「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」TOSHI-LOW(BRAHMAN / OAU)インタビュー|「やりたい人は何があってもやる」コロナ禍で見えたバンド本来の姿

ニューアコ開催は反骨心もあった

──バンドシーン全体についてはどう捉えていますか?

そこまで興味ないよ(笑)。自分たちと周りの人たち、自分が愛する音楽をやってる人たちのことしかわからないから。そもそも一丸となって何かをやることが嫌いだから、こういう活動をやってるわけで。もちろん社会的な役割は果たしたいと思うけどね。自分たちができる応援はするし、寄付もするけど、そのことと「バンドシーンに対してどう思う?」ということは関係ないというか。

──では、フェスに対しても……?

TOSHI-LOW

それも同じじゃない? 似たようなメンツで、夏祭りみたいなフェスが増えてきて。それはそれで悪いことではないけど、本来の姿とは違うと思っていて。来年も開催できなければ潰れるフェスが出てくるだろうけど、それでもやろうという意思を持った人たちは、また小さなところから始めるだろうし。

──OAUがオーガナイズする「New Acoustic Camp」は今年も開催されました。入場時の問診、接触確認アプリCOCOAのダウンロード、会場での手洗いや消毒、マスクの着用、距離を取ってのライブの楽しみ方など、新しいスタイルでの実施となりましたが、手応えはどうでしたか?

まず、ニューアコはロックフェスではなくて。キャンプが一番の目的なので、そこはほかのフェスとは違うんだよね。あと、コロナ禍から半年経ってるのに「まだ何もできません」というほど頭が固くないよ、と(笑)。「これを守れば開催できる」というガイドラインがあるし、コロナという病気の内容も以前よりはわかってきてるんだから、やれる形は必ずあるので。ここで中止するのはもどかしいという反骨心もあったし……。ただ、リスクや関係者への負担を考えると、今も「やらない」という判断が正解だったと思うけどね。

──そうなんですね。

はい。とにかく「やりたいからやる」というところに向けて頭と体を使っていたし、仮に「やるな」と言われてもやったと思うけどね。仮にできなかったとしても、「ギター1本で歌うから、河原に集合」って声をかけて。俺は公的にSNSはやってないけど(笑)。来たヤツに向けて歌ったと思うよ。「やりたい」が大事であって、「やらなければならない」ではないから。

昭和のオバケみたいな人があと10年もしたらごっそりいなくなる

──新型コロナウイルスの影響で各種イベントが従来通り実施できない状況が続く中、スカパー!がエンタテインメントを届ける人と受け取る人の架け橋になるべく今年8月に新たな取り組み「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」をスタートさせました。こういう動きに関してはどう捉えていますか?

いい取り組みだと思うよ。オンラインライブもそうだけど、いろいろなコンテンツ、インフラがそろってきて、楽しみ方も広がってきて。こういう状況を逆手にとって、面白いことを考えるヤツが現れるだろうし、現れるべきだと思うんだよね。何があっても文化自体は死なないしね。

──次の世代が日本のエンタテインメントを支えていくだろう、と。

自分たちもそうだったんだよ。上の世代のバンドブームが終わって、ライブハウスに閑古鳥が鳴いているときに、自分たちの世代が集まってきて。最初は自分たちで金を払ってライブしてたんだけど、少しずつ人が集まってきて、それが今につながっているので。その後、フェスというものが出てきて、それを前提としている世代が今のフェス文化を作ってきて。このあとは「無観客の配信ライブも通常」という世代が必ず出てくるし、その人たちはまったく違う発想で何かをやると思う。そう考えると、早く上の世代が退いたほうがいいんだよね、いずれは俺も含めて(笑)。

──世代交代を促すべきだ、と。

そう。コロナ禍に限らず、生きていくのはいつの時代も大変だと思ってるよ。これからはますますそうなるだろうし、自分たちが下の世代に言えるのは、「好きなことをやってください」しかなくて。人間が活動できるのは前の世代と後の世代の間のわずかな時間なんだから、誰かの真似をしたり、「こうすれば儲かる」みたいなことしか考えないなんて、もったいないでしょ。

──そういうことに気付く人が増えれば、社会も変わっていくかもしれないですね。まだまだマイノリティだとは思いますが。

でも、物事を動かすのはいつも少数派だからね。人口の3%くらいが動けば、全体が動くという話もあるし、心に秘めたものを持っている人はいるはずなので。自分たちの世代がこれからやるべきなのは、下の世代のために種や木を植えること。アートが権力に押しつぶされないような状況を作らないと、後の世代がかわいそうだから。自分たちが生活することも大事だけど、その優先順位は下げていかないとね。もう十分に贅沢したし、楽しかったからね。

──文化の土壌をつなげていくために、企業と手を組むこともあり得る?

誰とやるか、かな。企業の看板が欲しいからやるんじゃなくて、その中にいる誰かとやることが大事だから。NHKの番組に出たときもそうで、「この人と一緒にやりたい」という人がいたから実現したわけだし、「反戦」と書いたTシャツも映してくれた。この先はさらに“個”が重要になってくると思う。まだまだ昭和のオバケみたいな人が残ってるけど、あと10年もしたらごっそりいなくなるから。そのときに何ができるか?だよね。

──「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」も、スカパー!の若手スタッフ数名が、「メディアの中ではある意味アンダーグラウンドな存在でもある自分たちが、この立ち位置だからこそ何か社会に貢献できることはないか」という思いから立ち上げた企画だそうです。

素晴らしいことだと思う。さっきも言ったけど、どんな状況であっても、何かを生み出したいという衝動に取りつかれたヤツは必ずいるし、そういう人たちが出てこられる場所が必要なので。やれることはいろいろあると思うよ。

TOSHI-LOW

「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」とは?

「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」の仕組み。

演劇や音楽、伝統芸能など、さまざまなステージイベントの主催者を対象としたエンタテインメント業界向けの支援施策。コンテンツの配信手数料や回線費用などをスカパー!が負担し、クレジットカード決済手数料を除く各コンテンツの売り上げをイベント主催者に還元する。

生配信・収録配信どちらも対応可能で、販売価格はコンテンツ提供者が決定できる。スカパー!での放送がないコンテンツも販売可能。視聴者は無料の会員登録をするとコンテンツの購入が可能になり、決済方法はクレジットカードのみとなっている。

対象期間:2020年8月から12月31日受付分まで(配信・放送は2021年3月頃まで)

利用対象:ステージ主催者(音楽、演劇、伝統芸能などのコンテンツ)

配信手数料:0%(別途、クレジットカード決済手数料2%)

回線費用(ネット回線):スカパー!負担