ナタリー PowerPush - 榎本くるみ

生まれた意味を探す歌 「冒険彗星」がくれた自信と強さ

歌うことに対してきちんと責任を持ちたいしその歌に対しても誇りを持ちたい

——ところで、プロデューサーに藤原基央氏が参加していますが、制作はどのように進められたのでしょうか?

榎本 みんなでわきあいあいで制作というよりは、曲の魅力でそれぞれのメンバーが集まってきたという感じ。真ん中に「冒険彗星」があって、ひとりひとりが曲に対して感じることを丁寧に集中して入れる。そういう制作現場だったんです。

——すべては曲のために、ですね。今回収録される「冒険彗星」「朝顔」「ぼくのうた」の3曲は、すべてこの2人のプロデュースだからかもしれませんが、共通点があるような気がしたんです。繰り返し聴けるし、根底に曲同士の繋がりをすごく感じたんですよね。

榎本 私も本当にそう思っていて。この3曲がはなればなれになっているのではなくて、ちゃんとぐるっと回って意味が繋がっているんですよね。言ってみればテーマとしては全部同じで“生きている”ということなのかもしれません。その“生きている”って部分から曲が始まっているから深いなと思うし。視点はいろいろだけど3曲とも同じことを感じられるんです。「アルバムみたいだね」ってレコーディングが終わった後にプロデューサーとも話しましたし。そう思えるくらい濃いものになっていますよね。

——それに全曲の歌詞に“涙”という言葉が入っていて。今までもモチーフとしては何度か出ていた言葉ですけど、くるみさんにとって“涙”とはどんなものなのでしょうか。

榎本 そうですね、確かに今までも歌ってきましたよね。私は “本当の涙に出会うため”に歌ってきたとも言えるんです。曲を聴いて流れる涙、感動で私は歌の素晴らしさを感じてきましたし。自分の中でテーマとして“涙”は常にあって。その涙を経て、最終的に本当の笑顔になりたいんです。そういう意味でもこの3曲は私にすごく近い曲なのかとも思うし、とくに「冒険彗星」は自分が求めていたものだったのかなって。でも、まだ「完全に求めていたんだ!」とはっきり言えるほど理解しているのでもなく。本当にまだわからないところだらけなんですよね。

——その“涙”の先にある“笑顔”ですが。初回生産限定盤に収録されるPVには、最後のほうでチラッと笑顔が映っていますよね。それがとても印象的だったんです。

榎本 あれはふだんの私の笑顔ですね。撮影中、自然に笑っていたときがあって。あの笑顔は私の今の立ち位置なのかなって思います。その笑顔っていう場所から自分自身をこれから見つめていこうっていう気持ちがPVに出ていたのかもしれません。

——その今の立ち位置をきちんと確認して、その後ライブ映像が続くという流れがいいですよね。先日のGRAPEFRUIT MOONのライブでもすごくリスナーとの関わりを大事にしている印象があって。くるみさんにとってライブとはどういうものなのでしょう?

榎本 そうですよね。ライブはどんどん動きつづけていくものなので、私としてはやりがいがあるんですよ。そこで見てもらいたいことがたくさんあるし。言葉にできないことを感じてほしいんです。聴いてくれているお客さんがいるだけで、私も嬉しくなるじゃないですか。その温かい気持ちが歌に変わっていくから、もっとたくさんの人に届けたいし、観てもらいたいんですよね。

——ライブもまさに“生きる”ですよね。その“生きている”ということを表現したこの3曲を歌ったことで、くるみさんの中で何か変化はありました?

榎本 自分の中に変化があったかどうかは、そんなにまだ実感はしていないんです。でも、この曲を通して、自分がやっている“歌う”ということに対して自信が出てきましたね。私はあんまり器用に話したりできるタイプではないけど、でも歌うことに対してはきちんと責任を持ちたいし、その歌に対しても誇りを持ちたい。そういう思いが強くなりました。ひとつ信じられるものを持てたっていうのは人生、生まれてきた意味が自分にあるってことですよね。歌うことを生きることにしていきたいなって思ったし、やっぱり私は歌でコミュニケーションをとって未来に進んでいきたいんですよ。この曲と出会ったことで、自分の中でそれがはっきり見えた。そう確信しているんです。

ニューシングル『冒険彗星』 / 2008年11月26日発売 / フォーライフミュージックエンタテイメント

初回生産限定盤 [CD+DVD] 1500円(税込) FLCF-4263 / 通常盤 [CD] 1200円(税込) FLCF-4264

CD収録曲
  1. 冒険彗星
  2. 朝顔
  3. ぼくのうた
初回限定盤DVD収録内容
  • 「冒険彗星」Music Clip
  • 「冒険彗星」アコースティック スペシャル ライブ映像
  • 「冒険彗星」Special Music Clip(TVアニメ「テイルズ オブ ジ アビス」Version)
プロフィール

榎本くるみ(えのもとくるみ)

1981年名古屋生まれの女性シンガー。デビュー前から雑誌「ROCKIN'ON JAPAN」で紹介されたり「BARFOUT!」の表紙を飾るなど、さまざまな方面から注目を集め、2006年4月にシングル「心のカタチ」にてメジャーデビュー。3rdシングル「RAINBOW DUST」がドラマ主題歌に起用され、新たなファン層を開拓する一方、2006年末の「COUNTDOWN JAPAN 06/07」では新人ながら堂々としたステージを披露。実力派シンガーとしての評価を確実なものとする。

2007年5月には初のフルアルバム「NOTEBOOK I~未来の記憶~」を発表。2007年秋には「リアル / She」「夕陽が丘 / みんな元気」のシングル2作を連続リリース。2008年2月に発表したシングル「未来記念日」はTBS系「CDTV」エンディングテーマに起用される。

2008年10月には、シングル「イエスタデイズ ~大切な贈りもの~」を発表。この曲は映画「イエスタデイズ」の主題歌に決定し、自身初の書き下ろし映画主題歌としても話題となる。

ケータイ小説サイト「おりおん☆」では自身初の携帯小説「未来記念日」を連載。アクセスが殺到しチャート上位にランクイン。携帯SNS「GREE」でのブログは、日に1万を超えるアクセスで注目を集めている。