になるとは認識していなくて。今回のアルバムにも収録されている「眠れる街の中で」という曲ができたときに、今までとは違う手応えを感じたんです。ポストロック、ハードコアのようなバンドの要素にポエトリーリーディングの手法を融合させた音楽を突き詰めていったら面白いんじゃないかと思って、今のような音楽性にたどり着きました。

──そもそも皆さんの音楽のルーツはどういうものですか?

ヤマダ 僕のルーツと言えるのは東京事変ですね。亀田誠治さんのベースラインを練習したり、ボーカルや歌詞を前に押し出したサウンドを研究したりするために、すごく聴き込んだバンドです。

小室 今の僕らの音楽性とは一致していないんですけど、僕はX JAPANとかL'Arc-en-Cielが好きで。ドラマーとしてというよりは、メロディに惹かれてよく聴いてました。

オキタ 僕は初めて買ったアルバムがBUMP OF CHICKENだったので、ギターロックが音楽への入り口なんです。そこからtoeのようなポストロック、日本語のヒップホップやポエトリーリーディング、海外のハードコアとかいろいろな音楽に触れてきて。

ヤマダナオト(B)

ヤマダ 遠征のときは各々が好きな曲を流して薦め合ったりするんですけど、この間全員で盛り上がったのはUVERworldだったね。

オキタ 3人共好みはバラバラなんだけど、UVERworldは世代的にドンピシャなバンドなんですよね。車の中でかかるとテンション上がる(笑)。

小室 間違いない。

ヤマダ 昔の曲で盛り上がることはもちろんありますけど、étéはオキタの歌詞と歌を前面に押し出すことで成り立っているバンドなので、曲作りにおいてはオキタの持ってくる曲をみんなで聴くことが多いですね。

いい意味で浮いてた「404 AUDITION」

──バンドにとって大きな転機となったのが8月に最終審査が行われたオーディション「404 AUDITION」でグランプリを獲得したことだと思います(参照:「404 AUDITION」の覇者・eteが12月にコドモメンタルより新作リリース)。そもそも、オーディションにはどういうきっかけで参加したんでしょうか?

オキタ 今年の3月に「I am」というシングルをリリースしたタイミングで、いろんなオーディションに挑戦してみようって話をして。ヤマダがいろんなオーディションを探してエントリーしてくれてたんですけど、その中の1つが「404 AUDITION」だったんです。

ヤマダ いくつか有名なオーディションにも参加したんですけど、どれもセミファイナル止まりくらいだったんです。でも「404 AUDITION」のときはライブ審査で自分たちでもいい演奏ができたなって自覚があって。

オキタ 自分で言うのも変ですけど、東京エリアのファイナル審査の中ではétéが断トツだったと思います(笑)。

小室響(Dr)

小室 いい意味で浮いてたんですよ。僕らのような音楽をやってるバンドはほかにいなかったし、オキタのような特徴的な声のボーカルもなかなかいないし。もちろんオキタに負けないように、僕とヤマダも演奏力は磨いてきましたし。けっこう自信を持って挑めたオーディションでした。

──グランプリを獲得したことでコドモメンタルINC.に所属することになったわけですが、レーベルの印象はどういうものでしたか?

オキタ 正直なことを話すと、オーディションを受けるまでコドモメンタルのことをあまり知らなかったんです。調べてみたらアイドルやソロのシンガーソングライターが属しているレーベルみたいで、当時はまだバンドが所属していない状態だったんですけど(のちにMOP of HEAD、The Taupeが所属)、鳴らしている音楽には自分たちに通じるものがあるような気がして。

ヤマダ もともと僕らはアイドルさんとかに疎かったんですけど、コドモメンタルに所属することになって、いろんな現場を見させてもらって。ぜんぶ君のせいだ。さんのライブを観たときは圧倒されました。僕らは僕らなりのやり方で、観客を圧倒しなきゃいけないんだって、強く思った記憶があります。

オキタ コドモメンタルのアーティストはみんな熱量がすごいんです。ライブはパワフルだし、制作のスピード感もある。毎月全国を飛び回ってて、すごく根性のある活動を続けているし、僕らも負けてられないですね。

ヤマダ 周りから見たらコドモメンタルって普通のレーベルとはちょっと違うように見えるかもしれませんけど、音楽に対してすごく真摯なレーベルなんです。レーベルの社長に初めてお会いして所属アーティストになることが決まったとき、すごく長文のメールをいただいて本当に音楽を愛している方がレーベルをやってるんだってことが伝わってきました。

オキタ 誰もが知ってる大きいレーベルではないかもしれませんが、小さくてスタッフも少人数でやっているからこそ、各アーティストに目が行き届いていると思うんです。プロモーションであったり、細かいディレクションだったり、今まで僕らが3人だけでやってたときには手が届かなかったところをレーベルにカバーしてもらっています。

──レーベルに所属するようになって変わったのはどんなことですか?

オキタ 曲作りに関しては変わらず3人でやっているので変わっていないんですけど、それ以降のレコーディングやプロモーションは何もかもが変わった感じがしています。それこそ、音楽活動をしていくうえで関わる人の人数が大幅に変わって、今までの規模とはまったく違う活動ができていると思います。

シンプルなのはつまらない

──バンドではどういうプロセスで曲を作っているんですか?

オキタ 基本的にはまず僕が全パートのデモを打ち込んで、2人に聴いてもらうんです。それぞれのパートのフレーズを練ってもらったあとに、セッションしながら曲を完成させていくことが多いです。

ヤマダナオト(B)

ヤマダ オキタの曲はとにかくセクションが多くて展開も目まぐるしいんです。だからベースだったらいかに自然に各セクションをつなげるか、どうやったら聴き手に違和感なく聴いてもらえるかを重視してベースラインを作っています。

小室 ドラムはメロディの邪魔をしないことを前提にしつつも、いかに複雑なフレーズを叩いて自分の色を出せるかっていうところに気を付けています。

オキタ メンバーそれぞれ普通のことをしたくないと思っている節があるんですよね。面白いと感じる部分はそれぞれ違うと思うんですけど、「シンプルなのはつまらないよね」って感覚は全員が持ってる。

ヤマダ 複雑なことをやりつつ、聴いてもらっている人に複雑さを感じさせないようなプレイが理想だと思ってるんです。étéの曲は変拍子が多いんですけど、ライブでお客さんが違和感なくリズムに乗れるようなグルーヴを出すために、ベースラインはけっこう工夫しています。響は変拍子が多くて大変じゃない?

小室 そんなに大変だとは思っていないかな。曲に合わせて表現したいこと、叩きたいことをハメているだけだから、もはや変拍子だと思っていないかもしれない(笑)。

ete「Burden」
2018年12月5日発売 / コドモメンタルINC.
ete「Burden」

[CD] 1500円
CMI-0043

Amazon.co.jp

収録曲
  1. DAWN
  2. ドルシネア
  3. 眠れる街の中で
  4. デッドエンド
  5. 眠れる街の中で
  6. Burden
  7. It
  8. close.
été(エテ)
été
オキタユウキ(G, Vo)、ヤマダナオト(B)、小室響(Dr)からなる3ピースバンド。ポストロック、ハードコアといったジャンルのサウンドを軸に、ポエトリーリーディングを取り入れた独特な音楽性で注目を集める。2018年8月に実施されたオーディション「404 AUDITION」でグランプリを獲得し、コドモメンタルINC.の所属に。同年12月、初の全国流通盤となる新作ミニアルバム「Burden」をリリースした。